「PTSD」「トラウマ」は気合があれば回復する? トラウマの本質を徹底解説!
PTSD(心的外傷後ストレス症)は、事件や事故、災害などのつらい体験がトラウマとなって、いつまでも恐怖や不安が続き、生活に支障が出てしまう心の病気です。近年は暴力や性被害、重度の事故など、個々の事例からPTSDになることも多く、誰もがトラウマの問題と無縁でいられなくなっています。
こうしたトラウマによって引き起こされるさまざまな変化(トラウマ反応)や対処法、家族や周囲の人ができるサポート法を紹介した書籍『新版 PTSDとトラウマのすべてがわかる本』より、一部を抜粋紹介します。
PTSD、トラウマを誤解していませんか?
事件や事故、災害などの報道を通じて、PTSDやトラウマという言葉が広く知られるようになりました。しかし、まだ多くの誤解があるようです。正しく理解できているかどうか、チェックしてみましょう。
Q. 事件や事故にあったら、すぐにPTSDの治療をはじめるべき?
→×)PTSDは1ヵ月以上たたないと診断できない
被害にあったあと、できるだけ早く安全を確保することは大切です。しかし、事件や事故の直後にPTSDと診断し、治療をはじめることはできません。
Q.「がんばって」という励まし方は、トラウマがある人の負担になることがある?
→〇)「いわれなくてもがんばっている」と反発されがち
事件や事故のつらさを乗り越えようと、十分がんばっている人には、「これ以上がんばる」ことはできません。努力をうながす言葉は負担になることがあります。
Q. PTSDやトラウマは気持ちの問題なので、気合があれば回復する?
→×)気合は関係ない。回復のペースは人それぞれ
心の傷は、気合でどうにかなるものではありません。けっしてあせらず、ゆっくりでも、自分のペースでふつうの生活に戻していきましょう。
Q.家族を亡くしたあと、連絡や葬儀をきちんとできる人は心配ない?
→×)悲しみが深く、感情がマヒしている場合も
やるべきことを淡々とこなしていると、もう悲しみを乗り越えたと誤解されがちです。しかし、実際は逆。あまりにも悲しいと、感情を出せなくなるのです。
Q.PTSDによる悪夢や不眠などの症状は、薬を飲むことでやわらぐ場合がある?
→〇)抗うつ薬でPTSDの中核症状はやわらぐ
PTSDのおもな症状である「中核症状」は、SSRI などの抗うつ薬を使うと、緩和が期待できます。心理療法と薬物療法を組みあわせた治療が効果的です。
Q.事件・事故にあったときのつらい記憶は、忘れるようにしたほうがよい?
→×)思い出すのは自然な反応。無理にふたをしないこと
ふとしたことで事件を思い出したり、夢にみたりするのは、人間として当然の反応です。つらい体験は、簡単に忘れられるものではありません。
Q. ケガをしていなくても、暴力の体験がトラウマになることがある。
→〇)一見、無事にすんだ体験がトラウマになることも
まわりからみると命も無事で大ケガもせずにすんだ被害でも、本人には衝撃的な体験となり、心の傷となることがあります。
Q. 原因について本人が黙っていたら、くわしく聞き出す。
→×)対話や相談の仕方はケースバイケース
何でも細かく聞き出せばよいとはかぎりません。事件・事故のことを話したがらない人もいます。被害者の心理状態を尊重して対応します。
トラウマとは…日常の不安や恐怖とは違う、深い心の傷
トラウマという言葉は、日常でもよく使われます。例えば、仕事での失敗を指して「あの一件がトラウマになっちゃって」などということがあります。
この場合、トラウマは苦い思い出や、不快な体験を意味する言葉として使われています。確かに、この言葉にはそのような使い方もあります。しかしそれは、一面にすぎません。
日常的な不安や恐怖は、一時的には強いストレスとなりますが、時間がたてば弱まり、気にならなくなるものです。一方トラウマは、時間が解決してくれるというものではありません。
神医学用語として使われる場合、トラウマという語は、かなり深刻な状態を指しています。
事件や事故などにあって何ヵ月も経過しているのに、その記憶を何度も思い出し、苦しみ続けている状態です。
その出来事への恐怖がやわらいでいないため、笑い話にすることはできません。
同じ経験をしても、受け止め方には個人差がある
大きな事件や事故、災害が起きたとき、それがトラウマになる人と、ならない人がいます。出来事の受け止め方は人それぞれ違うからです。
同じ出来事を経験しているにもかかわらず、ある人は不安や恐怖を強く感じ、ある人は少し驚く程度など、感じ方には個人差があるものです。また、その出来事がトラウマになった場合、トラウマによる症状の現れ方にも違いがあります。
こうした違いは、地震や台風のように多くの人が同じ被害にあったとき、よりはっきりと現れます。
トラウマの個人差を理解し、個々の状況にあわせた対応が必要です。
トラウマにならない被害者がいる一方で、直接被害にあっていないのにトラウマに悩む人もいます。心配や責任感がつのり、苦しむ人です。
・救助隊や消防士
救助隊や消防士が現場を目の当たりにして、ショックを受ける場合も。
・近隣の人
直接の被害は軽いが、なかにはトラウマになる人も。
・被害者の家族
自身に被害はないが、ショックと心配で苦しむ。
・被害者の関係者
被害者を当地に赴任させた上司など。自責感におそわれて悩む。
