「ファストフードは不健康だからやめなさい!」

子供の頃、マクドナルドに行きたがると、よく両親にこう言われました。当時は世間的にそんな風潮で、そうなんだ…と疑うことなく信じ、そのままスクスクといいおっさんに育った私。

そんな私も父親となり、子供にも同じことを言っていますが、ある日子供に聞かれました。

「どうしてマクドナルドが不健康なの?こんなに美味しいのに」

…そう言われると即答できない。カロリーが高いから?栄養バランスが悪いから?何となく雰囲気で健康に悪そうと思っていましたが、その根拠を考えたこともありませんでした。

そこでマクドナルドがどうして不健康と言われるのか正しく知るために、栄養士の方に話を聞き、栄養学的な観点で調べてみたところ…知らなかった事実が次々と明らかになりました。

 

マクドナルドのセットをPFCバランスで評価してみよう

栄養学的観点から評価するにしても、どうやって評価すればいいのでしょう。素人ではカロリーの大小くらいしか評価基準が思いつきません。


そこで管理栄養士の牧野直子さんを訪ね、どう評価したらいいか聞いてみました。

牧野「そうですね…多くの人はエネルギー(カロリー)は気にすると思いますが、そのエネルギーは三大栄養素で構成されているのはご存知ですか?」

――いえ、初めて聞きました。

牧野「食品のエネルギーは、たんぱく質(Protein)、脂質(Fat)、糖質(炭水化物、Carbonate)の三大栄養素で構成されているのですが、実はそれぞれのバランスも大事なんです」

牧野「最近は糖質制限ダイエットが話題ですが、糖質(炭水化物)を避け、脂質とたんぱく質を多く取るのは、健康的な食事とは言えません」

――どういうことでしょう?


牧野「摂りすぎたたんぱく質は体に蓄えられず、余分は体脂肪になったり尿として排出される栄養素です。なので食べすぎてもカロリー過剰にはなりにくいのですが、排出するのに腎臓に負担がかかるので、摂りすぎも良くないんです

牧野「また炭水化物の糖質は脳の働きに重要で、不足すると記憶力の低下や脱力感、イライラの原因になります。また脂質も嫌われがちですが、脂溶性ビタミンの吸収や、細胞膜をつくるのに欠かせません」

牧野「大切なのはエネルギーを構成する三大栄養素のバランスです。三大栄養素の頭文字を取ってPFCバランスと言うのですが、たんぱく質15%、脂質25%、炭水化物60%のバランスが理想的です。ですので、PFCバランスが健康的な食事の一つの指標になると思います」

――なるほど!


そこで、試しに教わったPFCバランスを、アメリカンドッグで計算してみました。

まずは三大栄養素の質量(グラム)を調べ、たんぱく質は1gあたり4kcal、脂質は1gあたり9kcal、炭水化物が1gあたり4kcalをかけ、エネルギーを算出します。

そして総エネルギーから、各栄養素のカロリーの割合を算出したのがPFCバランス。理想とされるバランスは、たんぱく質15%、脂質25%、炭水化物60%とされています。

PFCバランスをより視覚的にわかりやすくしたのが右上のグラフで、中心の正三角形が理想的なバランス、その上に重なる三角形がその食品のPFCバランスとなります。

中心の正三角形と重なるほどPFCバランスが良いことを示し、このホットドッグの例では、理想バランスよりも脂質が多い傾向にあることがわかりますね。

また一つの指標として、理想のPFCバランスとの差を合計した、「PFCバランス誤差」も計算してみました。この値が低いほど、バランスが良いという事になります。

好きなマックのセットと、好きな食事のPFCバランスを記者3人の好みで比べてみた

では、マクドナルドで公開されている「アレルギー・栄養・原産国情報」を元に、マックのセットメニューのPFCバランスを計算してみようと思います。

…がしかし、マックのメニューのPFCバランスだけでなく、他の食事のバランスも見てみないと、それがいいのか悪いのかよくわかりません。

そこで、好みの異なる編集部記者3名の、マックの好きなセットとマック以外で好きな食事のPFCバランスを計算して、どちらが栄養バランス的に良いのか比べてみることにしました。

編集長:平均的な中年男性のケース


そこでまずは、平均的な中肉中背の中年男性である編集長の好みで比べてみました。


編集長の好きな「エッグチーズバーガー+ポテト(M)+コカ・コーラ(M)」と、「ハンバーグ+ライス」を比べてみると、…おや?

カロリー量はいずれも、平均的な中年男性の1食あたりの摂取カロリーの目安である800kcalをやや上回っていますが、マクドナルドのエッグチーズバーガーセットの方が、カロリーは45kcalほど低く、PFCバランスの誤差も少ない結果に。

あれ、なんか思っていたほど不健康ではないような…?

