内製率は?という質問をメーカー担当者に聞くと……

「この工場、内製率は何パーセントですか?」。

 日系自動車メーカーの海外工場の取材に行くと、筆者はよくこうした表現を使う。自動車工場での内製率とは、1台の自動車に使われる部品のうち、外部メーカーが製造している部品との比率を指す。

 内製率と聞いて多い答えは「地場の部品メーカーもありますが、大体は日系の系列会社や協力会社なので、正確に内製率と言われても……」というものだ。

 端的に、部品点数では内製品より外注品のほうが圧倒的に多い。ただし、自動車の主体となる部分は内製である。この話、一般的な自動車の製造過程を順に見ていくと、よくわかる。

 製造過程その1)プレス工程
大手素材メーカーから仕入れたロール状の金属を、大型のプレス機に入れて、車体やドアなど主要パーツを打ち抜く。プレス機は、小松製作所など専用メーカーの製品であり、プレスに使う金型も金型メーカーが作成する。

 製造過程その2)溶接工程
プレスで打ち抜いた部材を、安川電機などの溶接ロボットが自動で組み立てていく。

 製造過程その3)塗装工程
溶接された車体は、塗装専用メーカーの機材が並ぶ自動化ラインに入る。一部のクルマは手塗工程がある。

 製造過程その4)組立て工程
ラインの脇には部品メーカーから納入された各種部品が並び、組み立て要員がそれぞれのセクションでの仕事を流れ作業でこなす。

 製造過程その5)最終チェック工程
ローラーの上で駆動輪を回転させるシャーシダイナモのテストや、目視による傷や塗装ムラなどを確認する。

 こうした5つの工程のなかで、完全に内製と呼べるのは車体のみだ。

電動化車両が増えると内製率はさらに下がる

 一方エンジンについては、自動車メーカーのエンジン工場で鋳造、鍛造、切削などを行うため、内製率としては高いといえる。変速機については、自動車メーカーが専用工場を持つ場合と、系列や外注企業に依頼する場合がある。

 今後は、自動車メーカーの部品の内製率はさらに下がる可能性が高い。もっとも大きな影響があるのが、パワートレインの電動化だ。すでにEVやハイブリッド車ではモーター、インバーター、電池などのほとんどが外注品だ。10年ほど前、リーフが登場して世界的なEVブームが来たとき、自動車メーカーが電池メーカーを子会社化する動きがあった。だが最近では資本関係を清算し、中国や韓国の企業に外注するケースが増えた。

 自動運転や高度運転支援システム(ADAS)についても、カメラやレーザーなどのセンサー機器や、画像認識で得たデータをクラウド上で解析する技術など、自動車メーカーで内製化している企業は少ない。いわゆるCASE時代が本格的に到来すると、自動車メーカーの部品内製率は一気に低くなる。