【インタビュー】多部未華子「女性としては、早く30歳になりたいです(笑)」
見た目ハタチで心は73歳!オリジナル映画も日本で大ヒットを記録した、毒舌おばあちゃんが人生をやり直す笑って泣けるコメディ映画「あやしい彼女」が4月1日エイプリルフールより公開。そんな異色のヒロインを演じた多部未華子さんに、本作のこと、お芝居へのスタンス、これからのことを語っていただきました。
――最初にオファーが来た時の感想はいかがでしたか?
多部:オリジナル版「怪しい彼女」を観て、すごく面白いと思ったんです。歌も素敵で3回も観てしまいました。普通に楽しんで観ていたので素直に演じてみたいなと思いましたね。大変そうだなとはあまり思わなかったですし、楽しそうという気持ちが大きかったです。
――今回は、1役2人の配役ですよね。現役73歳の瀬山カツを倍賞美津子さんが演じ、生まれ変わった20歳セツ(=大鳥節子)を多部さんが演じられたわけですが、お二人で役をシンクロさせたりなどもされたのですか?
多部:撮影前に少しだけ、お話をする機会をいただきました。共通認識として、戦災孤児で苦労してきて、逃げ足が早いなど…(笑)。そういう「共通認識をお互い常に持っていたらそれだけでも違うよね」という話をしてくだって。撮影初日は倍賞さんのシーンから撮影だったので見学させていただいて、節子の動きに取り入れさせていただきました。
――共演者の方、それこそ志賀(廣太郎)さんとも“同世代役”としてお芝居をされているわけで、すごい年上の方に対して強烈な毒舌を言う多部さんの姿が笑いを誘うのですが、現場はどういう雰囲気だったのですか。
多部:現場は楽しかったのですが、すごく静かだった気がします。
――意外ですね。
多部:静かじゃなかったのかな?私の中では静かだったんですよね(笑)。
――掛け合いがすごい面白いなと思ったんですけど、そういうのも打ち合わせとかは…?
多部:特に打ち合わせはしていません。監督が本番に行くのがすごく早く、テストも何回も何回もなさらないので常に良い緊張感がありました。その中でいろんな方と芝居をする機会があったのですごく楽しかったですし刺激的でした。志賀さんとは本来だったらおじいちゃんと孫だったり、娘の関係ですよね(笑)。なので今回のような友人としての対等なセリフの掛け合いというのは、すごく貴重で…贅沢な時間でした。
――監督からは何か指示やアドバイスはありましたか?
多部:監督は衣装合わせや、撮影中も「やりづらくない?」とか「衣装どう?」など常に気にかけてこまめに聞いてくださる、本当に役者思いの方でした。
――普段の多部さんはすごく静か、というか落ち着いていらっしゃるので節子の弾けっぷりがスゴイなとギャップに驚きました(笑)。
多部:そうですよね(笑)。うるさい時はうるさいんですけど(笑)。
――節子に共通する部分はあったりするんですか?
多部:どうだろう…共通点はあまりなかったですね(笑)。
――例えば、多部さんご自身とは全く異なるような部分を持った役を演じなければならない時ってどうされているのですか?
多部:「セリフを覚えて、現場に行く」という本当に基本的なことをするだけなんです(笑)。自分とかけ離れた役をやるにしても、事前に「ここはこうしよう」とか「ああしよう」とは思わないので。本当に現場で言われたことをやるというのが私の基本、みたいな所はあります。今回は歌のレッスンや振り付けがあったので、練習はしましたが、基本的にはいつも何も考えずに現場に行きます。
――自分でもその時にならないと、どういう表情で、どんなお芝居が出てくるかわからない、という感じですか?
多部:本当にそうです!もう毎日が運試しです(笑)。
――出てきたものを見て、自分自身が驚いたりとか、こういう表情するんだとか思ったりもされますか?
