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【吉井理人の野球術 season3】#4

【前回を読む】ロッテ藤原恭大に覚醒の兆し 3年間で取り組ませたのは「自分のプレーの振り返り」だった

「徐々に良くなってますが、まだまだです!」

 日本時間6日のナショナルズ戦に先発した佐々木朗希に試合後、LINEを送ると、こんな言葉が返ってきた。

 5回を投げて5安打6失点という結果はともかく、投球フォームは改善されていた。

 佐々木はロッテにいたころから、フォームを崩していた。

 問題点は大きく分けて2つ。ひとつは肩と腰の捻転差が少なくなっていたことだ。

 投手は投げるとき、最初に腰が開くが、肩は一瞬、止まり、遅れて出ていく。このときのねじれがパワーにつながる。佐々木はしかし、腰と肩がほぼ同時に開いてしまっていた。

 おそらく2023年7月に左脇腹を痛めた後遺症だろう。無意識のうちに脇腹をかばい、その分、ねじれが少なくなる。タメも減るから、出力は下がってしまう。

 もうひとつは主にクイックで投げるときに、腰が落ちてしまうのだ。結果として捻転の度合いも少なくなり、リリースする場所も変わってしまうから制球も乱れる。

 けれども、6日のピッチングを見る限り、2つの問題点は解消されていた。

 なので「クイックのときのフォームも良くなってるよ」と伝えると、「映像を見てチェックします」と返してきた。

 四回に打たれた3ランはカウント0-2と追い込んだ直後に、真ん中に甘く入ったスプリットを放り込まれたものだ。

 バッテリーを組んだラッシングは試合後、「あの場面はボール球を要求した。地面にたたき付けて欲しかった。あのカウントでは優位な状況を考慮して攻めるべき」と話していた。

 しかし、投手は低めを意識し過ぎると体が前に突っ込み、力みから腕を振るのが遅れる。逆にボールは高めに浮くことが多い。追い込んでいるのだから、念を押されなくても低めに外すのは佐々木も分かっている。スプリットが真ん中に行ってしまったのは、低めに外せと強調した捕手の責任でもある。

 あとは感覚だ。良いときの感覚が完全に戻るには時間がかかる。ピンチで力んだ瞬間、悪いときのフォームのクセが出てしまうようなこともあるからだ。実戦の中でどんどん投げて、自分のものにしていくしかない。

 その意味でもコンディションの維持は重要になる。これまで年間通してローテーションを守った経験はないものの、本人は心身ともにたくましくなりつつある。

 オフの間は主に体幹や下半身のトレーニングをみっちりやったようだし、本人も「重いものを挙げています」と話していた。

 スプリングトレーニングの防御率は15.58。あれだけ調子が悪かったら、これまでの佐々木なら投げたがらなかったかもしれない。それでも開幕から投げたこと自体が成長と感じる。

 投球フォームが元に戻り、「まだまだです」という佐々木の今後に注目したい。

(吉井理人/千葉ロッテマリーンズ前監督)