「生まれたての惑星はふわふわ」という証拠を発見 2000万歳の4つの惑星の質量を正確に測定
「生まれたての惑星はふわふわ」であるという説があります。これは、惑星がどのように誕生・進化するかの理論モデルを基にして長年予測されていました。しかし、誕生から間もない惑星の発見数が少ない上に、詳細な観測が難しいことから、中々証明できない予測でした。

自然科学研究機構アストロバイオロジーセンターおよび国立天文台のジョン・H・リビングストン氏を筆頭とする国際研究チームは、誕生から約2000万年しか経っていない惑星系「おうし座V1298星(V1298 Tau)」の観測結果を分析しました。今回の分析では、惑星同士の重力で、わずかに公転周期が変化する性質を利用し、正確に質量を測定する手法が使われました。
その結果、おうし座V1298星の惑星は非常に低密度な惑星であることが正確に分かりました。これは「生まれたての惑星はふわふわ」であるという説を裏付けるものとなります。
生まれたての惑星の性質はよく分かっていない
太陽以外の天体の周りを公転する惑星「太陽系外惑星」は、ここ30年で6000個以上も発見されています。この惑星たちの間で最も一般的なタイプは、地球よりも大きく、海王星より小さな惑星です。数値にすれば地球の1〜4倍の直径を持つこれらの惑星は、「スーパーアース」や「サブネプチューン」と呼ばれています。そしてこれらの惑星は、太陽と水星との間より近い距離を公転していることが珍しくありません。
発見の大半を占めていることから、少なくとも天の川銀河の中では、スーパーアースやサブネプチューンは多数派の惑星であると言えます。しかし、太陽系には存在しない惑星であることから、どのようにしてこのような惑星が作られるのか、その形成過程は大きな謎に包まれています。
惑星の形成過程が謎であるのは、生まれたての惑星を詳細に観測した記録が少ないことが大きな理由です。惑星が生まれたてと言える期間は誕生から数千万年ほどですが、これはその後の数十億年の “人生” と比べればとても短い期間です。このような若い惑星は、発見全体から見てもとても少ない数となります。
このような状況があるため、例えば「生まれたての惑星はふわふわ」であるという予想は、これまで理論的な推定にとどまっていました。生まれたての惑星は、熱などで大気が膨張しており、低密度な状態であることが理論的に予想されていました。しかし、生まれたての惑星がふわふわしていることを観測した事例は、これまでのところありませんでした。
生まれたての惑星がどのような姿をしているのかを正確に知ることができれば、惑星の形成過程の理解が深まります。これは、多数派の惑星であるスーパーアースやサブネプチューンの形成過程の理解にもつながるはずです。
惑星同士に働く重力から質量を正確に測定
自然科学研究機構アストロバイオロジーセンターおよび国立天文台のジョン・H・リビングストン氏を筆頭とする国際研究チームは、「おうし座V1298星」に着目し、研究を行いました。おうし座V1298星は、地球から430光年離れたおうし座分子雲の中にある恒星の1つで、太陽とほぼ同じ質量(太陽の1.10±0.05倍)を持ちながら、年齢が約2000万年(1000〜3000万年)と非常に若いことを特徴としています。おうし座V1298星を見るということは、私たちの太陽が生まれて間もない頃を見ていると言っても差し支えありません。
NASA(アメリカ航空宇宙局)の「ケプラー宇宙望遠鏡」の観測により、おうし座V1298星の周りには、太陽と水星との間より近い距離に4つの惑星がひしめいていることが分かっています。そしてこれらの惑星の直径は、小さいものでも地球の5倍と海王星より大きく、大きいものでは地球の10倍と土星を超える大きさを持っています。
過去の研究では、特に直径が大きな2つの惑星について、それぞれ地球の数百倍の質量を持つと推定していました。これは、誕生から時間が経過した普通の惑星ならば妥当な数値です。しかし、おうし座V1298星の惑星は生まれたてであり、この数値が当てはまるかどうかは分かりません。
これに加えて、この質量推定の元となる観測データには、かなりの割合で恒星活動によるノイズが混ざっている恐れがありました。生まれたての恒星の活動は激しいため、ノイズの影響で惑星の質量の推定に影響を及ぼしている可能性があります。
