連星のワルツが描いた“らせん模様” ハッブル宇宙望遠鏡が捉えたペガスス座の原始惑星状星雲
こちらは、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が観測した原始惑星状星雲「IRAS 23166+1655」です。 ペガスス座の方向、地球から約3400光年先にあります。

画像の左側に見える、暗黒の宇宙空間に浮かび上がった驚くほど幾何学的な“らせん模様”が、IRAS 23166+1655です。
この見事な模様は、中心にある「ペガスス座LL星(LL Pegasi)」という連星から放出された物質が周囲に広がっていくことで形成されています。厚い塵(ダスト)に覆い隠されているので、ペガスス座LL星は可視光線では直接見えず、観測するには赤外線を捉えなければなりません。
美しきらせん模様に秘められた星の終焉への物語
質量が太陽の半分から8倍程度までの恒星は、その生涯の終わりに超新星爆発を起こすことはなく、赤色巨星から白色矮星へと進化する過程で、星の外層からガスや塵をゆっくりと周囲の宇宙空間に放出していきます。
放出されたガスはやがて、外層を失った星が放射する強力な紫外線によって電離して、元素ごとに特有の波長の光を放つようになります。この光によって描き出される色鮮やかで複雑な構造を持つ天体は、惑星状星雲と呼ばれています。IRAS 23166+1655が分類されている原始惑星状星雲(前惑星状星雲とも呼ばれます)は、放出されたガスが惑星状星雲へと変化するプロセスの初期段階にあたる天体です。
この規則正しいらせん模様は、どうやって形成されたのでしょうか。ESA(ヨーロッパ宇宙機関)によれば、その理由は中心のペガスス座LL星が連星であることと関係があります。
2つの星が重力で結びついている連星は、あたかも手を取り合ってワルツを踊るように、主星と伴星が互いの共通重心の周りを公転し合っています。そのため、老いた星から放出されたガスは、回転するスプリンクラーが撒く水のように、らせん状の軌跡を描きながら広がっていくことになります。
計算によれば、らせん模様を形成するガスなどの物質は、時速約5万kmで外側へと広がっています。この速度とらせん模様の各層の間隔を組み合わせたところ、約800年ごとに新しいガスの層が形成されていることがわかりました。この800年という期間には、連星の公転周期がそのまま反映されていると考えられています。
死にゆく星と、それに寄り添う星のペアであるペガスス座LL星が織りなす“宇宙のワルツ”によって描き出された、IRAS 23166+1655の見事な幾何学模様。その姿を捉えた冒頭の画像は、ハッブル宇宙望遠鏡の「ACS(掃天観測用高性能カメラ)」で取得したデータを使って作成されたもので、ESA/Hubbleから2010年9月6日付で公開されました。
本記事は2020年10月12日公開の記事を再構成したものです。
関連画像・映像
【▲ 電波望遠鏡群「ALMA(アルマ望遠鏡)」の観測データをもとに推定された、IRAS 23166+1655の立体的な構造を示した3Dビュー(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO) / H. Kim et al.)】
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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