●BL作品の中でも“独特な空気感”の物語
フジテレビの動画配信サービス・FODで配信中のオリジナルドラマ『コントラスト』(全8話)。itzによる同名の人気BLコミックを原作に、不器用で対照的な2人の青年が互いに惹かれ合っていく姿を、光あふれる美しい映像で繊細かつ丁寧に描き出す、甘酸っぱい青春ラブストーリードラマだ。

W主演を務めるのは、『爆上戦隊ブンブンジャー』ブンレッド/範道大也役で、連続ドラマ初出演にして初主演を飾った井内悠陽と、ダンスボーカルユニット・ICExのメンバーとして活動しながら俳優としても躍進する阿久根温世。

学年イチの人気者・青山翔太(井内)は、順風満帆に見える高校生活の裏で挫折を抱えている。一方、特進クラスの秀才・千川陽(阿久根)は、人と距離を置く一匹狼。交わるはずのなかった2人は、屋上へ続く踊り場で偶然出会い、物語は動き出す――。タイトル通り対照的な役に挑み、意気投合した2人に、作品への思いを聞いた。

(左から)井内悠陽、阿久根温世 撮影:泉山美代子

○「先のことを考える余裕はなかった」目の前のシーンに集中

――台本を読んだとき、ご自身にとってどんな作品になりそうだと感じましたか?

阿久根:セリフ一言一言がどれもすごく素敵で、胸に刺さる言葉がたくさんありました。でも、どんな作品になるかというより、目の前のシーンをどう演じるかに必死でした。「一つひとつを大事にしないと追いつけないぞ」という感覚の方が強かったです。

井内:僕も先のことを考える余裕はなかったです。でも、その“予想できなさ”が楽しみでもありました。『コントラスト』は、独特な色や空気感がある物語だと感じます。だからこそ、余計なことは考えず、まずは目の前のシーンに集中しようと思いました。完成した作品を見て、自分にとってどんな存在になっているのか楽しみですし、気になります。

○部屋に入ってきた瞬間「うわ…好青年だな」

――お二人は本作が初共演とのことですが、初めて会ったときのお互いの印象は?

井内:最初はめちゃくちゃクールな印象でした。この通り見た目も大人っぽいですし、落ち着いているのかなと。でも、いざ話してみると、“クールのク”の字もないくらい明るい上に、ちょっと子どもっぽい一面もあって。そのギャップに驚きました。

――井内さんが阿久根さんの“本性”に気づいたのはいつ頃ですか?

井内:初日から、その片鱗は少しずつ感じていましたね。

阿久根:えっ!? そうなの?

井内:うん、片鱗は感じていたかな(笑)。もちろん集中すべきパートは本当にめちゃくちゃ集中してやるんですけど、笑える場面では一緒にふざけてくれるタイプだなと。

阿久根:(笑)

――阿久根さんから見た井内さんの第一印象は?

阿久根:読み合わせのとき、「お疲れ様です!」って元気よく部屋に入ってきた瞬間、「うわ…好青年だな」と思いました(笑)。爽やかで真っ直ぐな人なんだろうなって。

――その後、印象は変わりました?

阿久根:真っ直ぐなところは今も変わらないです。ただ、一緒に撮影していく中で、意外と自分と似ている部分もあるかもしれないとは感じました。ちょっとふざけたがりなところとか、ノリの良さとか(笑)。「あ、これは仲良くなれる」と思いました。

井内:撮影が始まってから3日目か4日目に、温世と一緒にご飯に行ったんですよ。

――何を食べに行かれたんですか?

井内:何食べたんだっけ?

阿久根:天ぷらとか串カツとか…。いろんなメニューがあるお店じゃなかった?

井内:そうそう! そこで一気に打ち解けましたね。撮影現場から離れて、お互いのプライベートな話も含めて腹を割っていろいろ話せたのが大きかったです。

●「逆じゃないか?」と思ったキャスティング


――役作りについてはいかがでしたか? プロフィールを拝見すると、阿久根さんは実際にはサッカーが得意で、陽とは対照的ですよね。

阿久根:そうなんです。最初に台本を読んだとき、正直「陽より翔太のほうが自分に近いかも」と思いました。サッカーもやってましたし、どちらかと言えば明るく、友だちも多いので。陽は自分と真逆のタイプだからこそ、ゼロから作っていくしかないなと。最初は不安もありましたが、その分しっかり準備してから現場に入りました。

――井内さんは、演じた翔太とご自身に共通点はありましたか?

