青龍刀で腕を切り落とされたメンバーも…!東南アジア「詐欺パーク」、中華系グループの恐怖の暴力支配
詐欺グループ「現役日本人ボス」が明かす園区の実態
2025年の1年間で1414億円もの被害金を生み出した特殊詐欺。なかでも猛威をふるうのが「ニセ警察官詐欺」だ。逮捕をちらつかせて、金銭を騙し取る手口で、昨年の被害金は約985億円。特殊詐欺全体の4割を占める勢いとなっている。
今年4月には愛媛県内に住む80代の女性が警察官を名乗る人物ら現金12億円を騙し取られる事件が発生。同手口の被害金としては過去最悪の数字となる。さらに大阪府内の自営業の70代女性が3億円相当の仮想通貨が盗まれるなど被害は深刻さを増している。
「これらの詐欺電話のほとんどが東南アジアを拠点とする詐欺グループたちからの架電だと見られており、警察庁は国際電話を遮断する警察庁推奨アプリの導入の働きかけなどに注力しています」(全国紙社会部記者)
東南アジアに巣食い、獲物を探す詐欺グループたち。彼はいかにして組織運営を行い、巨額詐欺に手を染めているのか。
前編記事『「ニセ警察官詐欺」のリーダーが証言、「被害者」からカネを騙し取る「マインドコントロールの方法」』につづき、現役の日本人ボスが明かすカンボジアでの詐欺拠点「園区」の内情、そして企業化されたグループの実態について詳しく報じる。
「現代ビジネス」はカンボジア国内で詐欺グループを率いる現役のリーダーと日本人ボスに接触。リーダーは「サエキ」、ボスは「ハシモト」を名乗り、それぞれ取材に応じた。そこで明かされたのは詐欺拠点としてメンバーが暮らす「園区」の実態、さらに企業化された組織の内情だった。
ボスであるハシモト氏が語る。(以下、鍵カッコはハシモト氏)
「今、我々が住んでいるのはカンボジアにある園区と呼ばれるエリアです。園区は国内に無数に存在し、それぞれの詐欺グループが根城にしています。園区は基本的に地権者にカネを払い、地元の業者が一から建設。完成は早ければ1ヵ月、遅くても2ヵ月程度になります」
突貫工事ゆえ立て付けは悪く、窓が閉まらない部屋もザラだという。だが、ハシモト氏「慣れれば気にはならない。住めば都です」と語る。
「暮らしている人間も中国、台湾、韓国、インド、ブラジル、アフリカなど国籍は様々ですが、簡単に言えば、なかにいる人間は全員が詐欺師です。四方は壁で囲まれ、敷地内にはグループが雇った屈強なセキュリティが見回りをしており、彼らの許可がなければ外に出ることはできません。セキュリティは侵入者や脱走しようとするメンバーがいれば捕まえる役割を担っている」
取材の最中、ハシモト氏はビデオ通話越しに園区内にある自室を映し出した。20畳ほどの部屋にはテーブルやベッドが置かれるなど生活感を感じさせる風景が広がっていた。
「部屋のグレードは立場や役職によって変わり、私やリーダーなどは1人で1部屋を使っています。ただ、平のメンバーの場合は二段ベッドを3つ入れ、6人で寝起きする、通称『タコ部屋』で過ごしているケースが多い。1人で使っているのは珍しいと思います。今、我々がいる園区内の部屋はほとんどが埋まっている状態です」
園区内には食堂や病院はもちろん、コンビニやマッサージ店、売春宿にカジノ、床屋まで併設されており、外出をしなくとも不自由ない生活が送れるという。
詐欺グループが経営する「カジノ」
「なかには日本食の食堂や弁当屋も設置される場所もあります。食堂ではおかずが3〜4品並ぶビッフェ形式で、弁当屋ではうどんやカレーが出る。でもパターンは一緒。4日連続でカレーが出てくることもありました」
だが、衛生面はお世辞にも良好とは言えない。
「先日も組織で支給された食事で集団食中毒が発生したばかりで、それ以降、私たちのグループはここで出される食事には一切手をつけていません。インフラも整っているとは言いがたく、さらに高温多湿な風土と相まって特に口に入れるものには気を配っています」
