リベロ山本智大がリーグ優勝を初経験 キャリアの転換点になった「なめんなよ」と思った瞬間とは
大阪ブルテオンがSVリーグ決勝でサントリーサンバーズ大阪を破り、7シーズンぶり7度目のリーグ優勝を果たした(SVリーグになってからは初)。初戦はセットカウント1-3で落としたものの、2戦目をフルセットで獲ると、3戦目はストレートでサントリーを圧倒。強烈なサーブと、効果的な選手起用で底力を見せつけた。
チャンピオンシップMVPに輝いた西田有志をはじめとして、ベスト6に選出されたセッターのアントワーヌ・ブリザール、アウトサイドヒッターのミゲル・ロペスなどタレント揃いのブルテオンにおいて、守備の要であり、精神的支柱としてチームを支えたのがリベロの山本智大だ。

第1戦を落とした後に2連勝して逆転でSVリーグ決勝を制した大阪ブルテオンの山本智大 photo by AFLO SPORT
コミュニケーションに長ける山本は、初戦に敗れたあとのミックスゾーンでも、普段どおりの笑顔で、和やかに報道陣の質問に答えていた。
初戦でスパイク決定率36.4%と、本領を発揮できなかった西田について山本に聞くと、冷静にこう分析した。
「僕たちのサーブレシーブが乱れていたので、西田にとっての最高のポイントにトスが来ていなかった。その難しさはあったと思う。序盤はミス、被ブロックが目立ったので、『リバウンドでもいいよ』とか、『フェイントでもいいよ』と声をかけ続けていました。サイドアウトを取るには、とにかくサーブレシーブが大事。なるべく1回でサイドアウトを切れるようにと心がけていました」
西田は2戦目から普段のプレーを取り戻し、見事にチャンピオンシップMVPを獲得した。
試合後の会見でトーマス・サムエルボ監督はこう語った。
「キャプテンの西田だけではなくブリザール、山本、ロペスなどが違うタイプのリーダーシップを発揮してくれた。西田がひとりで責任を背負うことのないように、フォローしてくれたのは大きい」
チームになくてはならない選手として山本は、存在感を示したのである。本人は語る。
「僕個人としては、リーグ優勝が初めて。本当にうれしいです。監督、コーチ、ファン、メディアのみなさんの支えがあってここまで来られたと思います。初戦に敗れてメンタル的には厳しかったのですが、最後まで闘う姿勢がありました。第3戦はウォーミングアップのときから全員の目つきが違った。その様子を見て、今日は勝てると確信しました」
【『絶対に見返してやるぞ』と思いました」】2025-26シーズンのベストリベロ賞も獲得。山本にとっては3シーズン連続での受賞となった。
山本は今でこそ世界でも有名なリベロだが、その道のりは平たんではなかった。2016年に内定選手としてFC東京に入団。出場機会が少ないまま2018年には堺ブレイザーズ(現・日本製鉄堺)に移籍した。2018-19シーズンは全セットに出場し、リベロとして徐々に知名度を上げてきた。
2019年、日本代表の候補に選出されたが、当時は海外経験のあるリベロがおり、山本は最終選考に残れるかどうかの当落線上にいる存在だった。本人が振り返る。
「選ばれた最初の年に、当時の代表監督から『お前は(リベロの選考過程で)3番手だよ』と、面と向かって言われたんです。海外でプレーしているリベロの選手の代表への合流が少し遅れるから、と最初のミーティングで説明されて、その上で『3番手だ』と言われて。イラっとしましたね。なんかこう、下に見られてるなっていう感じがあって。『絶対に見返してやるぞ』と思いました」
山本の負けん気に火がついた瞬間だった。
「そのときまでは自分が世界で戦うプレーヤーになれるかどうか、確信はありませんでしたが、その言葉でスイッチが入ったというか......。正直、『なめんなよ』と思いました。でもその言葉のおかげで、『やってやるぞ』という気持ちになれたのは確かです」
同2019年のアジア選手権でベストリベロ賞を獲得し、ワールドカップでも活躍した。同大会で日本代表はイタリア、アルゼンチンなどの強豪を破り、1991年以来、実に28年ぶりとなる4位に入賞。男子バレーの復活を印象づける大会となった。
「ワールドカップは僕にとってひとつの転機でした。そこから徐々に周囲の評価も上がって、東京オリンピックを迎えることができた。3番手と言ってやる気を起こさせてくれた監督にはある意味、感謝です。今でも思い出すと腹が立ちますけどね(笑)。それこそ、奮い立たせてもらった言葉です」
初優勝という悲願を成し遂げた今と、「下に見られていると感じた」という過去──山本自身のバレーボールに対するスタンスは変わったのだろうか。
【「日本のリベロが世界で注目されるように」】「変わらないですね。当時も今も、ひたすら一生懸命に練習することだったり、必死にバレーボールに取り組むところは変わりません」
優勝会見で山本はこうも語った。
「見ている人もわかっていると思いますが、日本のリベロは僕と小川(智大・サントリー)だけではなくて、他のチームにもすばらしい選手がいる。みんなでリベロの価値を高めて、世界に通用することを証明したい。さらに日本のリベロが世界で注目されるよう今後も精進します」
これからは休息の間もなく、日本代表のシーズンが始まる。
山本は日本一のチームの守護神という称号を手に、世界が驚くようなレシーブを見せてくれるに違いない。
