新井順子Pが『田鎖ブラザーズ』で描く“大きな愛の物語” 撮影裏に迫るロングインタビュー
いよいよ4月17日にスタートする金曜ドラマ『田鎖ブラザーズ』(TBS系)。初回放送に先駆けてマスコミ向け試写会が実施され、新井順子プロデューサーが取材に応じた。
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本作は、わずか2日の差で両親殺害事件の時効を迎えてしまった兄弟が、日々起こる凶悪事件とも向き合いながら、自らの手で真犯人を追い続ける姿を描いたオリジナルクライムサスペンス。刑事の兄・田鎖真を岡田将生、検死官の弟・田鎖稔を染谷将太が演じる。
映画『ラストマイル』、そしてTBSドラマ『アンナチュラル』『MIU404』『最愛』など、数々のクライムサスペンスを手がけてきた新井プロデューサーが、本作で描こうとしている本質は“大きな愛の物語”。惹き付けられるストーリー。思わず胸が締め付けられる映像美と主題歌。この美しくも切ない物語は、いかにして生まれたのか。明かされる舞台裏を聞くほど、ますます金曜の夜が楽しみになった。(佐藤結衣)
●約1年をかけた構想の裏側
――第1話から怒涛の展開に驚かされました。特にラスト5分が……!
新井順子(以下、新井):この展開は最初から狙っていて。脚本家の渡辺啓さんにも「こうしてほしい!」とお願いしていました(笑)。視聴者のみなさんにも楽しんでいただけたらうれしいです。
――完全オリジナル作品とのことで、どのようにしてお話を作られていったのでしょうか?
新井:今回は、最近組んでいない作家さんにお願いしようと思っていたんです。そう考えたなかで浮かんだのが、渡辺さんでした。渡辺さんとは『ラブレター』(TBS系)や『タンブリング』(TBS系)でご一緒していて、いずれも複数名いらっしゃる脚本家チームの一員でした。その後も年賀のメッセージのやり取りは続いていて、彼が手がけている舞台を観に行くこともありましたが、なかなかドラマで組む機会がなかったんですよね。でも、きっとサスペンスは得意な方だろうと感じていたので、「今回の企画なら!」と思い、お声がけさせていただきました。やり取りを遡ると、2024年の年明けに「あけましておめでとうございます」と挨拶した数日後には「来月、お時間ありますか?」と連絡していました(笑)。最初にお伝えしたのは、「両親を殺された兄弟が犯人を見つけていく物語」というテーマです。そこに、新たな事件も起こりながら犯人を追っていく流れを重ね、さらに“時効”というテーマを織り込むことで、現代において意味のある作品になるのではないかと考えました。そして、「何があったのか」を描くために、1年ほどかけて全話のプロットを作り上げていきました。
――今、このタイミングで兄弟愛を描こうと思ったのは?
新井:刑事ドラマを作る上で、まず刑事になる理由が明確にある人物のほうが見応えが出るのではと思い、両親を殺されて同じ痛みを持つ“兄弟”というバディを考えました。残されたたった一人の兄弟と、これからどう向き合っていくのかが、これから徐々に見えてきます。それぞれが「自分が背負うから、相手には解放されてほしい」と思っているところもあるんです。そうした過去につながったイメージを、『田鎖ブラザーズ』というタイトルに込めました。
――完成した第1話の映像を観たときは?
新井:日本アカデミー賞で優秀照明賞を受賞されている宗賢次郎さんが撮影監督を務めていることもあり、とても深みのある世界観になったなと感じています。また、演出の山本剛義監督とは、『Nのために』(TBS系)などの湊かなえさん原作の作品や、『最愛』でもご一緒していて、私の好みを理解してくださっているという信頼感がありました(笑)。実際に、第1話で「山本ワールド」を感じました。主題歌もバシッとハマって、個人的にとても心に響くポイントになっています。
――主題歌は、森山直太朗さんの「愛々」ですね。
新井:企画書を書いている段階から森山直太朗さんの曲をずっと聴いていて、オファーする前から「主題歌は森山さんです」と言っていました(笑)。実際に制作が決まった際には直接お会いして、何時間もお話ししながら作品の内容をお伝えしました。ご本人は「何度もやり直しになるんだろうな」と思われていたそうですが、一度で素晴らしい楽曲が出来上がって。兄弟の過去と現在、そして懐かしさのようなニュアンスをお願いしていたので、このノスタルジックな雰囲気を醸し出すメロディをいただいたときには思わず感激しました。
――今作を作るうえで、強く意識されていることは何ですか?
新井:やはり感情のつながりを大切にしています。「過去に何があったのか」を掘り下げるために回想シーンが随所に出てきますが、犯人が明らかになったときに「あれだとおかしいよね?」という違和感が生まれないように、と。最後まで観ていただいたうえで、見返したときに、また違った見方ができる。何度も見返すことを前提に、そんな構造になるよう脚本の渡辺さんや演出の山本さんと話し合いながら作っています。
●細部まで見逃せない魅力的なキャストとこだわりが詰まったオールロケ
――主演の岡田将生さん、弟役の染谷将太さんにはどんな期待を寄せていましたか?