ハシモト氏が「全員が詐欺師」と語る通り、園区内に備え付けられている病院やカジノも一筋縄ではいかないという。
「詐欺拠点内にあるカジノは詐欺グループが経営している場合が多いです。ゆえにカジノのオーナーは詐欺組織のボスになります。遊ぶ客が詐欺メンバーなら、胴元もグループという構図です。こういったカジノでは保証もなしに客に大金を貸して勝負させます。しかし、負け金が払えないとなると店からは出られず、オーナーの持つ詐欺箱(拠点)まで連れて行かれ、詐欺箱の兵隊として働かせます。負債はそうやって取り立てるのが詐欺カジノのやり方です」
ライフラインとなる病院では、メンバーを喰いにかかる医者と詐欺メンバーとの攻防戦が繰り広げられている。
「治療は外の医療機関に行く場合もあれば、園区によっては地元にいる医者をお抱えにしたり、病院自体を開院しているケースもあります。現地の医師はあくどくて、治療費ほしさにストップというまで点滴を打ち続ける。実際、私は8本、別のメンバーは13本の点滴漬けにされたことがあります。もちろん日本のような保険制度は存在しないので、治療費は高額。薬をもらうだけでも80ドル(日本円で約1万2000円)ほどかかり、1回の診察の総額は100ドル(約1万5000円)を超えます」
弱肉強食の様相を見せる園区。そんなグループのオーナーを務めるのは中国人たちだ。
「園区は様々なグループが入居していますが、そのオーナーのほとんどが中国人か台湾人です。彼らはカンボジア国内で要人とのパイプを持っており、その交渉役を担える存在。逆にカンボジアの要職たちは中国人以外からカネを受け取らず、代わりのネゴシエートは事実上不可能。それほど中枢深くに食い込んでいる」
グループはオーナーの下に「PC」と呼ばれる幹部、メンバーへと枝分かれしていく。さらに組織には株主制度なるシステムが導入されており、ハシモト氏はこの株主に該当している。
「株主はいわば共同経営者で、オーナーと兄弟分という立場に当たり、組織に属しながらも自身のチームを持つことができます。私は日本人グループを持つボスという立場です。株主になるには一定の売上金(詐欺で搾取したカネ)が必要で、私たちの箱は少数ながら月間で1億円を連続して超えており、その成績をもって交渉のすえ、共同経営者へと格上げとなりました」
その組織運営は企業さながらだ。
日本国内では半グレグループが暗躍…!
「グループ全体の売上から電話代、食事代、電気、ガス、さらに車や園区費用など諸経費を引きます。飛行機でメンバーを呼ぶ際もグループの経費から賄います。そこには口座屋の支払いも含まれます。中国では『車屋』と呼びます。昔の口座屋は板を用意して終わりだったが、今は口座の用意したうえ、仮想通貨でマネーロンダリングまでしてくれる。一方、サービスが手厚い分、手数料は入金の3割ほどが取られる。仮想通貨のウォレットなら割安で手数料は7%。また経費は1日ごとに計算し、表にまとめて記録します。給与の配分はまず1線と2線に20%ずつ、そして幹部が25%、最後に株主が35%を受け取ります。もちろん月の売上によって、ギャラは変動。私が知る限りカンボジアで働いた日本人メンバーの最高額は12万ドル(約2000万円)ですが、それはラッキーパンチ。平均で言えば2万ドル(約300万円)ほどです」
グループが昼夜問わず探しているのはターゲットとなる被害者だけではない。かけ子メンバーも同様だ。
「日本国内でのリクルート活動も絶えず行っています。現地では主に半グレグループがリクルーターを担っています。お付き合いしている組織のなかには大手暴力団組織もあります。いずれも人材が見つかれば繋げてもらい、具体的な渡航手続きに入る。無事に成約となれば紹介料、または買い取りという形でリクルーターに謝礼を払う流れが一般的。なかには日本国内で在籍しているグループで仕事ができず、カンボジアに渡ってくるケースもある。その反対に組織が優秀な人物を送り込んでくる場合もある。
