シャンプーやトリートメントをするとき、どれだけ”頭皮”のことを考えることができている?

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 サロンでの頭皮マッサージ、ヘッドスパにはじまり、家電量販店には頭皮マッサージ器や頭皮ケア機能のあるドライヤー、電動頭皮ブラシ、ドラッグストアにはシャンプー、トリートメントなど、頭皮ケアにまつわる製品が近年、急速に拡大を見せている。ひと昔前まで頭皮ケアといえば、薄毛に悩む中高年男性がメインターゲットだったが、今では女性や若者の間でも、美しい髪を作る土台は頭皮にあるという考えが浸透し始めているようにも。もっとも身近なケア製品であるシャンプーやトリートメントの開発者は頭皮ケアの必要性をどのようにとらえているのか。今さら聞けないケア方法についても話を聞いた。 

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■髪の悩みの根本を解決するはずが…意外に多い“シャンプー難民”

 今回話を聞いたのは「BOTANIST」のシャンプー&トリートメントを開発したI-neの西林遼一郎氏。記者の「頭皮ケアって、どのくらいから必要なんですか?」の問いに「個人差はありますが、だいたい40代から、早い人だと30代でも髪質の変化を気にする人が多くなっています。頭皮ケアが重要なのは、髪の土台となる地肌を良好に保つことが、髪の悩みの根本を解決することにつながるからです」と話す。

 SNSには「抜け毛がひどい」「白髪が増えてきた」「前髪がうまく立ち上がらない」など、切実な髪の悩みが。だからこそ、ドラックストアやネットショップで気軽に購入でき、もっとも身近な解決策となるシャンプーやトリートメントには“即効性”が求められる。「自分の髪質に合うものを探し求める、“シャンプー難民”と呼ばれる人が意外にも多くいる」という。

「すぐ解決したいはずなのに、頭皮ケアの必要性を分かっていない人が意外に多いんです。忘れがちですが、頭皮も肌なんですよね。紫外線によって肌が酸化されてシミになりやすくなるのと同じで、頭皮も酸化するとダメージを受けて、健康な髪を維持することができなくなってしまいます。また目や首や肩のコリ、精神的なストレスや喫煙などの生活習慣、乾燥によっても頭皮は硬くなります。すると血液の循環が悪くなって、薄毛や抜け毛などのヘアトラブルだけではなく、パサつきなど髪質の悩みにも影響するんです」(西林氏、以下同)

 頭皮も顔と同じで、外的・内的ストレスが原因でダメージを受ける。ケアをしておかなければ、そこから美しい髪は生えてこないというわけだ。

 さらに年齢とともにケアの重要性が高まるのも、顔と同じだと続ける。

「地肌や髪質の変化は、髪のうねりやパサつき、やせ髪が主な症状ですが、早い人は30代で、だいたい40歳ごろに劇的に表れるんです。若い人の場合は、髪の根元は健康なので、枝毛や切れ毛など“毛先のダメージ”が多い。ですが、エイジング世代の髪は根元からダメージホールができているため、昔のような毛先中心のケアだけだと、ケアの満足感が高く得られない可能性があります。

 女性の場合、出産などライフステージの変化も頭皮のコンディションに影響を及ぼす要因のひとつです。ただし、そこで髪質が変わってしまったとしても、その後のケア次第です。生え変わらせた髪は美しさを取り戻し、それを保ち続けることができます」

■シャンプー2回は洗いすぎ?「おすすめは、38〜39℃のお湯で予洗い」

 とはいえ先にも述べたとおり、今は、ヘッドスパをはじめ、頭皮マッサージ器などの頭皮ケア製品が多数出回っている。一番身近なのは頭皮や髪の洗い方となるが「湯シャンする(お湯だけで洗う)」「特定の成分が入っているものを使うとよい」など、様々な流派もあり、何が正しいのか判断に迷ってしまうのが本音だ。今回は同社の西林氏に一般的なシャンプーやトリートメントの使用において、改善できるポイントや注意点についても確認した。

●シャンプーする前にお湯だけの予洗いを

シャンプーは1回と2回どちらがいいのか。「洗い過ぎは、頭皮の皮脂が取れ過ぎる可能性があるので、シャンプーの回数を増やすより、シャンプー前にお湯だけで髪を洗う“予洗い”を入念にすることをおススメします」。その後、シャンプーをしても、スタイリング剤が取れないときは、2度洗いしよう。