多部:あまり自分のことを「こういう表情もするんだ、私!」などと思ったことはないです(笑)。
――「役を演じる」「芝居をする」というよりかは、自分の中から溢れ出てくるものが私たちに新しい姿を見せてくれている、という感じなんですね。
多部:芝居を作り込むというよりは、そういうことになるのかなと思ってはいます。でも、どうなんだろう(笑)。
――今回それこそお芝居とは別に歌も披露されています。プレスには「歌が苦手」と書いてありましたが、まったく苦手だとは思えないほどお上手でした。
多部:歌は苦手なんです。今でもこの気持ちは変わりません(笑)。
――そうすると、歌の練習をしつつ、演技もしなくちゃいけない現場は大変だったのでは?
多部:撮影が始まる前にレコーディングを終えていたので歌の課題は自分の中で全部終えてからお芝居にのぞめました。なので、歌とお芝居で一緒に悩むということはありませんでした。ただ、撮影前にとにかく歌のレッスンとレコーディングを終わらせなければ、と焦ってはいました(笑)。ボイストレーニングの先生に週に1、2回レッスンを受けて、自分の歌を録音していましたが、あんまり成長が見られず…「大丈夫かなぁ?」と思いながら日々過ごす中で、レコーディングの日は迫ってくるみたいな感じでした(笑)。
――結構追いつめられていた?
多部:そうですね。自分で録音したものを聴いてもあまり、ピンと来なくて…。最終的には「感情が大事だよね」ということになり(笑)。技術よりも想いが大事だという結論に至り、レコーディングしました。
――歌もお芝居も感情や自分の思いが大切?
多部:そうですね。歌ももう運試しですよ(笑)。
――でもすごく気持ち良さそうに歌われているなと思ったんですけど、どうでしたか?
多部:最後のライブのシーンはすごく楽しかったです。アーティストの疑似体験をさせてもらったというか。お客さんの前で歌ったことはすごく貴重な体験でした。
――女優とは違いましたか?
多部:全然違いますね。似たような見られる仕事でも、やはり感覚や意識などは全く違うんだろうなって思いながら歌っていました。
――これからまた歌手の役とかが来たら…(笑)?
多部:いや、もう本当にいいです(笑)。年単位で稽古とかすればまた「やりたい!」って思うかもしれないですけど(笑)。
――表現することって、自分の中のいろんなものとか経験したこととかが反映されるのかなと思うんですけど、そういった面とかってやっぱり大事ですか。
多部:うーん、大事だとは思うんですが、それよりも大事なのは“想像力”かなと思います。今回の役にしても、73歳って、私はまだなったことがないし、73年間の苦労を滲み出すことは想像でしか出せないなと思いました。でも、例えばプライベートで嫌なことがあっても、良くも悪くも「芸の肥やしだな」ぐらいに思えるようにはなりました(笑)。
――それはいつごろからですか?
多部:結構最近です。嫌なことっていうか、何かあっても「身になればいいか」と思うようになりました。
――自分の生き方への捉え方が変わってきた?
多部:そうですね。
――それはお芝居をしているからこそなんでしょうか。
多部:そうですね。そんな気がします。
――「もし、人生で女優という職業を選んでいなかったら」といった想像をしてみたりしますか?
多部:たぶん普通に実家にいて、実家から仕事場に通ってという生活をしていると思います(笑)。先日友達に「この仕事をしていなかったら早く結婚をして子供がひとりくらいいそうだよね」って言われました(笑)。
――すごい落ち着いていますもんね。
多部:落ち着いてもいないんですけど(笑)。
――今、この女優業を選択したことに関してはどう思っていますか?
多部:この仕事を選んだことは後悔はしていません。「楽しまなきゃな」とは思ってます。
――お芝居を楽しむために普段意識的にやっていることはありますか。
多部:仕事を頑張るにあたっては「プライベートを充実させる」ことですね。
――Peachyって、ゴキゲンとかハッピーという意味があるんですけど、どういうことをしてるとハッピーになって、それが女優としても生かされると思いますか。
多部:すごく些細なこと…友達と会うでもいいし、旅行行くでもいいし、何か高い買い物をするでも何でもいいんです。些細なことで自分にご褒美を与えたら、次もまた頑張ろうって思えてきます。
――女性としては今後どうなっていきたいですか?
多部:女性としては…どうなっていきたいかなぁ。…早く30歳になりたいです。みんな楽しいって30代の人が言うから(笑)。
――今はスピード上げて、といった感じだったりします?