井内:実は僕も「これ、逆なんじゃないか?」と思ったんです。家族にも「陽じゃなくて、翔太のほうなの!?」と言われたくらいで(苦笑)。とはいえ、もちろん翔太にも共感できる部分があったので、完全に自分と別のキャラクターを作り上げていくというより、自分の中にあるナチュラルな感情を少し誇張しながら形にしていきました。

――本作においては、足し算や掛け算の芝居より、むしろ引き算の芝居が求められる場面が多かったのではないかと感じたのですが、現場で監督からはどのような演出を受けたのでしょうか?

井内:僕はむしろ「もっと感情を出して!」と言われることの方が多かったですね。というのも、僕自身、相手のテンションに割と影響を受けやすいタイプというか。陽の落ち着いた空気に引っ張られがちで。でも、今回は作品のタイトル自体がそもそも『コントラスト』ということもありますし、芝居の上でも2人の対比が大事だと。「もっと明るく!」「もっと元気に!」と、監督さんから何度も言っていただきました。

阿久根:僕は自分とは正反対のキャラクターだったからこそ、スイッチの切り替えもしやすかったですし、割とはっきりとしたコントラストが出せたのかなと思ってます。

――では、現場で相手のお芝居に助けられたと感じた瞬間は?

阿久根:陽は、心の中では感情がいろいろうごめいていても、それをそのまま表に出せないシーンが多いんです。アドリブも自分の方からは仕掛けていけないところがあったので、それこそ翔太が積極的に引っ張ってくれたことで成立したシーンはたくさんありました。そういう意味で、本当に助けられました。

井内:僕が助けられたのは、まさに温世の現場での切り替えの速さですね。直前まで普通に話していても、「よーい、ハイ!」で一瞬にして陽になるんです。その変化が本当にすごくて。そこに引っ張られて、自分も一気に翔太になることができました。



○「まずは、キュンキュンしてほしいです」

――実年齢よりも若い高校生役を演じる中で、改めて感じたことはありますか?

阿久根:客観的に見ると、「もっと違う言い方もあるのでは…?」と思ったりすることもありますが、いざ現場で実際に芝居に入ると、そんなことは一切考えなくなるんです。陽として生きているからこそだと思いますが、その感覚はすごく不思議でした。

井内:それぞれがまだいろんな意味で不安定だからこそ、支え合える関係なんだろうなと思いました。大人になると責任や立場が伴うので、どちらか一方が無理して相手に合わせたりすることもありますけど、彼らは互いの足りない部分を自然に補い合っている。少し引いた目で見たときに、「分かるな」と思う部分がたくさんありました。

――最後に、お二人は本作を観た人にどんな気持ちになってほしいと思いますか?

阿久根:前向きな気持ちになってほしいです。陽は過去にトラウマを抱えていて、人と向き合うことが怖い部分もあります。ドラマをご覧になる方にも同じように何かを抱えている方がいると思うので、この作品が少しでも背中を押せたらうれしいです。

井内:まずは、キュンキュンしてほしいです。原作や台本を読んでいるときから、本当に一喜一憂できる物語だったので、純粋に楽しんでほしい。そして、自分が今いる場所を離れることを怖がらないでほしいなと思います。翔太も、陽との出会いで新しい居場所を見つけていく。変わる勇気や、新しいことに挑戦する一歩を、この作品から感じてもらえたらうれしいです。



渡邊玲子 映画配給会社、新聞社、WEB編集部勤務を経て、フリーランスの編集・ライターとして活動中。国内外で活躍する俳優・映画監督・クリエイターのインタビュー記事やレビュー、コラムを中心に、WEB、雑誌、劇場パンフレットなどで執筆するほか、書家として、映画タイトルや商品ロゴの筆文字デザインを手掛けている。イベントMC、ラジオ出演なども。 この著者の記事一覧はこちら