「菅総理誕生以来の衝撃」の声も…秋田県湯沢市に「マック」と「ドトール」がオープンで住民は大喜び 地方都市で「小洒落たカフェ」より「チェーン店」が歓迎される理由
湯沢駅前に菅義偉元総理の銅像が建立されていることで有名な、秋田県湯沢市。菅氏の出身地でありながら、中心市街地の衰退と人口減少に苦しむ市に、「マクドナルド」と「ドトール」がオープンすると発表された。マクドナルドは国道13号線沿い、ドトールは菅氏の銅像の近くに市が建設を進める複合施設「Yuinas(ゆいなす)」の1階に出店が決まったという。
このニュースは地元紙「秋田魁新報」などが大々的に報じ、SNSを見ると、市民からは「嬉しい」「大都会湯沢」「本当に!?」などと、歓喜の声が上がっている。秋田県の情報を発信する「秋田県人会あきたいざたん」のXは、「菅総理大臣誕生以来の衝撃ニュース」とつづったほどである。

いったいなぜ、これほど地方出身者はチェーン店が大好きなのだろうか。湯沢市の隣町・羽後町出身で、湯沢駅をよく利用する筆者が、期待に胸が高まる地元を取材した。【取材・文=山内貴範】
【写真】政界引退を惜しむ声も…秋田県湯沢市の駅前に建立された菅義偉元総理の銅像
地方在住者が欲しいのはチェーン店
地元民の間で、「ぜひ行ってみたい」「おいしいコーヒーが飲みたい」「マグカップがかわいい」など、とにかくべた褒めされているのがドトールである。開店当日に行列ができるのは確実だろうが、東京に行けばどこにでもあるチェーン店に大喜びしている光景は、地方の人たちの実情をよく表していると筆者は感じる。
筆者の周りの湯沢市・羽後町在住者10人に話を聞いたところ、驚くことに、出店に批判的な人は1人もいなかった。一様に大歓迎で、「これで湯沢市が盛り上がる」と期待する声が上がる。公共施設の建設には批判的な声が必ずあるが、チェーン店には大喜びなのだ。湯沢市在住のW氏がこのように話す。
「秋田県民に限らず、我々のような地方に住んでいる人が本当に欲しいのは、東京にあるのと同じもの。すなわち、チェーン店なのです。よく、地域おこし協力隊などを使って、小洒落たカフェなどを市の予算で作る例があるでしょう。そんなものはどうせ行かないから、いらないですよ。自治体はチェーン店の誘致に税金を使ってほしいくらいです。
だから、湯沢へのマックとドトールの出店は本当に素晴らしいですよ。これこそが、待ち望んでいたものです。確実に高校生は嬉しいと思うし、湯沢市内の高校に行きたいと、近隣から生徒が集まってくるはず。高校の偏差値が上がるんじゃないですかね」
なお、湯沢市が2020年度に市民を対象にとったアンケートには、「マックを誘致してほしい」という声が複数寄せられていた。回答者にとっては待望の結果と言っていいだろう。
菅義偉氏が総理になったとき以来の衝撃
湯沢市出身の識者はどのように見ているのか。「秋田県人会あきたいざたん」代表の高橋純一氏に話を聞いた。
――湯沢の中心市街地に、ドトールとマックが出店することが決まりました。
高橋:出店の発表がされたことを、地元出身者として率直に歓迎したいですね。出店を決断したチェーン店本部や、誘致を成功させた湯沢市にも、出身者として「ありがとう」と言いたいです。
これまでは湯沢から東京に戻るとき、湯沢駅前に気軽に入れるカフェがありませんでした。地元の人が経営するカフェはあるものの、敷居が高く、寂しい想いがあったのです。今回出店が発表された二つのチェーン店は気軽に入れるお店だったので、本当にうれしいニュースですね。
――高橋さんは「秋田県人会あきたいざたん」のXに、“菅義偉氏が総理になったとき以来の衝撃”と書いていました。
高橋:はい。私は、湯沢を出てから約30年間、故郷が衰退していく光景を、帰省するたびに目の当たりにしてきました。
人が歩いていない活気のない街の姿を外からずっと見続けてきた私は、生きているうちに、この2つのメガチェーン店が地元に来ることは絶対にないと思っていました。だからこそ今回の発表には率直に驚いていますし、感激しています。
旅先でチェーン店に立ち寄る県民も
――地方の人たちにとって、チェーン店ができた時の喜びは大きいのですね。
高橋:Xで出店のニュースを投稿したところ、大きな反響がありました。出身者はもちろんですが、出店予定の周辺に住む多くの方にとっても、喜びは大きいと思います。
というのも、現在湯沢市に住んでいる方々、特に現役世代は、進学や就職で一度都市圏で暮らし、Uターンした人も非常に多いのです。仙台や首都圏へは昔に比べてアクセスが容易になっていますが、旅行先の目的としてメガチェーン店に来店する方も多い。特にこの2つのチェーン店には、親しみを持つ方が多いのではないかと思います。
――確かに、東京で生活していたときにマックやドトールを利用していた人は、“あのときの味を再び楽しめる”と思うでしょうから、嬉しさも格別でしょうね。また、高橋さんが言うように、仙台や東京などの大都市を訪れた時に、わざわざチェーン店に立ち寄る人は多い。私の友人も、仙台に行ったときに牛タン屋ではなく、サイゼリヤに行ったと言っていましたから。
高橋:チェーン店の出店は地元にゆかりのある方だけでなく、初めてその地を訪れる方や、地方を旅したい方にとっても意味があります。旅先に親しみのあるチェーン店があるだけで、その地を訪れることへの“安心感”につながることもあるのではないかと。
私の場合、知らない土地を旅するとき、グーグルマップで周辺を検索した時に馴染みのあるチェーン店が見つかるだけで、なぜかそこへ行くことへの安心感につながっていますからね。
地域活性化の起爆剤になり得る
――湯沢駅前は長らくシャッター通りになっています。今回のマクドナルドとドトールが、地域活性化の起爆剤になる可能性は大いにありそうです。
高橋:チェーン店がきっかけとなって、周辺にも良い影響を与える可能性があります。膨大な来客数を持つ二つのチェーン店のホームページから、「湯沢市」にお店があるということが発信されるのです。メガチェーン本部からの発信による市のPR効果は絶大ですよ。
本部と湯沢市、あるいは商店街などとの連携や協議は必要ですが、チェーン店がその地域の社会ハブとなることも期待されます。
周辺にある飲食店やホテルなどと一緒になって、相互にお店を紹介しあう関係性を作り、キャンペーンを張ったりしながらその地域全体を盛り上げるという、チェーン店出店をきっかけにした地域活性化の新しいモデルにもなり得ると思います。私もぜひ、帰省した時はお店を応援したいし、利用したいと思っていますね。
ライター・山内貴範
デイリー新潮編集部