新井:岡田さんとは、映画『ラストマイル』でご一緒して、「またぜひ」と思っていました。もともと端正な顔立ちでいらっしゃいますし、『ラストマイル』でもそうですが、どちらかといえば振り回される“年下”の印象が強かったので、今回はあえてそのイメージを大きく変える役として、振り回す側の兄・真役をお願いしたんです。染谷さんは、以前から「いつかご一緒できたら」と願っていた俳優のお一人。そうしたら、岡田さんと実はとても親しい間柄で。事務所がオファーをご本人に伝える前に、岡田さんが連絡してしまうというハプニングもありました(笑)。改めてお二人の演技を拝見すると、やはり表情がとても魅力的ですよね。岡田さんは本当にいい年齢の重ね方をされているというか、円熟しているという印象です。乱暴だけど結局放っておけないお兄ちゃん、という役をとても繊細に演じてくださっています。染谷さんも「興味ない」と言いながらも意外とやってしまう、そんな人間味あふれるキャラクターを素敵に表現してくださっています。お二人のお芝居はワンカットでずっと見ていられるほどで、非常に見応えがあると実感する日々です。
――第1話の過去シーンで飯尾和樹(ずん)さんが、ノンフィクション作家役として登場します。「重要な人物になるのでは?」と感じたのですが、あの役を飯尾さんに託された理由は?
新井:視聴者の方にしっかり覚えてもらわなければいけないキャラクターなので、一度の登場でも印象に残る飯尾さんにお願いしようと思いました。いつもニコニコとしているのに、どこかサスペンスな雰囲気を持つ飯尾さんは、やっぱり気になるじゃないですか。それから、作品全体のトーンが重いので、“陽”なイメージの方が随所にいてほしいという思いもありますね。真の後輩刑事役を演じてくださるTravis Japanの宮近海斗さんもそうです。宮近さんは『イグナイト -法の無法者-』(TBS系)に出演されているのを見て、「いい演技をされる方だな」とチェックしていました。
――真の上司を演じる赤間麻里子さんが、BIGサイズのタンブラーを持っていたのも“陽”を感じました(笑)。
新井:あのタンブラーは、ご本人が「豪快なキャラクターを演出するために持ちたい」とおっしゃったものです。みなさん、衣装合わせの際に、そうしたアイデアを持ち寄ってくださるんです。他のキャラクターのみなさんがこだわった細かな部分もチェックしていただきたいですね。
――こだわりといえば、真と稔が暮らす家も中庭があって印象的です。
新井:自宅のシーンは、登録有形文化財にも指定されている建物でのロケ撮影です。兄弟にとって、お香を焚くシーンには、両親がいる空を感じるという意味があるので、当初は屋上で……と考えていたのですが、どうしても部屋との行き来ができるのが気になっていたんです。そんな中で監督が中庭のある物件に出会いました。とはいえ、窓が多い建物のため、昼は昼、夜は夜にしか撮影できず……。キャストの皆さんは気持ちの整理が大変だったと思います。
――井川遥さんが演じる晴子のお店も独特ですね。
新井:今回はスタジオセットがなく、すべてロケ撮影でした。そのため、あのお店のインテリアもすべて作り込みました。美術スタッフが力を入れてくれたおかげで、とても雰囲気のあるシーンが撮れたと思います。
●事件の奥にある“愛”という動機
――やはり気になるのは、両親の事件の真相と真犯人の正体です。ちなみに、キャストのみなさんは結末をご存じなんですか?
新井:いえ、すべてを伝えているのは兄弟と犯人役の方だけです。なので現場では、「……犯人ですか?」「私も犯人じゃないです!」なんてやり取りが繰り広げられています。先にアップした方に、最終話の台本をお渡ししようとしたら、「もうここまで来たら読みません」と断られたりもして(笑)。スタッフはもちろん結末を知っているので、うっかりネタバレのようなことを話してしまいそうになると言っていました。兄弟のお二人も「しゃべらないようにするのが難しい」「すごく神経を使う」なんて言われています。
――お二人が結末まで知ったときのリアクションはいかがでしたか?
新井:「辛いっすね」とおっしゃっていました。後半にかけて切ないシーンが多いんですよね。編集室で映像を確認しながら涙が止まらずにいたら、隣にいた編集スタッフからも「グスッ、グスッ」と聞こえてきたんです。「めちゃくちゃ泣いてるな」と思って見たら、ひどい花粉症だったという(笑)。でも、泣き疲れていた私には、ありがたい“陽”でした。
――お話を聞くほどに単純な犯人探しのサスペンスでは終わらない予感がします。
新井:もちろん、「犯人が誰なのか?」という考察や、各エピソードのストーリでも盛り上がっていただきたいと思っていますが、加えて「なぜこの事件が起こってしまったのか」という点にも思いを馳せていただけたらうれしいですね。主人公たちの事件もそうですし、各エピソードの事件についても同様です。なぜその事件を描いたのか、その意味を感じてもらえたらと思います。もしかしたら「え? じゃあ、どういうこと?」と思われるかもしれませんし、人によっては「難しい」「スッキリしない」といった感想を抱かれるかもしれません。でも、見て、感じて、観る前とは少し違う自分になる。そういう作品として楽しんでいただけたら幸いです。犯人がいるということは、そこに動機がある。その動機が生まれたということは、そこに愛があるのではないかと。見終えた後にはきっと「ああ、愛だな」と感じていただけると思うので、最後まで見届けていただけたらうれしいです。
(文=佐藤結衣)
