長期金利が急上昇! 「変動か固定か」よりも今のマイホーム選びで大切なポイントとは
長期金利の上昇が止まらない。日本国債10年の金利は2026年5月に入り2.8%を突破し、実に29年ぶりの高水準となった。日本国債20年は3.6%超、日本国債30年に至っては4%を一時超えた。金利の上昇は、住宅ローンに影響し、返済負担額を増加させる。「固定か変動か?」以上に大切な、金利上昇時の住まい選びについて考えたい。(不動産コンサルタント・岡本郁雄)
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変動金利か固定金利の選択はますます難しく
住宅ローンを組む際、「変動金利型を選ぶか、固定金利型を選ぶか」は多くの人が悩むポイントだ。2013年4月に導入された日本銀行の「量的・質的金融緩和」以降、金利の低い変動金利が有利な状況が続いてきた。しかし、2024年3月に2016年から続いたマイナス金利政策が解除され、11年間続いた大規模な金融緩和が終わると様相が一変。政策金利は徐々に引き上げられ、それにともない変動型の住宅ローン金利も上昇傾向にある。

2025年10月に都内で新築戸建てを購入したKさんは、固定金利型の住宅ローン「フラット35」を利用した一人だ。当時の金利は1.9%を割る水準で、子どもが生まれたばかりであったため【フラット35子育てプラス】などが適用され、当初5年間は0.5%の金利減額を受けられ適用金利が1.4%未満となった。固定金利型のため、今後政策金利が引き上げられたとしても6年目以降の返済額は変わらない。2026年5月時点で、長期固定ローンであるフラット35の最低金利(借入期間21年以上35年以下、新機構団信付き、融資額9割以下)は2.71%まで上昇している。Kさんは、「金利上昇リスクが無く、将来のライフプランを立てやすい」と話す。
では、実際に住宅ローンを利用した人の状況はどうか。住宅金融支援機構が2025年4月〜9月に住宅ローンを借りた人を対象に行った調査によると、金利タイプ別では変動型が75.0%と最も多く、次いで固定期間選択型が14.9%、全期間固定型が10.1%だった。全期間固定型の選択は増えているものの依然として低く、リスクを感じつつも金利の低い変動型を選ぶ人が多い。借入金利は「年0.5%〜1.0%以下」が最も多く、「年0.5%以下」も13.1%。これは日本銀行の政策金利が0.75%に引き上げられる前であり、低金利の変動型で借りている人が大半であることを示す。
気になる周りの「融資率」と「返済負担率」
融資率、返済負担率、返済期間は、利用者ごとに大きく異なる。融資率(融資額÷住宅価格)は「90%〜100%以下」が24.1%で最も多く、次いで「80%超〜90%以下」が17.1%、「100%超」も12.0%いる。一方、「70%以下」が36.6%と3分の1を超え、「50%以下」も14.6%。融資を利用しない人もいることを踏まえると、相当数が十分な自己資金を用意して購入していることが分かる。
また、年間返済額を世帯年収で割る「返済負担率」は、「15%超〜20%以内」が26.2%で最も多く、次いで「10%超〜15%以内」が21.7%、「10%以内」も13.9%。返済余力を考慮した借入が目立つ。返済期間については、30年以上の長期を選ぶ人が多い。「30年超〜35年以内」が38.9%と最も多く、「35年超〜40年以内」が17.9%、「40年超」は、5.5%。30年超の返済が6割を超える。
政策金利引き上げを受けた対応は分かれており、「返済期間を長くした」人が7.3%、「短くした」人が6.0%となっている。
返済期間を長くすると月々の返済額を抑えられる一方、元本の減りが遅くなるため将来の金利上昇リスクが大きくなる。逆に返済期間を短くすると元本の減りが早くなり総返済額を抑えられるが、月々の返済額が増え家計を圧迫する可能性がある。
例えば、5000万円を金利1.5%・元利均等返済で借りた場合、
・30年ローン:月額17万2560円、総返済額6212万1428円
・35年ローン:月額15万3092円、総返済額6429万8491円