まゆな記者:カロリーが気になる女性のケース


では、体のラインを気にしている女性記者、まゆな記者の好みではどうでしょうか。


まゆな記者がよく食べる「フィレオフィッシュ+サイドサラダ(低カロリー玉ねぎドレッシング)+野菜生活100(M)」の組み合わせは、PFCバランスの誤差が6%しかないグッドバランス!素晴らしい!

対して「焼き鯖定食」は、和食だから低カロリーかと思いきや、総カロリーは755kcalとマックの約1.5倍もあり、PFCバランスも炭水化物が少なく脂質が多めで、あまり良くありません。

この差の原因は、鯖の1人前の量が多すぎるため。牧野先生によると、肉も魚も1食あたりだいたい80gが理想的なのだそう。また鯖は魚の中でも特に脂が乗っているので、これも脂質が高く出た要因のようです。

ただし誤解のないように言っておくと、青魚の脂質はDHAやEPAを含み、血液や血管の健康に様々な効果が認められていて、摂取したい栄養でもあります。うーん、栄養学って難しい…。

こうし記者:お肉大好きなメタボ男性のケース


では、お肉大好きこうし記者こと、私の場合はどうでしょうか。


マクドナルドはボリューミーなビッグマックに、ポテトをナゲットに変更。飲み物は栄養バランスを考えてアップルジュースに。対して外食で好きなのは、ミックスグリルとご飯のセット。

…我ながら、見事に肉まみれです。

PFCバランスを見るとどちらも脂質が高く、もはやマクドナルドの栄養バランスがどうこうの問題ではなく、太る人は本能で脂質の多い食事を選んでしまうんだなぁ…と考えさせられる結果に。

ただビッグマックセットの方が、ミックスグリルよりも3割くらいカロリーが少なくてヘルシーですが…いや、それよりも食生活を根本的に改めないといけないですね…。


さすがの牧野先生も、このチョイスには苦笑い。なるべくしてなった体型に、牧野先生から全体的な栄養バランスを考えて食事をとるようにと、キツめのアドバイスを頂戴してしまいました。心配して下さって本当にありがとうございます。

しかしこうしてマクドナルドマクドナルド以外の外食を比べてみると、以外にもマクドナルドのPFCバランスは悪くないどころか、他よりバランスが良い場合も多々あり、とても不健康と言える感じではありません。思ってたのと違う…!

ビタミンやミネラルは不足していないの?

では、ビタミンやミネラルについてはどうでしょうか。

マクドナルドというと、バーガー、ポテト、ドリンクというセットが印象的で、野菜が少なそうなイメージがありますが、実は栄養バランスの良い組み合わせもできるって、知ってました?

セットのポテトは、コーンやサラダに変更できる


例えばマクドナルドのセットについてくる、Mサイズのポテト。これは無料でコーンやサラダに変更でき、野菜の比率を高めることができるんです。

これにより、ポテトに比べて脂質とカロリーをグッと落としつつ、ビタミンやミネラル、食物繊維も摂れて、よりバランスの良い組み合わせにできるようになっています。

果汁・野菜系ドリンクを選べばビタミン・ミネラルもより豊富に


またドリンクについても、セットで選べるミニッツメイド オレンジ、野菜生活100は、不足しがちなビタミンやミネラルが豊富。

マクドナルドに限らず、外食ではどうしても野菜が不足しがちですが、こうした飲み物があることで、より栄養バランスを良くすることができるようです。

カロリーは高くないの?


しかしそうは言っても、マクドナルドを始めとするファストフードは、カロリーが高い、太るとよく言われてます。それは間違いだったのでしょうか?

マクドナルドや他店の栄養成分から、カロリーやPFCバランスを調べてみて、編集部は一つの答えにたどり着きました。その答えは、「組み合わせ次第で、カロリーは高くも低くもなる」でした。

ご存知の通り、マクドナルドにはさまざまなバーガー、サイドメニュー、ドリンクがあり、セットの組み合わせはおよそ2500通り以上。その中には選び方によってはカロリーが高いセットもあれば、低いセットもあります。


肝心なのは、どれを選ぶかということ。冒頭の編集部スタッフの好みを聞いてみて気がついたのですが、痩せている人は低カロリーな組み合わせを、太っている人は高カロリーな組み合わせを本能的に選んでしまうようで、それはメニューに問題があると言うよりは、嗜好の問題のようでした。

そしてこれはマクドナルドに限らず、他の外食でも同じ。例えば太りがちな私がメニューを見て感覚的に選んだものは、ページ内で最もカロリーが高いなんてことが多々ありました。私の場合、なるべくして太っていたと言わざるを得ません…。

では太らないようにするにはどうしたらいいのでしょう。

太る痩せるは、乱暴に言ってしまえば、1日の消費カロリーを上回る食事をすれば太るし、下回れば痩せるという単純な話です。

1日に何もしなくても体が消費するカロリーを「基礎代謝」と言い、性別・年齢・身長・体重からおおよその値を計算することができるのですが、大切なのは自分の1日の基礎代謝を知り、1日3食でカロリーや栄養バランスを考えて食事をとるように意識すること。

参考:日本医師会 1日に必要なカロリー「推定エネルギー必要量」

欲望のままに食べていてはどこで食べたって太って当たり前で、マクドナルドやファストフードに非はないんですよね…!

