NASA有人月ミッション「アルテミスII」宇宙船が月面に最接近 人類の最遠到達記録も更新
アメリカが主導する有人月探査計画「Artemis(アルテミス)」で初めての有人ミッションとなる「Artemis II(アルテミスII)」。NASA(アメリカ航空宇宙局)によると、ミッション6日目を迎えた宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」は、かつて「Apollo 13(アポロ13号)」が打ち立てた人類の最遠到達記録を塗り替え、月面に最接近する歴史的なフライバイを成功させました。

裏側で月面に最接近&人類の最遠到達距離を更新
NASAによると、Artemis IIミッションのOrion宇宙船はアメリカ東部夏時間2026年4月6日13時56分(日本時間翌7日2時56分)に、アポロ13号が1970年4月に記録した人類の最遠到達記録(24万8655マイル)を更新しました(※以下の日時は原則としてアメリカ東部夏時間で表記)。
その後、同日14時45分頃からは約7時間にわたるフライバイ中の観測活動が始まり、クルーは月面の撮影や肉眼での観測を実施。18時41分に地球が月の後ろに隠れる「地球の入り(Earthset)」の観測に続いて、18時44分には宇宙船が月の裏側へと回り込んだことで、予定通り一時的な通信途絶(ブラックアウト)に入ります。約40分後の19時24分には、「地球の出(Earthrise)」とともに地上との通信が回復しました。

地球との通信が途絶えている間、クルーは2つの記録を経験しました。アメリカ東部夏時間6日19時00分(日本時間翌7日8時00分)には、Orion宇宙船が月面から約4067マイル(約6545キロメートル)の高度まで最接近。そのわずか2分後の同日19時02分には、地球から25万2756マイル(約40万6771キロメートル)という今回のミッションでの最大到達距離=現時点での人類の最遠到達距離を記録しています。
地上の科学チームと連携して月面を観測
フライバイ中、クルーは月の表側と裏側にまたがるほどの巨大な衝突地形「オリエンタル盆地(東の海)」をはじめとした30のターゲットに対して、計画に従った観測を実施。望遠レンズを使った撮影を行うとともに、肉眼での観察を通じて、月面の色彩などを報告しました。
NASAによれば、地上で待機する科学チームは報告内容をもとに観測計画を随時更新するなど、月の間近にいるクルーと地上のチームは互いに連携しつつ観測を進めることができました。


観測が始まる前には、肉眼で確認できた無名の新しい2つのクレーターについて、クルーが暫定的な名前を提案する一幕もありました。
オリエンタル盆地の北西に位置するクレーターには、Orion宇宙船の愛称にちなんだ「Integrity(インテグリティ)」を提案。さらにその北東、月の表側と裏側の境界付近に位置していて地球から見えることもあるクレーターには、コマンダーを務めるNASAのReid Wiseman宇宙飛行士の亡き妻の名前にちなんだ「Carroll(キャロル)」が提案されました。これらの名前はミッションの終了後、IAU(国際天文学連合)へ正式に提案される予定だということです。
また、地球との通信が回復した後のアメリカ東部夏時間6日20時35分からは、Orion宇宙船・月・太陽が一直線に並ぶことで、宇宙船では約1時間にわたって「日食」が観測されました。この機会を利用して、太陽の大気である太陽コロナの観測や、月面に微小な隕石が衝突することで起こる発光現象の監視などが実施されています。


“先輩”からのメッセージと“後輩”への挑戦状
こうして歴史的な日となったミッション6日目は、思いがけないメッセージで幕を開けました。クルーが起床すると、1968年12月の「Apollo 8(アポロ8号)」とアポロ13号に搭乗した元NASA宇宙飛行士で、2025年8月に亡くなったJames Lovell氏が生前このミッションのために録音していたという音声が届けられたのです。Lovell氏は「すべての人々の利益になるこの使命を引き継げて誇りに思う」と述べるとともに「景色を楽しむことを忘れないで」という応援の言葉を遺していました。
また、アポロ13号の記録を更新した際の交信中に、ミッションスペシャリストを務めるCSA(カナダ宇宙庁)のJeremy Hansen宇宙飛行士は「有人宇宙探査における先駆者たちの偉業に敬意を表します」と前置きした上で、「最も重要なのは、この記録が長くは続かないように、今の世代と次の世代へ挑戦を突きつけることです」と、さらなる宇宙探査に向けた力強いスピーチを行いました。
飛行の折り返し点となるフライバイを終えたOrion宇宙船は、地球への帰還の途についています。ミッション7日目となるアメリカ東部夏時間2026年4月7日13時25分(日本時間翌8日2時25分)頃には、月の重力圏(※)を離脱する予定です。
※…厳密にはSphere of Influence=作用圏、影響圏。ある天体の重力の影響が他の天体の重力よりも支配的になる領域を指す。

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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