●ヴィヴェック・マハジャン氏による技術詳細の説明 AI産業化の加速へ

続いて登壇したヴィヴェック・マハジャン氏は、AI産業化が始まっているものの、それをさらに加速させるために世界のAIをリードするナンバーワン企業であるNVIDIAと、日本の技術をリードする富士通が協業することの意義を説明した。
 
富士通 CTO ヴィヴェック・マハジャン氏
 
●技術の詳細:AIエージェントとマイクロサービス

具体的な技術面では、顧客のニーズに合わせたAIエージェントの開発において、NVIDIAのNeMoマイクロサービスと富士通の高度なモデルやツールを組み合わせ、顧客がスピーディーに導入できる環境を整えるとしている。
 
●次世代コンピューティング基盤の開発

コンピューティング基盤に関しては、富士通とNVIDIAはすでに深く連携しているが、今後さらに密接に協力していくと述べた。NVIDIAのCEOであるジェンスン・フアン氏は、台湾での講演において、富士通のCPUとNVIDIAのGPUがNV-Linkを通じて密に連携していくことを発表している。
富士通のMONAKA CPUシリーズは継続的に進化し、NVIDIAの次世代GPUとも連携していく。シリコンレベルだけでなく、Armアーキテクチャ(省電力型のプロセッサ設計)の技術とNVIDIAの技術を組み合わせることで、革新的なプラットフォームを実現すると説明した。
マハジャン氏は、「メイドインジャパンの技術で」世界最高水準のシステムを構築すると強調し、8月22日にNVIDIAと発表した内容にも言及した。世界最高効率のCPUとGPUを組み合わせたプラットフォームを提供し、AIプラットフォームとコンピューティングプラットフォームを統合したソリューションを顧客に届けていくとしている。
先述の「富岳ネクスト」プロジェクトは富士通とNVIDIAのパートナーシップの一例だが、それだけでなく、さまざまな業界や顧客にこの技術を提供していく予定だと述べた。
 
 
●産業エコシステムとユースケース開発

エコシステムについて、マハジャン氏は「NVIDIAと富士通のAI技術を語っても、顧客と一緒でなければ何の意味もなく、価値を提供できない」と強調した。最も重要なのは顧客とのパートナーシップであり、さまざまな業界―防衛、行政、製造、金融など―でイノベーションを起こし、生産性を向上させ、新しいサービスを提供していくことが目標だとしている。
 
●ロボティクス分野での具体例

具体的なユースケースとして、ロボティクス分野のフィジカルAIを例に挙げた。この分野では株式会社安川電機とも協力していることをマハジャン氏は明かした。
 
 
●量子コンピューティングとの融合

マハジャン氏は最後に、量子分野についても触れた。富士通はNVIDIAとのパートナーシップを通じて、量子コンピューティングとHPCのハイブリッドシステム、計算化学分野での技術実現、量子・古典ハイブリッドアプリケーション、量子アルゴリズムの実装などを進めていく予定だ。
 
●ジェンスン・フアンCEOからのメッセージ

会見の終盤では、NVIDIA CEOのジェンスン・フアン氏がゲスト登壇。「本日は非常に重要な日である。我々の協業を発表し、日本のAI時代を始動させる」と述べた。
また、フアン氏は「AIは我々の時代における最も強力な技術力」であり、「次の産業革命」であると位置づけた。そして、電気やインターネットのように、AIは不可欠なインフラとなり、すべての国がそれを構築することも示唆した。「本日より、富士通と共に、NVIDIAは日本のためのAIインフラを構築していく」と力強く宣言した。
 
NVIDIA CEO ジェンスン・フアン氏
 
●日本のためのAIインフラ

NVIDIAと富士通は、シリコンからシステム、AIモデル、ソフトウェアまで、日本の産業のために設計された日本のAIインフラを創造しているとフアン氏は説明した。富士通のMONAKA CPUとNVIDIAのGPUは、NV-Link Fusionという革新的な技術によって融合され、エネルギー効率が高く高性能な新しいクラスのコンピューティングシステムを生み出すとしている。
 
●産業別の応用例

ヘルスケアでは、AIエージェントが医師や看護師を支援し、病院運営を管理する。製造業やロボティクスでは、反復的な手作業を効率化する。通信業界では、より高速でエネルギー効率の良いサービスを提供し、5Gや6Gにおけるネットワーク効率とパフォーマンスを向上させる。
ロボティクスとAIエージェントは、日本が直面する労働力不足という大きな課題に対処し、高齢化社会に備える一方で、経済成長のための新たな機会にもなるとフアン氏は語った。
 
●まとめ

今回の記者発表会で、富士通とNVIDIAのAI領域の戦略的協業の詳細が語られた。来たるべきAI産業革命、そしてAI駆動社会に向けて両社が新たに創造するテクノロジーに今後も注目していきたい。