私たちのチームは騙して連れてきたり、やる気のない人間はお断りしていますが、別の組織などはそういう人物でも買い取っている。そもそも売上が低ければ、他のグループに転売されるのは珍しくない。また日本人グループは最低保証をつけているところがほとんどで、仮に売上が0でも平均で3000ドル(約48万円)から4000ドル(約64万円)ほどが相場。部屋代、電気代、3食の食事付き。保証が丸々実入りになるから、魅力的に感じる人もいます」
またハシモト氏いわく、国籍によってグループの毛色も変わっているという。
「もっとも暴力的に箱を支配しているのは中国人です。一度、中国人グループのメンバーが青龍刀で片腕を斬り落とされる場面は遭遇したことがあります。なんでも薬物でおかしくなり、幹部の女性にイタズラをしてしまったようです。現場はホテルを買い取った詐欺拠点で、大広間で処刑が行われていました。1000人以上が目撃し、撮影された動画が出回っていた。見せしめだったと思います」
一方、韓国でも詐欺組織による被害が社会問題化している。同国では2000人あまりが闇バイトを通してカンボジア詐欺に関与している可能性が指摘され、グループの拷問により、渡航した若者が心臓麻痺で亡くなる事件まで起きるなど事態は深刻化の一途を辿っている。2025年10月、李在明大統領はカンボジアのフン・マネット首相との首脳会談で「全国民がこの問題に非常に敏感になっている」とカンボジア問題に言及。韓国人への保護と対策を訴えるなど、政府も本格的な対応に乗り出している。
「日本人が死ぬと10万ドル」
「中国人ほどではないですが、韓国人グループも狂暴で知られています。彼らは本国からさらってきた人間を働かせ、結果が出なければ徹底的に制裁を加える。韓国系の箱は死人が出るのも珍しくない。さらに家族に対して身代金を要求するケースも多く、もはや詐欺の領域を超えている。だからあれだけ早く韓国国内で問題になった」
両者の箱と対照的なカラーを持つのが日本人グループだという。
「私たちもそうですが、日本人の箱で誘拐や拷問をしているというのは聞いたことがない。理由はシンプルで、強制的に働かせても売上の向上は期待できませんし、万が一、脱走された際には必ず密告される。恨みを持たれていいことはないという考え方です。もし日本人が現地で亡くなるとすぐに国際問題になり、自分たちの身も危ないという面もあります。園区内で日本人が1人死ぬと、かかる費用はおよそ10万ドル(約1600万円)と言われています。医者はもちろん埋葬、それに警察への根回しや口封じまでやると、それほどの出費が必要になる。
だから私たちのグループは、メンバーが体調不良を訴えただけで帰国させます。死なれたら困るというのが本音です。かえって中国人組織は命の重さが違う。チャイナ系のグループでは、使えなくなったメンバーは薬漬けにしたうえで道路に放り出し、事故死させるケースも少なくない。中国の箱ではそもそも戸籍すらない人間もたくさんいます。
ただ、最近は日本人をターゲットにした誘拐や人身売買も行われるようになってきている。よくあるのはホテルの嘘のレビュー依頼。外国人たちが『交通費や宿泊費を出すから2週間ほど宿泊して、感想を書き込んでほしい』と誘い出す方法。実際に被害に遭ったというケースも耳にします」
今や国際的な詐欺拠点として悪名を届かすカンボジア。しかし、現在は政府による大規模な摘発作戦が遂行されているという。彼らはいかにして当局の手入れをかいくぐり、犯行を続けられてきたのか。
つづく後編記事『「ニセ警察官詐欺」グループがカンボジアから逃げ出し始めた…!摘発逃れのためのヤバすぎる「ワイロ合戦」』では組織が飼う情報屋の存在、グループボスたち本音、さらに次に詐欺師たちが拠点地として目指す国について詳しく報じる。