●シャワーの温度は38〜39℃くらいで

熱いシャワーは頭皮への刺激が強すぎ、ぬるすぎるのは汚れが取れにくい。「シャワーの温度は38〜39℃くらいが適切」。予洗いも同じ。

●シャンプーは手の中でしっかり泡立ててから使う

シャンプー液を頭皮に直接つけるのは、濃度の濃い洗浄成分が頭皮への刺激に繋がる可能性があるのでNG。また、シャンプーを頭につけてから泡立てると、髪をこすり合わせることになり、摩擦でキューティクルが剥がれるなど髪が痛む原因に。シャンプー液はまず手に出して、手の中でしっかり泡立ててからつけること。

●爪をたてて洗わない

爪をたてて顔を洗うと皮膚を傷つけてしまうことは容易に想像できることだろう。頭皮も同じ。シャンプーは、指の腹を使って優しく頭皮をマッサージするように。

●トリートメントは使用方法を守る

「トリートメントには『中間から毛先にかけてつける』タイプのものが多く、そういう製品を根元からつけてしまうと、べたつきの原因になったり根本や頭皮にトリートメント成分が残りすぎて、毛穴が詰まったり頭皮の環境を悪くしてしまう可能性があります」。トリートメントは使用方法をきちんと読んで守るようにしよう。

●トリートメントは残し過ぎに注意

トリートメントは流し過ぎると効果がなくなってしまう気がするが、どのくらい流すのが適切なのか。西林氏は「流し過ぎより、残し過ぎな人が多いようです」と現状を分析。残し過ぎは頭皮のトラブルの原因になる。ぬめりがなくなり、髪になめらかさが残る程度まですすぐこと。

●人の手でまかないきれない部分は、市販のツールに頼る

剣山型のブラシやコームなど、市販のアイテムをプラスして使うのも自宅でのケアを高める方法。「トリートメント時にコームを使うと、成分を髪に行きわたらせるのに効果的です。また、シャンプー時に頭皮マッサージができる剣山型のブラシも良いでしょう。ただし、剣山型のブラシは、柔らかいシリコン製など、頭皮への刺激が強すぎない材質のものを選ぶといいでしょう」。

■頭皮には中長期的なケアが必要なのに…開発者が抱えるジレンマ

 髪質の変化は見た目の印象に直結するため、その変化に戸惑うことも。早期解決を望むからこそ、差し迫る思いで自分に合うシャンプーを探し求める人もいる。しかし「“頭皮のケア”は、中長期的な目線で経過を見てほしい」と西林氏。確かに髪質を整えるケア製品で瞬間的な効果を感じる場合もあるが、入っている成分により整っているように見せているだけの場合もある。大事なのは、新しい髪が生え変わるサイクルに沿って頭皮ケアを続けていくことにある。

「皆さんがシャンプーやトリートメントに求めるのは即効性、でも頭皮には中長期的なケアが必要。『BOTANIST』を発売した時も頭皮ケアの大切さは発信してきましたが、次となる商品を作るにあたり、このギャップには悩ましさを感じていました。どうすれば頭皮のケアに目を向けていただけるか。新商品の『ROOTH』のラインアップは、ある意味とても攻めたコンセプトで商品作りを行いました」

 「BOTANIST」の新ラインとして発売された「ROOTH」に配合されているのは、ウコン、八角、クローブなど複数のスパイスだという。スパイスが持つ力で、地肌を徹底的にケアしていく。シャンプーだけではなくトリートメントも頭皮に直接つけて、マッサージできる処方になっているという。

 期待して購入したはずのシャンプーやトリートメント、その使用感が合わなかった時の後悔は大きい。「詰め替え用の裏面には、ボトルよりもたくさんの情報を入れられます。各メーカーのこだわりがプラスアルファで書かれていることが多いんです。その説明や成分表を確認して判断材料とするのもおすすめです」と西林氏。

「何よりも伝えたいのは、髪の悩みを解決するためには土台=地肌からケアする必要があること。この考えが、より広がっていくことがシャンプーとトリートメントの開発に携わる者としての願いです。顔の手入れと同じように、頭皮のケアにも気を配っていただければと思います」

(取材・文 河上いつ子)