ホロライブEnglishのがうる・ぐらが活動終了へ 大きな去就と新展開が相次ぐVTuber業界

ホロライブEnglishのがうる・ぐらが卒業を発表した。チャンネル登録者数460万人超。世界で最もチャンネル登録者数の多いVTuberが、5月1日に活動にピリオドを打つ。直近相次いでいるホロライブからの卒業事案で、最も大きなインパクトだ。
【画像】にじさんじからデビューした“スーパーエリート”新人ライバー
がうる・ぐらはホロライブEnglishの1期生としてデビューしたVTuber。英語圏におけるVTuber文化を大きく開拓した一人として活躍してきた立役者だけに、この卒業に対する寂しさはひとしおだ。とはいえ、2020年デビューから5年も経ったことを踏まえれば、一区切りつくことも自然だろう。なお、ユーザーローカルの「バーチャルYouTuberランキング」基準では、この卒業によって新たにチャンネル登録者数1位となるのは宝鐘マリンだ。
一方で、にじさんじからは「スーパーエリートライバー」なる枠の男性VTuber2名・一橋綾人(ひとつばし あやと)と五木左京(いつき さきょう)がデビューした。2025年では初のデビューとなり、そのカテゴリ名の通り、特化した専門スキルがアピールポイントとなるようだ。また、ななしいんくからは、個人勢からの転籍もふくむ3名の新人がデビューしている。こちらも2025年から初のデビューだ。
それと同時に、にじさんじENのファルガー・オーヴィド、ゲーム部プロジェクトからHIGHWAY STARへ歩んだ桜樹みりあも活動終了を発表した。昨年からの傾向だが、業界全体で活動にピリオドを打つ動きが増えつつある。
■Brave groupとCrazy RaccoonがTCG業界に参戦
真新しい展開としては、Brave groupとCrazy Raccoonによる共同事業『Xross Stars』が挙げられる。これはVTuberやストリーマーなど、インターネットで活動するタレントが登場する、トレーディングカードゲームで、昨今流行りのデジタルではなく、フィジカルのカードゲームであることがポイント。8月にスターターデッキ、および第1弾ブースターパックが発売予定だ。
『Xross Stars』はタレントが描かれた「リーダー」カードを4枚並べ、50枚のデッキを用いて相手のリーダーたち全員を倒すのが基本ルールとなる。プロゲーミングチームであるCrazy Raccoonらしく、競技性を意識したゲーム設計やイベント展開を見越しているようだ。一方で、カジュアル層も取り込むべく、簡単に遊べるゲームルールも用意しており、リッチな印刷が施されたレアカードと合わせた「遊べるファングッズ」としての側面もあるようだ。
フィジカルでのカードゲームは、デジタルのそれよりもチャレンジングな展開だが、手元に所有しておけるグッズは「推し活」に欠かせないアイテムでもあり、時代性には合致していそうだ。なにより、VTuberもストリーマーも同じカテゴリとして取り込む姿勢は、ともすれば2025年のインターネットタレントのシーンを最も鮮明に示しているように感じる。
■VTuberファンは若いほど“タイパ”志向? 消費者アンケート調査の内容を読み解く
細々としたトピックもいくつか紹介しておこう。まず、快進撃を続ける星街すいせいは、新曲「もうどうなってもいいや」がオリコン週間デジタルシングル1位を記録した。本楽曲は劇場版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』のエンディングに採用されたことで注目されていた。オリコンランキング1位という成果は星街すいせい自身にとっても初の快挙だ。
また、マクドナルドとのタイアップで『VRChat』にやってきた星街すいせいは、先日には白上フブキ、さくらみことともに『VRChat』配信を実施した。BEAMS公式ワールドに期間限定復刻されたホラーコンテンツを体験しつつ、白上フブキに連れられ風光明媚なワールド探検にも赴くというシンプルな配信だったが、「複数人で記念撮影をする」など、『VRChat』の醍醐味を3人とも存分に体験していたように思う。
ホビージャパンの案件として、「まりなす」の燈舞りんと鈴鳴すばる、UniVIRTUAL所属の白玖ウタノが、VR博物館『ホビースフィア』を体験する配信も実施された。同配信は『VRChat』にオープン中のワールドを、(おそらく)3D配信環境へ“持ち込む”形で紹介する企画となっており、変則的だが自前の3D空間コンテンツの珍しい活用例と言えそうだ。
矢野経済研究所からは、2025年版の「VTuberに関する消費者アンケート調査」結果が公開された。無料公開分の内容では、「推しVTuberの有無」と「ライブ配信と切り抜きの視聴比率」が紹介されている。
個人的に興味深いのは、後者の結果だった。この調査では、男女ともに、年齢層が低いほど切り抜き動画や編集動画を視聴する比率が高く、年齢層が高いとライブ配信などの視聴が多くなる、という結果になっている。時間が短くおさまる切り抜き動画や編集動画などが若年層に好まれる理由として、レポート内では「タイムパフォーマンス(タイパ)」がキーワードとして挙げられている。
一方でこれについては、若年層のタイパ志向だけでなく、あまりに総数が多いVTuberへ割ける、可処分時間の限界も影響していると考えられる。また昨今はショート動画がブームになっていることも大きいだろうか。まずは切り抜きから新しいタレントを知り、それをきっかけに配信を見に行く、というルートも生まれていそうだ。去就が激しい業界だけに、「入口は気軽に」という姿勢は今後もしばらく有用だろう。
(文=浅田カズラ)