LIXILグループ 藤森義明社長(AFLO=写真)

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■中国子会社が不正会計で破産

米ゼネラル・エレクトリック(GE)の上席副社長を務めるなど、国際ビジネスに精通した「プロ経営者」としてLIXILグループの海外事業を加速してきた藤森義明社長が、自ら描いた成長路線で大きな“やけど”を負った。

買収した中国子会社が不正会計で破産に追い込まれ、2014年3月期からの3年間に最大660億円の損失が発生するからだ。積極的な海外企業の大型M&A(合併・買収)で、LIXILの海外事業を一気に拡大した経営手腕への評価は高かった。半面、M&Aの成果がしっかり実を結んでおらず、自己資本利益率(ROE)も低水準にとどまっており、その矢先の“自責点”は、プロ経営者にとっては大きな不覚にも映る。

不正会計が発覚したのは中国で水栓金具、衛生陶器を生産するジョウユウで、14年1月に買収したドイツ水栓金具大手、グローエの子会社だ。LIXILは今年4月に両社を連結子会社としていた。LIXILとしては、中国全土に約4000店の販売網を持つジョウユウの営業基盤を生かし、巨大な中国市場での橋頭堡に位置付ける狙いだった。

しかし、これが裏目に出た。ジョウユウは巨額な簿外債務を抱え、財務諸表と実際の売上高や負債などが大きく異なった。不正会計が明らかになったのは連結子会社にした直後で、不正会計を見抜けなかった点でLIXILの落ち度は否めない。この結果、藤森社長が強力に推し進めてきた海外拡大路線は、見直しを迫られるとの見方も広がった。

■プロ経営者として真価が問われる

しかし、藤森社長は強気の姿勢を崩さない。損失が最大660億円に上ると発表した6月3日の記者会見でも、「グローバル戦略は長期的視野に立っている。不退転の決意で継続する」と言い切った。6月26日開催の株主総会ではさすがに株主には低姿勢で、「ジョウユウのブランドでローエンド(低価格帯)市場を攻略する計画だった。今後はINAXやアメリカンスタンダードなどの既存ブランドで、自力で中国市場を攻略したい」と中国戦略の軌道修正に言及した。

ただ、基本的に海外事業拡大の方針に変わりはない。藤森社長が描く成長戦略は、海外M&Aにより20年3月期に海外売上高1兆円を目指すシナリオで、11年の藤森社長就任後は、イタリアのカーテンウォールメーカー大手、ペルマスティリーザを11年末に、13年には米衛生陶器最大手のアメリカンスタンダードをそれぞれ買収した。

さらに、グローエを14年1月に買収し、海外M&A路線を突っ走ってきた。住宅設備機器・建材メーカーにとって、主力の国内需要が頭打ちな事業環境下で、成長の軸足は海外市場に移さざるを得ない背景がある。藤森社長はGEの上席副社長を経て、GE日本法人の社長・会長を務め、GE時代は名経営者として名高い当時の最高経営責任者(CEO)、ジャック・ウエルチ氏の薫陶を受けている。その後、LIXILの創業家出身の潮田洋一郎氏に請われ、社長に迎え入れられた。グローバル企業への脱皮を目指すLIXILにはまさに格好な人材だった。

しかし、今回の不正会計で買収先の内部管理体制にまで目が行き届かなかった事実をさらけ出し、海外M&Aもある程度の足踏みが予想される。加えて、ROEの低さから米議決権行使助言機関インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は、株主に対し6月26日の株主総会で藤森社長の取締役再任反対を推奨した。結果的に総会は乗り切ったとはいえ、海外戦略とROEで引き続き外圧にさらされるのは避けられない。プロ経営者としての真価が問われるのは、むしろこれからだ。

(経済ジャーナリスト 水月仁史=文 AFLO=写真)