利益わずか1%未満ですべてがパー 退職代行『モームリ』元社長夫婦が法廷で語った後悔
退職代行といえば『モームリ』だったが……
「24時間対応で、LINEだけで即日退職OKの通知型退職代行サービス」という謳い文句に加え、「弁護士監修」「労働組合提携」を大々的に打ち出し、’22年3月の事業開始以来、多くの利用者を獲得した退社代行サービス『モームリ』。
同社を巡り、報酬を得る目的で退職希望者を弁護士に紹介したとして、弁護士法違反などの罪に問われている運営会社『アルバトロス』元社長の谷本慎二被告(37)と、妻で同社元幹部の志織被告(31)の初公判が5月26日、東京地裁で開かれた。
「起訴状によると、両被告は弁護士資格がないにもかかわらず、’23年6月から’25年2月までの間に、退職希望者約170人を提携先の弁護士2人に紹介。その報酬として『労働組合への賛助金』などと名目を偽り、1人当たり1万6500円、計約284万円を違法に受け取っていました。
法廷に姿を見せた慎二被告は、ネイビーのスーツを着用し、黒縁メガネ姿。メディアに出演していたころのスマートなイメージとほとんど変わっていませんでした。志織被告は、黒いスーツに肩まである髪を後ろで1つに束ねていて、こちらも落ち着いた印象でした。裁判長から現在の職業を問われた慎二被告は『無職になります』、志織被告は『退職しました』と答え、検察側が読み上げた起訴内容については、両被告とも『間違いございません』と認めています」(全国紙社会部記者)
検察が読み上げた慎二被告の経歴はこうだ。大学卒業後、アミューズメント企業に入社。カラオケ店の店長を5年、マネージャーを5年務めたが、〈肉体的にも精神的にもきつく10年後の姿が見えなかった〉と退職。その間に退職代行という事業を知り〈自分でもできるのではないか〉と、前職で同僚だった志織被告ら3人で’22年2月に『アルバトロス』を設立した。
若者中心に利用者が増え、業績は急拡大。慎二被告も会社設立当初は現場に出ていたが、メディア対応に力を注入するようになった。その成果もあり、「退職代行といえば『モームリ』」と言われるまで知名度をアップさせ、’25年の売り上げは3億5000万円を達成している。
一方、会社の根幹である退職支援事業部の部長を務めていたのが志織被告である。
「志織被告が同業他社から、弁護士に退職希望者を紹介すると紹介料をもらえるという話を聞き、それを伝え聞いた慎二被告が弁護士に相談しています。弁護士からは、紹介料ではなく労働組合の賛助金名目であれば問題ないと言われ、退職希望者を紹介するようになったそうです」(前出・記者)
「なくてはならない存在」
冒頭で紹介した初公判に戻ろう。以下、弁護人からの質問に対する慎二被告の発言である。
──違法性の認識は?
「弁護士が言うなら大丈夫だろうと思って受け取ってしまった」
──なぜ、紹介料を得ようと思ったのか?
「初期の頃はそこまで利益が出ていなかった。数万円でももらえたらと思いました。愚かなことをしたと反省しています」
──現在、『アルバトロス』との関係は?
「相談があれば対応しますが私から関わることはありません」
そう話し、自身が代表を務めた会社との完全決別を宣言した。終始、冷静に対応しているように見られた慎二被告だったが、明らかな動揺が見られる場面もあった。それが、妻である志織被告について聞かれた時だった。2人の間には幼い子どもがおり、現在、夫婦は別居中で、志織被告と子どもは彼女の実家で暮らしているという。
「(彼女は)悪意を持って動くタイプではありません。私の指示どおりに動いただけで、迷惑をかけて反省しています。望んでくれるのであれば関係を続けたいと思っています」
志織被告を庇(かば)いつつ、婚姻関係の継続を望んだ。
次に証言台に立ったのは志織被告だった。弁護人とのやり取りは次のとおりだ。
──紹介料については、どのように認識していたのか?
「よくわかっていなかった。グレーなおカネとは思っていたが、そこまで深く考えていなかった。(中略)少しでも依頼者への間口を広げて依頼者の力になれたらいいと思いました。そして売り上げにつながればいいという安易な思いでした」
──紹介料の利益は?
「(全体の)0・数%(1%未満)の売り上げだったと思います」
そして、「婚姻関係を続けたい」と語った慎二被告との今後について問われた志織被告は、
「できることなら一緒に住みたいと思っています。私と違う考えを持っていて、なくてはならない存在」
と話し、俯(うつむ)いた。夫を支えようとした提案が破綻を招き、わずか0・数パーセントの利益で全てを失ったのなら、なんとも皮肉な話だ。しかし罪の事実は変わらない。二人の裁判は6月5日に結審する予定だ。
その2日後には、東京地裁で『モームリ』側から違法に依頼者の紹介を受けた罪に問われている弁護士法人「オーシャン」と代表弁護士の梶田潤被告(45)の初公判が行われている。同被告は起訴内容を認めたが、検察側は、
「社会正義を担う弁護士の職責に反する犯罪行為の一翼を担い、弁護士に対する国民の信頼を損なわせた。その刑事責任は重大」
として、梶田被告に懲役1年6ヵ月を。弁護士法人『オーシャン』には罰金150万円をそれぞれ求刑した。判決は6月5日に言い渡される予定だ。
