【密着・大相撲グラフ】安青錦よ、起ち上がれ! 綱取りは白紙、巡業も離脱…スピード出世の新星に早くも正念場が訪れた
入門以来、負け越し知らずで番付を駆け上がってきた大関・安青錦(22)が、初めて大きな壁にぶち当たっている。
【写真】トーナメント選士権大会に参加する安青錦。2回戦で若元春と対戦したが敗れた
前傾姿勢を崩さない粘り強い相撲で白星を重ね、新入幕から7場所連続で2ケタ勝利を続けてきた。大方が史上最速(付け出し除く)での横綱昇進を信じて疑わず、その歩みは順風満帆に思えた。
ところが、先場所では中日までに5敗を喫して場所後の横綱昇進は絶望的に。7勝7敗で臨んだ千秋楽で過去4戦4勝の横綱・豊昇龍にも転がされ、初の綱取りから一転、夏場所はカド番で迎えることになった。
千秋楽の支度部屋で、
「(綱取りの)プレッシャーというより、自分らしさを出すことができなかった。今までにない悔しさを経験した。強くなってそういう経験をしないようにしたい」
と語り、場所中は一切言い訳をしなかった安青錦だったが、春場所中に痛めた左足に骨折の疑いがあるとして、春巡業3日目の神戸巡業から欠場して帰京。やはり体に異変が発生していたのだ。
伊勢地方で春の風物詩として親しまれる「伊勢神宮奉納大相撲」(3月29日)でも、本来の動きは鳴りを潜めていた。
6期目の続投が決まった八角理事長(元横綱・北勝海)をはじめ、協会幹部、横綱、大関が紋付・羽織・袴の正装で外宮と内宮を参拝するなか、先場所を制して大関に昇進した霧島と並んで歩く安青錦の姿があった。
横綱の土俵入りを奉納した後、円形で独特の雰囲気がある神宮相撲場で幕内力士上位16人によるトーナメント選士権大会が開催された。
2500人の観衆が見守るなか、安青錦は若元春に寄り切りであっさりと敗れた。安青錦らしさが見られなかったのは、怪我の影響もあったのか。
巡業での稽古を見直すと思われた矢先の離脱
伊勢を皮切りに関西、北陸、関東へと27か所を巡り、29日間にわたって続く春巡業を、3日目で離脱することに。来場所をカド番で迎える安青錦は、巡業で十分な研鑽を積めず、さらなるピンチを迎える。
「巡業は相撲普及のための顔見世興行といわれるが、力士にとっては午前中の稽古が大きな意味を持つ。部屋や一門に関係なく稽古相手が選べるため、弱点克服ができる練成のための場所でもある」(若手親方)
従来の角界の伝統とは違う形で強くなってきた安青錦は、稽古場では四股やテッポーを中心にした基礎運動で下半身を鍛える一方、土俵で申し合いなどの実戦稽古をほとんどしないことで知られる。
22か所を回った昨年末の冬巡業でも、実戦稽古のために土俵に上がったのはたった1日。マイペース調整を貫いてきた。
「巡業で稽古熱心な横綱(豊昇龍)が土俵に引っ張り出そうとしても安青錦はそれに応じない。『あいつは手の内を見せない』と横綱は文句を言っているが、平均サイズ以下の安青錦としては、それも作戦のひとつなんです」(相撲担当記者)
綱取りが白紙に戻り、巡業での稽古を見直すとみられた矢先の離脱。安青錦は初めて訪れたピンチにどう立ち向かうのか。
取材・文/鵜飼克郎 撮影/太田真三
※週刊ポスト2026年4月17・24日号
