【都並敏史が語るJ30周年 #4】選択肢が増えたセカンドキャリア。息子にも伝えた「真摯にサッカーと向き合い、100%の姿勢を示す」
――◆――◆――
2022年のカタール・ワールドカップ(W杯)でドイツ・スペインの両優勝経験国に劇的勝利を挙げ、4度目のベスト16進出を果たした日本代表。悲願の8強入りはまたしても叶わなかったが、日本サッカー協会は森保一監督の続投を決断。1人の指揮官が2度のW杯を目ざすことになったのは、彼が初めてだ。
「森保は地道にサッカーを追い続けた人の成功例。コツコツと努力して、階段を一歩ずつ駆け上がっていくという生き方をしてきたドーハ組の出世頭だし、ある意味、『農耕民族の象徴』みたいな部分もある。人格的に誰もが認める人材が、日本のトップに立っているのは本当に素晴らしいこと。そこはみんなに認めてほしいですね」と、かつての代表仲間は力を込める。
2018〜22年までの4年間には、森保監督の選手選考や采配、東京五輪でメダルを逃した結果などに対して、批判の声が挙がったこともあった。カタールW杯後には外国人監督を推す意見も確かにあった。そういった状況を踏まえつつも、都並は「今は森保が必要」と考える。
「日本はワールドカップで4度、16強に入ったけど、恒常的に8強以上を維持したり、優勝するレベルには辿り着いていない。一足飛びにそういう高い領域には辿り着けない。今はそのために地固めをする重要な時期なんです。
その人材として森保はベスト。代表選手時代によく同室になった福田正博の長い話を誰よりもよく聞いていたように『聞く力』に優れていますし、日本サッカーを支える人たちへの感謝を忘れない。常に敬意を払うというスタンスは、日本人にとって大切な和を作るのに不可欠。彼を心から応援したいですね」
かつての代表レジェンドである岡田武史、西野朗の両監督に続き、森保監督が一定の成功を収めたことで、「代表経験者が代表の指導者になって日本のサムライ魂を引き継いでいく」という理想モデルが、この30年間で出来上がったのは確か。
今の第二次森保ジャパンには、98年フランスW杯で10番を背負った名波浩コーチ、主にアルベルト・ザッケローニ監督体制で1トップを担った前田遼一コーチも加入しており、その傾向はより強まっていると言っていい。
今年は中村憲剛・内田篤人の両JFAロールモデルコーチもJFA公認S級ライセンス講習会に参加中。W杯経験者の監督が代表を率いる時代も、そう遠くなさそうだ。
【PHOTO】名場面がずらり!厳選写真で振り返る“Jリーグ30年史”!
こうした流れのなか、引退したJリーガーが日本代表のみならず、Jクラブや下部リーグクラブの現場指導やマネジメントスタッフとして働いたり、代理人に転身する例が増加。サッカー界を支える人材は多岐に渡っている。セカンドキャリアの選択肢が増え、幅が広がったことも、この30年の1つの成果だろう。
都並も98年にベルマーレ平塚でユニホームを脱いだ後、サッカー解説者と指導者を掛け持ちするという多彩なキャリアを形成。存在感と知名度を高めていった。
「サッカー選手はどれだけ長く現役を続けられたとしても、45歳くらいまで。カズ(三浦知良/UDオリヴェイレンセ)や伊東テル(輝悦/沼津)のような選手もいますが、それは特例で、セカンドキャリアのことは誰もが考えなければいけないテーマでしょう。
次男の優太も今、J3の奈良クラブに在籍していますが、数年前に一度、進退を考えたことがあったようです。名古屋で会って真剣に話をしましたが、『もう一度チャレンジする』と決意して現役を続けています。
ただ、引退するにしても、Jクラブの指導者や解説者のパイは少ない。そういうなかに入っていける人材になるためにも、現役時代に真摯にサッカーと向き合い、100%の姿勢を示していくことが大事なんです。僕もそうしてきましたし、息子にもそう伝えたつもりです」
都並自身も2005年のベガルタ仙台、2007年のセレッソ大阪、2008年の横浜FCとJリーグで3度、采配を振るったが、いずれも悔しい経験に終わった。その挫折を糧に、2019年に就任した浦安では、4シーズンの関東1部での戦いを経て、ついに2022年の全国地域サッカーチャンピオンシップで優勝。悲願のジャパン・フットボール・リーグ(JFL)昇格を果たした。
「浦安で11年ぶりに監督業復帰を果たした時には、『もう一度、チャレンジするんだ』と自分自身を奮い立たせました。2000年のアジアカップで優勝した際、フィリップ・トルシエ監督が選手たちから水をかけられる姿が脳裏に焼き付いていて、自分もそういう経験をしたいと思っていたんです。その夢が昨年、本当に叶った。本当に嬉しかったですね。
今季は周りのレベルが上がり、なかなか結果が出なくて苦しんでいますが、ここからが本番。浦安から日本サッカーを盛り上げていけるように頑張ります」
77歳の解説者・セルジオ越後が辛口で檄を飛ばし、72歳のネルシーニョが柏レイソルの指揮を執っている今、60代になったばかりの都並はまだまだ存分に活躍できるはず。Jリーグ30年分の経験値を活かして、彼らしいチーム作りができるはず。ドーハ組の森保監督らと刺激し合いながら、これからも高みを目ざし続けてほしいものである(本文中敬称略)。
※第4回終了(全4回)
取材・文●元川悦子(フリーライター)
