仙台ユースを強豪に育て上げた指揮官、越後和男の新たな挑戦
現在50歳の越後氏は、四日市中央工高から古河電工、ジェフ市原、ブランメル仙台でMFとして活躍し、日本代表でも6試合(1得点)に出場。1999年に現役を退き、指導者に転身した。2006年には指導者S級ライセンスを取得。ジェフ・リーザーブズでの指導を経て、11年から仙台ユースで指揮を執ってきた。
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選手育成だけでなく、結果もしっかり残した。就任前は決勝トーナメント進出さえ一度もなかった夏の日本クラブユースサッカー選手権で目覚ましい戦績を挙げている。12年大会でが道渕、千田が中心のチームが、南野拓実(現ザルツブルク)擁するセレッソ大阪U-18に勝利して初のベスト8進出。以後2年連続でベスト16入りを果たし、佐々木と小島が中心に臨んだ昨年大会では、清水エスパルスユース、名古屋グランパスU18などプレミアリーグ勢を倒して、初めてベスト4に食い込んだ。
仙台ユース監督就任当初、越後監督が選手によく語っていたのが、「関東の選手と君らはそんなに違わない」という点だった。東北ではパスサッカーを貫けても、全国大会になるとどうしてもDFラインを下げてしまい、選手たちは自信なさげにプレーしていた。就任1年目の11年は東日本大震災の影響もあって公式戦の数が減少。そんな選手たちに場数を踏ませるため、関東遠征を積極的に組んで、激しいプレッシャーに慣れさせたのだ。
関東の強豪チームとの戦いを重ねながら選手たちは自信を蓄え、「そんなに違わない」と肌身で感じさせた。そして就任2年目、クラブユース選手権でのベスト8へと繋がっていくのだ。
成果を残せた理由はもうひとつある。兎にも角にも、選手との距離の取り方が絶妙で、雰囲気作りが上手いのだ。
試合の前後は選手やスタッフを気さくにいじって、笑顔の絶えない和やかなムードを作る。時々そこまでいじるのかと思わせる場面もあるが、選手・スタッフとの信頼関係があってこそだ。
この日はかつて仙台の育成スタッフだったサンフレッチェ広島の中村伸コーチが応援に駆けつけていた。毎年広島で開催されるプレミアリーグ参入戦に出場する度に顔を出してくれる中村コーチに対し、越後監督は試合後「伸さんが(運を)持っていなかったのかな〜」といじって、その場が笑いに包まれた。
そんな指揮官をチーム主将のDF上田健斗は「ツンデレっぷりをレディースでも発揮してほしい」と評し、エールを贈る。女子チームは技術指導に加えて、雰囲気作りがきわめて重要になる。ユーモア溢れる越後監督のスタンスが評価され、レディースチームの監督就任に繋がったのかもしれない。
ユース年代は毎年のように選手が入れ替わり、チームの特徴もその都度異なるため、フォーメーションは個性や大会の性質を見ながら臨機応変に変えていた。今年もプリンスリーグ東北やJユースカップでは4-4-2を採用したが、クラブユース選手権、プレミアリーグ参入戦は3-4-3を採用。かつては4-3-3で臨んだ年もあるなど、システムは変幻自在だ。
さらに勝利が絶対条件の試合では、思い切った采配も行なう。例えば、仙台ユースのMF熊谷奎哉の起用法だ。今年はずっとボランチで起用してきたが、勝たなければ優勝の望みを絶たれるプリンスリーグ東北の尚志戦を前に、「ボランチではないほうが良いかもしれない」とサイドハーフで練習をさせていた。そして迎えた本番、0-2と2点リードをされた時点で熊谷をサイドハーフに移したところ、2ゴールに絡む大活躍を披露。見事に試合をひっくり返し、優勝を勝ち取った。こうした大胆な采配ができる部分も女子トップリーグでは活きてくるだろう。
6年間で仙台ユースを強豪へと育て上げた越後監督は、来季のなでしこリーグでどんなチームを送り出し、どんな采配を振るうのか。大きな期待を寄せたい。
取材・文・写真:小林健志(フリーライター)