多部:20代だからこそできることってあるのかなと思ってるのであと3年、自分の思うがままに楽しいことをしたいなと思っています。
――このあとは舞台も控えていますよね。
多部:そうですね。仕事やプライベートなど人付き合いもそうですが、30代に向かって突き進んでいきたいですね。
「あやしい彼女」は4月1日エイプリルフールよりロードショー。
公式サイト:http://ayakano.jp/
撮影:鈴木愛子
取材・文:木村友美
制作・編集:iD inc.
『オリジナル版が素敵で、3回も観てしまいました(笑)』
――最初にオファーが来た時の感想はいかがでしたか?
多部:オリジナル版「怪しい彼女」を観て、すごく面白いと思ったんです。歌も素敵で3回も観てしまいました。普通に楽しんで観ていたので素直に演じてみたいなと思いましたね。大変そうだなとはあまり思わなかったですし、楽しそうという気持ちが大きかったです。
――今回は、1役2人の配役ですよね。現役73歳の瀬山カツを倍賞美津子さんが演じ、生まれ変わった20歳セツ(=大鳥節子)を多部さんが演じられたわけですが、お二人で役をシンクロさせたりなどもされたのですか?
多部:撮影前に少しだけ、お話をする機会をいただきました。共通認識として、戦災孤児で苦労してきて、逃げ足が早いなど…(笑)。そういう「共通認識をお互い常に持っていたらそれだけでも違うよね」という話をしてくだって。撮影初日は倍賞さんのシーンから撮影だったので見学させていただいて、節子の動きに取り入れさせていただきました。
――共演者の方、それこそ志賀(廣太郎)さんとも“同世代役”としてお芝居をされているわけで、すごい年上の方に対して強烈な毒舌を言う多部さんの姿が笑いを誘うのですが、現場はどういう雰囲気だったのですか。
多部:現場は楽しかったのですが、すごく静かだった気がします。
――意外ですね。
多部:静かじゃなかったのかな?私の中では静かだったんですよね(笑)。
――掛け合いがすごい面白いなと思ったんですけど、そういうのも打ち合わせとかは…?
多部:特に打ち合わせはしていません。監督が本番に行くのがすごく早く、テストも何回も何回もなさらないので常に良い緊張感がありました。その中でいろんな方と芝居をする機会があったのですごく楽しかったですし刺激的でした。志賀さんとは本来だったらおじいちゃんと孫だったり、娘の関係ですよね(笑)。なので今回のような友人としての対等なセリフの掛け合いというのは、すごく貴重で…贅沢な時間でした。
――監督からは何か指示やアドバイスはありましたか?
多部:監督は衣装合わせや、撮影中も「やりづらくない?」とか「衣装どう?」など常に気にかけてこまめに聞いてくださる、本当に役者思いの方でした。
――普段の多部さんはすごく静か、というか落ち着いていらっしゃるので節子の弾けっぷりがスゴイなとギャップに驚きました(笑)。
多部:そうですよね(笑)。うるさい時はうるさいんですけど(笑)。
――節子に共通する部分はあったりするんですか?
多部:どうだろう…共通点はあまりなかったですね(笑)。
『自分でもどんなお芝居がでてくるか分からない…毎日が運試し(笑)』
――例えば、多部さんご自身とは全く異なるような部分を持った役を演じなければならない時ってどうされているのですか?
多部:「セリフを覚えて、現場に行く」という本当に基本的なことをするだけなんです(笑)。自分とかけ離れた役をやるにしても、事前に「ここはこうしよう」とか「ああしよう」とは思わないので。本当に現場で言われたことをやるというのが私の基本、みたいな所はあります。今回は歌のレッスンや振り付けがあったので、練習はしましたが、基本的にはいつも何も考えずに現場に行きます。
――自分でもその時にならないと、どういう表情で、どんなお芝居が出てくるかわからない、という感じですか?
多部:本当にそうです!もう毎日が運試しです(笑)。
――出てきたものを見て、自分自身が驚いたりとか、こういう表情するんだとか思ったりもされますか?