栄養学的にバランスの良いマクドナルドのセットメニューは?

ではPFCバランスやカロリーを踏まえると、どんなセットにするのがベターなのでしょうか?

そこで全セットの栄養価を計算し、特徴的なセットの一例をピックアップしてみました。

低カロリーセット


まずはとにかくカロリーを抑えたい…という人なら、イチバンのオススメは「ベーコンレタスバーガー+サイドサラダ(低カロリー玉ねぎドレッシング)+爽健美茶(M)」のセット。飲み物は、他のノンカロリー系に変えても大丈夫です。

セット全体のカロリーは、わずか392kcal。マクドナルドのバーガー類ではフィレオフィッシュ、ベーコンレタスバーガー、えびフィレオ、エッグチーズバーガーのカロリーが低く、これらをセットのメインにすると、低カロリーに抑えられるようです。

低カロリー&PFCバランスセット


ではPFCバランスを重視した上で低カロリーにするなら、どのセットがベストなのでしょうか。あらゆるセットを検証して出た答えは「フィレオフィッシュ+スイートコーン+ミニッツメイドオレンジ(M)」でした。

このセット、PFCの理想バランスからの誤差はわずか2%で、カロリーも543kcalと控えめ。さらにオレンジジュースはビタミンやミネラルも豊富なので、バランスも良さそう。1食で全てバランスよく…は難しいので、他の食事でほうれん草やにんじん、ブロッコリーなど色の濃い野菜(緑黄色野菜)をとるようにすればOKです。

とりあえず何にするか悩んだ時のために、この組み合わせは覚えておいて損はないと思いますよ。

ビッグマックベストバランスセット


そしてマックと言えばやっぱり100%ビーフパティが使われたビッグマックでしょう!というあなたにオススメなのが、「ビッグマック+スイートコーン+ファンタ グレープ(M)」のセット。

しかしこのセット、総カロリーは742kcalと、平均的な男性の昼食に必要なカロリー量に収まりつつも、PFCバランスもそこそこ良く、ボリュームもたっぷり。

驚いたのは、悪く思われがちな甘い炭酸飲料のファンタが加わることで、PFCバランスが良くなっていたこと。

なぜなのか栄養バランスを分析してみると、ハンバーガー単体だとたんぱく質の割合が高いため、ドリンクが不足している炭水化物を補い、PFCバランスが良くなるようです。ですが、甘い飲み物(糖分)はこの1杯で十分なので、他の食事でとる飲み物は、甘みがないものにすればOKです。

子供の頃、食事中に甘い飲み物はダメ!なんて言われて育ちましたが、PFCバランス的にはメリットがあるのが驚きました。また実際に食べてみたところ、炭酸で満腹感を感じやすくなる効果もあるようです。

必要なのは自分に必要なエネルギーを知り、1日を通してのトータルバランスを考えること


検証を通してみると、決して不健康ではなかったマクドナルド。では一体どうしてここまでファストフードが不健康だと言われてきたのでしょうか。

その一つが、数年前に話題になった某映画。毎日マクドナルドで食事を摂ったらどうなるか?という内容でしたが、改めて見直してふと思いました。

どんなものでも毎日同じものを食べていたら、体がおかしくなって当たり前なんですよね。

体に必要な栄養素は多くの食品を取ってバランスが取れるもの。毎日同じものを食べていたら、どこで何を食べたって偏るのは当然です。

ちょっと考えればごくごく当たり前の事なのですが、時々話題になるネットやメディアのセンセーショナル(な印象の)極論を目にすると、ついつい「ファストフードは不健康」という先入観を持ってしまうもの。ですが今回の検証でファストフードに限らず、なんでも食べ方次第だということに気づくと、なんだか目からウロコが落ちたようでした。

先入観を捨てて見直してみれば、マクドナルドはメニューも豊富で飽きにくく、早くて手軽に美味しく食事を摂れる便利なお店であり、まさにファストフードの一つの理想形。


もしもファストフードがこの世になかったら、不便なのは間違いありません。

どんな食べ物でもお店でも、健康になるか不健康になるかは食べる人の日頃の意識次第。もちろん、適度な運動やストレスを溜めこまないことも健康な生活には不可欠です。その上で正しい栄養バランスの考え方や知識を身につけて、上手に活用したいものですね。

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