なぜコンクリートは凍ると「劣化」するのか、ご存知ですか?
日本はこのまま崩れ去ってしまうのか? 道路、鉄道、水道、インフラ、橋……なぜ全国各地で次々に事故が起きるのか? お金も人も足りない……打つ手はあるのか?
注目の新刊『日本のインフラ危機』では、私たちの暮らしを揺るがす「大問題の正体」を豊富なデータと事例から解き明かす。
(本記事は、岩城一郎『日本のインフラ危機』の一部を抜粋・編集しています)
凍害
【劣化の特徴】
凍害とは、コンクリートの内部に含まれる水分が凍ったり融けたりを繰り返すことで、少しずつ劣化が進行していく現象です。水は氷に変わると体積が約9%膨らみます。たとえば製氷皿に水をいっぱいまで入れて凍らせると、氷が少し盛り上がっているのを見たことがあると思います。あれが約9%の体積膨張なのです。
一見するとコンクリートの中には水分がないように感じるかもしれませんが、実際には細かい隙間に水を含んでいます。外気が氷点下になるとその水が凍って膨張し、押し出される水の圧力によってコンクリートの組織が少しずつ壊れてしまいます。この作用が1回だけなら大きな影響はありませんが、凍った水が融けてまた凍るという「凍結融解作用」が何度も繰り返されることで、徐々に劣化が進んでいきます。
【実際の問題】
たとえば、私の大学がある福島県郡山市では、冬の間に1年間でおよそ50回も凍結融解作用を受けます。これが50年間続くと、合計で2500回にもなり、その影響でコンクリートの表面にはひび割れや、表面が薄くはがれ落ちる「スケーリング」と呼ばれる劣化が現れます。北海道や標高の高い山岳地帯ではさらに厳しい環境となります。
一方、東京では氷点下になる日が年に数回しかないため凍害はほとんど発生せず、沖縄ではまったく起こりません。逆に、シベリアの永久凍土のようにずっと凍ったままの場合は劣化が進行しません。日本の寒冷地では四季があり、長年にわたり凍結と融解が繰り返されるため、凍害が進行しやすい環境にあると言えます。
【対策】
実際、50年ほど前までは凍害は日本のコンクリート構造物にとって非常に大きな問題でした。しかし、コンクリートをつくるときに少量の「AE剤」という薬を加えることで劇的に改善しました。この薬を入れるとコンクリート中に非常に細かい気泡が分散し、凍結時に発生する水の圧力を、その気泡に水が逃げ込むことでやわらげることができます。その結果、凍害に対する抵抗力が飛躍的に高まり、まさに特効薬となったのです。
さらに、「日本はこのまま崩れ去ってしまうのか…意外と気づかない「インフラ危機」本当の実態」」では、いま大問題として迫っているインフラ老朽化問題をひきつづき見ていく。
