トランプ氏主導の「支持者救済」基金に与野党批判…税金2860億円投入案、「自分自身への恩赦狙っている」見方も
【ワシントン=阿部真司】米国のトランプ大統領が主導し、「不当な捜査」による被害者を救済する基金の設立案が波紋を呼んでいる。
基金は税金を原資に、トランプ氏が自身の支持者を念頭に総額約18億ドル(約2860億円)の「救済金」を支給するものだ。与野党の批判は強まっており、政権運営の新たな火種となる可能性がある。
基金は、政治的な理由を目的とする捜査で被害を受けた国民を税金で救済する仕組みだ。「被害者」の範囲を広く定義しているものの、実際には、2021年1月の米連邦議会議事堂襲撃事件で訴追されたトランプ氏の支持者らが念頭にあるとみられる。
連邦議会では21日、上院共和党の議員を対象に、司法省のトッド・ブランチ長官代行が非公開で基金の説明会を実施した。ブランチ氏は議員から基金の目的や対象などを追及されても説得力ある回答を示せず、会合は紛糾。党内の混乱を受け、上院共和党指導部は、この日予定していた移民対策関連の法案採決を見送った。
上院民主党トップのチャック・シューマー院内総務は「米国史上最も露骨な腐敗行為だ」と激しく批判。トランプ氏の身内である与党・共和党のミッチ・マコネル前院内総務も声明で、「警官を襲撃した者に支払うための裏金を作るのか。全く愚かだ」と非難した。
問題の発端は、2020年の米紙ニューヨーク・タイムズの報道に遡る。同紙は10年間にわたってトランプ氏が所得税を納めていなかったと報じた。昨年1月に大統領へと返り咲いたトランプ氏は今年1月、日本の国税庁にあたる内国歳入庁(IRS)が記録の管理を怠り、報道につながったとして、IRSを相手取り、100億ドル(約1兆6000億円)の賠償金を求める訴訟を起こした。
司法省は今月18日、トランプ氏がIRSへの訴訟を取り下げる代わりに、政府側が基金を創設する内容で和解したと発表した。トランプ氏はこの日、記者団に「あまりにひどい仕打ちを受けた人への償いだ」と述べ、基金を正当化した。
司法省は19日、トランプ氏との追加の和解条件を公開。税務当局が将来にわたり、トランプ氏らの財務情報を調査・訴追の対象にしない「免責特権」を与える内容だ。
米メディアも一斉に批判している。米公共ラジオNPRは、トランプ氏が退任後を見据え、「自分自身に民事上の『恩赦』を与えようとしている」と指摘する専門家の見方を伝えた。