そこでリビングストン氏らは、「トランジットタイミング変動(TTV; Transit-Timing Variation)」と呼ばれる手法を使い、4つの惑星の正確な質量を求めることを試みました。
地球からおうし座V1298星を観測すると、4つの惑星がおうし座V1298星の手前を横切る「通過(トランジット)」が観測されます。通過するタイミングは惑星の公転周期によって決まるため、本来ならば全く同じ間隔で惑星の通過が観測されるはずです。
しかし、惑星が複数あると状況が変わります。惑星同士はお互いに重力によって引っ張り合うため、惑星同士が近づくと公転速度が加速し、離れると減速します。これにより、公転周期から単純計算される通過のタイミングと、実際に観測される通過のタイミングとにズレが生じます。
通過が始まる正確なタイミングは、ケプラー宇宙望遠鏡の観測データから導くことができます。このタイミングのズレと、公転周期から予測される惑星同士の配置を考慮して計算することで、惑星が及ぼす重力の強さ、ひいては重力の源となる惑星の質量を求めることができます。
リビングストン氏らは、ケプラー宇宙望遠鏡の数年分の観測データにもとづいてN体シミュレーションを行い、4つの惑星の質量を計算しました。複数の惑星による重力が絡んだ現象の計算はとても複雑ですが、その複雑な計算に挑んだことで、4つの惑星の正確な質量が判明しました。
生まれたての惑星がふわふわである証拠を発見

計算の結果、おうし座V1298星を公転する4つの惑星は、それぞれ地球の4.7倍から15.4倍の質量を持つことが分かりました。惑星の直径が地球の5〜10倍あることを考えれば、これはかなり小さな質量であり、平均密度はコルクと発泡スチロールの間くらいしかありません。これはまさしく「生まれたての惑星はふわふわ」であるという説を証明する実例です。
興味深いことに、4つの惑星はすでに進化の真っ只中にいることが示唆されます。特に、内側を公転する2つについては、惑星の誕生時に保持していた原始大気の大部分をすでに失っており、標準的な惑星誕生モデルである「コア集積モデル」と比べて、急激に冷却していることが推定されます。このようなプロセスは「ボイルオフ(boil-off)」と名付けられており、コア集積モデルでは説明できない性質を持つ惑星の形成を説明するモデルとして注目されています。おうし座V1298星の惑星は、このモデルを検証する貴重な実例となるかもしれません。
また、各惑星の進化は現在進行形であり、今後1億年間で更に大気を失うと推定されます。特に内側の2つの惑星は、完全に大気を失ってしまう可能性もあります。つまりおうし座V1298星の惑星は、スーパーアースやサブネプチューンが形成される途中の段階にあるのかもしれません。
おうし座V1298星の惑星は、「JWST(ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡)」による観測が始まっているため、近いうちに大気の流出に関するもっと詳しい情報が得られるでしょう。そうすれば、スーパーアースやサブネプチューンが形成される条件について、更に詳しいことが明らかにされるかもしれません。
いずれにしても、おうし座V1298星の惑星は、生まれたての惑星の進化の段階のスナップショットの1つです。惑星の進化に関する知見を深めるには、更なる観測事例の追加が必要となります。
今回の研究では、国際観測プロジェクト「MuSCATチーム」に所属するメンバーが参加していますが、そのMuSCATチームは新しい観測機器を開発中です。この観測機器は、今回のおうし座V1298星の惑星のような、年齢が若い惑星の観測データを詳細に得ることを目的としています。若い惑星の更なる理解については、今後の観測結果に期待しましょう。
ひとことコメント
生まれたての惑星の詳細な観測結果はとても貴重だから、この観測データはとても貴重になるよ!(筆者)
文/彩恵りり 編集/sorae編集部
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