・40年ローン:月額13万8586円、総返済額6652万1115円
40年と30年を比較すると、40年は月々3万3974円少なくなる一方、総返済額は439万9687円増える。金利が上昇すると差はさらに拡大する。
金利が仮に3%だったとすると、
・30年ローン:月額21万802円、総返済額7588万8443円
・35年ローン:月額19万2425円、総返済額8081万8202円
・40年ローン:月額17万8992円、総返済額8591万5913円
金利を3%と仮定すると、30年ローンと40年ローンとの比較で、総返済額は40年ローンのほうが1000万円以上増える。日本国債10年の金利は2.8%をつけており、金融正常化が道半ばであることを踏まえると、金利上昇リスクは十分考慮すべきだろう。
工期の長いタワマン購入は要注意
さらに、マンションの場合は、維持・管理費の上昇に注意が必要だ。新築マンションでは3LDKタイプで管理費と修繕積立金の合計が5万円を超えるケースもある。駐車場代を含めると負担はさらに大きくなる。新築戸建てに注目が集まるのは、マンションのランニングコスト上昇が背景にある。光熱費や食料品など物価上昇も続いており、月額5万円を超えるような維持・管理費の出費は大きい。
もう一つ、留意したいのが住宅ローン金利の確定するタイミングだ。例えば、数年先に完成するタワーマンションの場合、引き渡し時の金利水準が適用される。長期金利の動向を見ると、2年後、3年後の住宅ローン金利は、上昇している可能性が高い。工期の長いタワーマンションの購入を検討しているのであれば、より慎重な資金計画が求められる。
この半年間で、固定金利型のローン金利が大きく上昇したため、住宅ローンの選択は、今まで以上に難しくなってきている。住宅ローン利用者の実態調査によれば、日本銀行の金融政策変更を受けて「借入額を減らした」(9.9%)人や「住宅予算を減らした」(5.5%)人の割合が増加している。価格の高い新築マンションの高層階を避け、中・低層階を希望するなど購入予算を抑える動きも出てきているようだ。
リクルートが実施した首都圏新築マンション契約者動向調査によれば、2025年の平均購入価格は、7324万円で2001年調査開始以降最も高くなっている。世帯平均年収は、1213万円で、こちらも2008年以降最も高い。自己資金比率の平均は、21.3%となっておりローン借入額の総額は、5956万円。既婚共働きで、総年収1000万円以上の世帯では、ローン借入額が6988万円となっている。ある程度の年収がなければ、首都圏で新築マンションを購入することは、難しくなってきているようだ。
中古マンション人気が急上昇
新築マンション価格が上昇する中、注目されているのが中古マンションだ。首都圏新築マンション契約者動向調査では、中古マンションを検討した人が53.5%にも及ぶ。東日本不動産流通機構によれば、2025年度における首都圏中古マンションの成約件数は4万9314件となっており前年度比24.1%の増加。すべての都府県・地域で前年度を上回り、2桁を超える増加となっている。
金利上昇局面での住まい探しで大切なのは、長く快適に暮らせる住まいを選ぶこと。住宅ローン金利が上がると毎月の住宅ローン支払いにおける金利負担が増えるため元本が減りにくく、自己資金の少ない短期売却では残債割れする可能性も。また、買い替え時に金利が上昇すると購入予算が伸びなくなってしまう。
前述のKさんは、入居から半年が過ぎ「家賃の支払いもなくなり、本当に住まいを買って良かった」と語る。仮に、住宅ローン金利が当面、上がり続けるとすれば早く住まいを購入したほうが良い。家族の希望にマッチした素敵な住まいを見つけてほしい。
岡本郁雄(おかもと・いくお)
不動産コンサルタント及びFPとして、講演、執筆など幅広く活躍中。TV・雑誌など様々なメディアに出演、WEBメディア「街とマンションのトレンド情報局」も運営している。30年以上、不動産領域の仕事に関わり首都圏中心に延べ3000件以上のマンション・戸建てを見学するなど不動産市場に詳しい。岡山県倉敷市生まれ、神戸大学工学部卒。
デイリー新潮編集部
