ファーガソン監督の退任が香川にとって“吉”となる条件
名将の退任により気になるのは、やはり日本代表MF香川真司の今後についてだろう。ファーガソン監督の手によって今季開幕前にドルトムントから引き抜かれた香川は、「足慣らし的なシーズンとして長い目で起用されてきた」というのが今季の無難な評価かもしれない。同監督が香川について度々口にした「来季はもっと良くなるだろう」という言葉がその全てを物語っていたからだ。
ファーガソン監督はシーズン終盤戦、「シンジはファウルを避けがちなブンデスリーガから、その真逆のスタイルを持つプレミアリーグへ来た」と、香川に順応の余地を与えていることを暗に意味するコメントを発していた。
今季、香川が加入して現地メディアが一様に報じたのが「勝てないチャンピオンズリーグでの4−2−3−1への戦術変更」だったが、負傷期間を除いた今季のチャンピオンズリーグ5試合での香川の成績は、3度の先発途中交代、2度の出場機会なし、2アシストとなり、同5戦のチーム成績は、グループステージ3勝、16強のレアル・マドリード戦で1分け1敗(=敗退)だった。レアル戦では肝心の香川の長所は生きず、第2戦では起用されずに終わっている。
今や欧州サッカー界の主流は4−2−3−1の布陣であり、今季、チャンピオンズリーグ決勝に進出したドイツ勢のバイエルンやドルトムントをはじめ、プレミアリーグでもマンチェスター・Cやチェルシーが採用している。今季の香川は変則的な4−2−3−1の布陣で、トップ下の他に、日本代表での定位置である左MFでも起用されてきたが、総合的な定位置争いではFWウェイン・ルーニーに引けをとっていたと評価すべきだろう。
無論、監督交代による布陣変更や起用法などで香川の立場が悪くなる可能性もあれば、好転する可能性もある。後任監督の最有力候補はエヴァートンで11年間指揮を執り続けているプレミアリーグで3番目に任期の長いスコットランド人のデイヴィッド・モイーズ監督であり、ファーガソンが自ら選んでいるとも噂されている。彼はFWルーニーをエヴァートンで育てた監督だが、マンチェスター・U移籍後に仲たがいを起こして裁判沙汰を起こした経緯もあるだけに、モイーズ就任でルーニーの肩身が狭くなるとの見方もある。もちろんルーニー退団の可能性は低いが、エースの去就はさておくとしても、労を惜しまず走り続ける勤勉な選手を好むモイーズにとって、香川は「好みのタイプ」と言えるだろう。
モイーズの他では、ファーガソンを「ボス」と呼んで慕うレアル・マドリードのジョゼ・モウリーニョ監督や、香川の恩師でもあるドルトムントのユルゲン・クロップ監督らの名前も浮上している。仮に後者の“サプライズ就任”が実現するとなれば、香川にとっては理想的な環境が整うだろう。さらにこの2人の監督に付随して噂されているのが、両クラブのFWロベルト・レヴァンドフスキとクリスティアーノ・ロナウド獲得話だ。ファーガソンと同じく、今季限りでマンチェスター・Uの代表取締役のポストから退任を表明しているデイヴィッド・ギル氏も「今夏も補強は行う」と話しているだけに、香川の新たなライバルが出現する可能性も十分にあり得る。
文●藤井重隆

