中学受験なんてさせなければよかった…月収48万円・45歳父、是が非でも〈偏差値70・有名大学付属校〉と躍起。やっと合格を掴んだが「長男の異変」に大後悔
年末に向けて世の中が浮足立っているなか、受験生は最後の追い込みのとき。家族一丸となって頑張っているところでしょう。努力の末、第一志望合格! しかし合格の先に、明るい未来が待っているとは限らないようです。
偏差値70の難関校…親子二人三脚で合格を掴み取った
東京都教育委員会『令和5年度公立学校統計調査報告書』によると、令和5年3月に東京都の公立小学校を卒業したのは9万8,518人。そのうち9万6,575人が都内の中学校へ進学しました。その内訳をみていくと、都内公立中学校に進学したのは7万6,611人、都内国立中学校に進学したのは443人、都内私立中学校に進学したのは1万9,521人。私立中学への進学率は東京都全体で19.81%。ただ地域差は大きく、東京都23区に限ると25.00%、市部では10.48%、郡部では3.36%、島嶼部では1.14%となっています。
東京23区では児童の4人に1人の割合で中学受験をしています。さらに23区の中でも差があり、私立中学進学率1位の文京区と、23位の江戸川区では40ポイント近い差があり、中学受験が当たり前の地域と、珍しい地域があるようです。
【東京23区私立中学進学率トップ3/ワースト3】
1位:文京区…49.05%
2位:中央区…43.14%
3位:港区…42.47%
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21位:葛飾区…14.31%
22位:足立区…13.39%
23位:江戸川区…11.46%
3年前に長男が中学受験にチャレンジしたという池田大樹さん(仮名・45歳)。周囲の友人はみな中学受験をするということから、息子の翔太さん(仮名)は小学校4年生の1学期から有名進学塾に通塾。月収で48万円ほどの池田さんの給与では私立中学校進学は心許ないと考え、翔太さんの入塾を機に池田さんの妻もパートに出るようになったといいます。
中学受験の親の負担は結構なもの。4年生は週2回だった通塾は、5年生には週3回、6年生には週4回、受験前は週5日。終了時間は21時を過ぎるので、帰りは車で迎えにいきました。帰りが遅くなるので、毎日お弁当を用意。共働きだったので朝のうちに用意しました。塾の宿題は膨大で、これまた親のサポートも必要です。リビングテーブルで勉強する長男の横に座り、一緒になって宿題をこなしていきました。そして受験直前&試験期間は有給を使ってフルサポート。2月1日からの数日間は緊張もありくたくたに。
親子の努力の結果、第一志望に無事合格。偏差値は70、大学までエスカレーターで進学できる大学付属中学校です。
――有名大学の付属中学校に行けたら学歴で勝ったようなもの。子どものためにも最良の選択だと考えました
中学受験を突破しても熾烈な競争は終わりではなかった…
――息子には、バラ色の中学生活が待っているはずだった
そう肩を落とす池田さん。第一志望に合格したものの、そこには思い描く未来はなかったといいます。中学入学後、初めての試験。翔太さんは苦戦し、下位グループに甘んじたといいます。それまで小学校でも、塾でも上位グループの常連でしたが、偏差値70超の秀才たちが集まっているなか、それでも順位はついてしまいます。翔太さん、初めての挫折でした。
学業の負担が非常に大きく、成績はなかなか上へ行くことができず、ある程度のところで順位は固定してしまった感がありました。努力しても努力しても……翔太さん、大きな挫折を味わうことになったのです。
さらに、勉強に必死になっているなか、ふとクラスに馴染めていないことに気づいたといいます。どこか置いてけぼりにされている、どこか疎外感を覚える……徐々に孤立を深めることになったといいます。
ただ翔太さんのそんな悩みに、池田さんは気づくことができませんでした。生徒のほぼ全員が内部進学できる――そんな安心感があったのでしょう、翔太さんの中学生活への関心は薄かったといいます。
そんなある日、翔太さんは不登校に。池田さんはやっと翔太さんの胸のうちを知ることになったといいます。
――ショックでした。そんな思い詰めているなんて。「お父さんと、お母さんが行かせたかった学校で、別に僕が行きたかった学校じゃない! 中学受験なんて、しなきゃよかった!」といわれました。親、失格ですよ。中学受験なんてさせなければよかった……
文部科学省『令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査』によると、中学校における不登校生徒数は21万6,112人。そのうち私立中学校では8,120人で全生徒数の3.2%に当たります。また私立中学校における不登校生徒において、成績不振などがみられたのがおよそ20%弱、友人関係等について問題があったのが10%強ありました。
【私立中学校・不登校生徒について「把握した事実」】
生活リズムの不調に関する相談があった…31.9%
学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった…26.2%
不安・抑うつの相談があった…25.2%
学業の不振や頻繁な宿題の未提出が見られた…18.8%
いじめ被害を除く友人関係をめぐる問題の情報や相談があった…12.3%
現在、親子、学校、さらにカウンセラーを交えて、一番いい選択は何なのか、話し合っているといいます。
[参考資料]
東京都教育委員会『令和5年度公立学校統計調査報告書』
文部科学省『令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査』