「J1参入プレーオフ出場」4チームの見逃せないキーマン厳選 岡山、熊本、大分、山形…J2クラブ“推し”の主役候補は?
【識者コラム】J1参入プレーオフに出場する4クラブのキーマン候補を紹介
2022シーズンのJ2はアルビレックス新潟が優勝、横浜FCが2位でJ1昇格を決めた。
しかし、まだ終わったわけではない。J1参入プレーオフがあるからだ。
3位 ファジアーノ岡山
4位 ロアッソ熊本
5位 大分トリニータ
6位 モンテディオ山形
※3位と6位、4位と5位が上位側のホームで1回戦。それぞれの勝者がファイナルで当たり、勝者がJ1・J2入れ替え戦に挑む。
これら4クラブが出場し、一発勝負のトーナメント方式で勝ち上がったクラブが、J1の16位との入れ替え戦に臨むことになる。非常に険しい道のりではあるが、ここからJ1昇格を勝ち取った事例は過去にいくつもあるだけに、白熱した戦いになることは間違いない。
J1の16位は確定していないなかで、参入プレーオフに出場が決まっているJ2勢の4クラブから絶対に見逃せないキーマン4人を筆者の目線で選んだ。サポーターはもちろん日頃、あまりJ2を観る機会がないサッカーファンでも、観ればテンションが上がるような熱い戦いが繰り広げられることは間違いない。
そして試合終了のホイッスルが吹かれた瞬間に必ず訪れる、残酷なまでの歓喜と落胆のコントラストを是非とも見届けてもらいたい。
■ファジアーノ岡山のキーマン:河野諒祐(DF)
今季J2リーグ成績:36試合0得点
右ウイングバックというポジションにありながら、レギュラーシーズンで10アシストを記録した“クロスのアーティスト”だ。キックが正確であるだけでなく、味方の状況を見ながら速さ、高さ、スペースかピンポイントに人を狙うかなど、柔軟に蹴り分けることができる。
前線にはオーストラリア代表FWミッチェル・デューク、主にジョーカーとして威力を発揮する韓国人FWハン・イグォンが構えており、河野のクロスは非常に危険だ。またCKキッカーでもあり、DFヨルディ・バイスやDF柳育崇といった屈強なセンターバックに合わせるボールは一発勝負のプレーオフで、相手の大きな脅威になりそうだ。
またクロスからのアシストが目立つ河野だが、ファーサイドから飛び込むフィニッシュもある。今季はその形からゴールが生まれていないので、プレーオフで対戦相手があまり警戒していなければ、ここで得点する可能性はかなりあると見ている。
湘南ベルマーレの下部組織で育ち、そこからJ3の福島ユナイテッド、さらにはJFLのヴェルスパ大分でもプレーした河野だが、岡山の中心として、湘南時代に1試合だけ経験したJ1のステージに、ファジアーノの主翼として辿り着けるか。
“武者修行”を経て熊本で飛躍、平川の躍動に期待
■ロアッソ熊本のキーマン:平川 怜(MF)
今季J2リーグ成績:11試合2得点
かつてMF久保建英(レアル・ソシエダ)とFC東京U-18やU-17日本代表で名コンビを組んだタレントであり、筆者も明るい将来を信じて疑わなかった。しかし、プロの壁に当たり、FC東京でなかなか出番がなく、チャンスをもらってもモノにできない時期が続くなかで、鹿児島ユナイテッド、松本山雅FCでの“武者修行”を経て、22歳となった夏の移籍で熊本にやってきた。
チームを率いるのは“鬼才“大木武監督。パス&ムーブを駆使する攻撃的なスタイルで、前半戦から注目を集めていた熊本だが、大木監督が2列目の中央をこのテクニシャンに託したことで、リズムとアクセントがさらに引き上げられた。平川もディフェンスを剥がせるセンスと視野の広さをより前のポジションで生かすことで、14得点のFW郄橋利樹など3トップに好パスを送ることはもちろん、MF河原創の効果的な攻め上がりを引き出すなど、新境地を見出している。
本職のボランチだと展開力は生かせるが、守備面でどうしてもデュエルの問題が出てしまう。しかし、前目のポジションでは個人でディフェンスを切り裂くほどのスピードやパワーはない。そんな平川にとって、コンビネーションで相手を崩し切るスタイルで、水を得た魚のように躍動している。熊本でかつてない輝きを放っている平川だが、チームをJ1の舞台に導くことができるか。
■大分トリニータのキーマン:下田北斗(MF)
今季J2リーグ成績:35試合3得点
古巣の川崎フロンターレが、J1で逆転優勝に向けて戦っている。筆者の中で、その川崎でも十分に戦力になるという評価は変わっていない。しかし、大分における下田の存在感を見れば、また違った充実感を得ているようだ。それは右上腕に巻かれたキャプテンマークが証明している。
中盤から攻守を動かす中央軸のように振る舞い、方向性を与えていく。主にボランチのコンビを組む20歳MF弓場将輝は機動力を活かして幅広く前線へ関わっていくなかで、下田は冷静にバランスを取りながら、常に味方のためのパスコースを用意する。それでいて、多くのチャンスは下田を起点にもたらされるのだ。
ここまでの3得点5アシストという数字も、そうした役割をすべてこなしながら達成したものだ。もともと「もっとうまくなりたい」が口癖で、良い意味で“我欲”の強い選手だった。しかし、川崎とは異なる環境の中で、自分が引っ張る側にならなければいけないという変化が見られる。今の下田を観ると、川崎がタイトルと無縁だった頃の中村憲剛氏を思い出す。この昇格をかけたプレーオフでも心身で重要な存在であることは間違いない。
押しも押されもせぬ山形の司令塔、“ヤマのキング”になれるか
■モンテディオ山形のキーマン:山田康太(MF)
今季J2リーグ成績:35試合5得点
押しも押されもせぬ山形の司令塔であり、卓越したチャンスメイクに加えて、機を見た飛び出しなど“もう1人のフィニッシャー”としても相手ディフェンスの脅威になる。非凡なテクニックを備えながら、攻守両面でハードワークできることが評価されていた。
下部組織で育ち、甘いルックスから“ハマのプリンス”とも呼ばれた横浜F・マリノスでは、そのニックネームとは裏腹に、マルチロールとして守備的なポジションでも起用されるなどオプションの立ち位置だった。そこから期限付き移籍した水戸ホーリーホックで、中盤の主軸としての立ち位置を確立できずに、山形に環境を変えて再挑戦することとなった。
山形で成功した大きな理由は、継続して攻撃的なポジションで起用される中で芽生えた、チームの中心としての自覚、そして元横浜FM時代のコーチでもあるピーター・クラモフスキー監督の信頼だろう。4-4-2の時は2トップで起用されるなど、あくまで攻撃の中心を任された。それだけに、常に相手のマークに遭うことになるが、最近はそれらを逆利用して、味方を生かすプレーが目立つ。
奇しくも4-2-1-3というマリノスと同じシステムで、トップ下を担うようになった山田。徳島ヴォルティス戦でプレーオフに導く2得点を決めたFWディサロ燦シルヴァーノなど、周囲のアタッカー陣を生かしながら、昇格のヒーローとなれるか。その時こそが“ヤマのプリンス”が“ヤマのキング”になる瞬間かもしれない。(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)