多部:あまり自分のことを「こういう表情もするんだ、私!」などと思ったことはないです(笑)。
――「役を演じる」「芝居をする」というよりかは、自分の中から溢れ出てくるものが私たちに新しい姿を見せてくれている、という感じなんですね。
多部:芝居を作り込むというよりは、そういうことになるのかなと思ってはいます。でも、どうなんだろう(笑)。
『ライブシーンはすごく楽しかった…。貴重な体験でした』
――今回それこそお芝居とは別に歌も披露されています。プレスには「歌が苦手」と書いてありましたが、まったく苦手だとは思えないほどお上手でした。
多部:歌は苦手なんです。今でもこの気持ちは変わりません(笑)。
――そうすると、歌の練習をしつつ、演技もしなくちゃいけない現場は大変だったのでは?
多部:撮影が始まる前にレコーディングを終えていたので歌の課題は自分の中で全部終えてからお芝居にのぞめました。なので、歌とお芝居で一緒に悩むということはありませんでした。ただ、撮影前にとにかく歌のレッスンとレコーディングを終わらせなければ、と焦ってはいました(笑)。ボイストレーニングの先生に週に1、2回レッスンを受けて、自分の歌を録音していましたが、あんまり成長が見られず…「大丈夫かなぁ?」と思いながら日々過ごす中で、レコーディングの日は迫ってくるみたいな感じでした(笑)。
――結構追いつめられていた?
多部:そうですね。自分で録音したものを聴いてもあまり、ピンと来なくて…。最終的には「感情が大事だよね」ということになり(笑)。技術よりも想いが大事だという結論に至り、レコーディングしました。
――歌もお芝居も感情や自分の思いが大切?
多部:そうですね。歌ももう運試しですよ(笑)。
――でもすごく気持ち良さそうに歌われているなと思ったんですけど、どうでしたか?
多部:最後のライブのシーンはすごく楽しかったです。アーティストの疑似体験をさせてもらったというか。お客さんの前で歌ったことはすごく貴重な体験でした。
――女優とは違いましたか?
多部:全然違いますね。似たような見られる仕事でも、やはり感覚や意識などは全く違うんだろうなって思いながら歌っていました。
――これからまた歌手の役とかが来たら…(笑)?
多部:いや、もう本当にいいです(笑)。年単位で稽古とかすればまた「やりたい!」って思うかもしれないですけど(笑)。
『女優じゃなかったら、早く結婚して子供いそうだよねって(笑)』
――表現することって、自分の中のいろんなものとか経験したこととかが反映されるのかなと思うんですけど、そういった面とかってやっぱり大事ですか。
多部:うーん、大事だとは思うんですが、それよりも大事なのは“想像力”かなと思います。今回の役にしても、73歳って、私はまだなったことがないし、73年間の苦労を滲み出すことは想像でしか出せないなと思いました。でも、例えばプライベートで嫌なことがあっても、良くも悪くも「芸の肥やしだな」ぐらいに思えるようにはなりました(笑)。
――それはいつごろからですか?
多部:結構最近です。嫌なことっていうか、何かあっても「身になればいいか」と思うようになりました。
――自分の生き方への捉え方が変わってきた?
多部:そうですね。
――それはお芝居をしているからこそなんでしょうか。
多部:そうですね。そんな気がします。
――「もし、人生で女優という職業を選んでいなかったら」といった想像をしてみたりしますか?
多部:たぶん普通に実家にいて、実家から仕事場に通ってという生活をしていると思います(笑)。先日友達に「この仕事をしていなかったら早く結婚をして子供がひとりくらいいそうだよね」って言われました(笑)。
――すごい落ち着いていますもんね。
多部:落ち着いてもいないんですけど(笑)。
――今、この女優業を選択したことに関してはどう思っていますか?
多部:この仕事を選んだことは後悔はしていません。「楽しまなきゃな」とは思ってます。
――お芝居を楽しむために普段意識的にやっていることはありますか。
多部:仕事を頑張るにあたっては「プライベートを充実させる」ことですね。
『女性としては…、早く30歳になりたいです(笑)』
――Peachyって、ゴキゲンとかハッピーという意味があるんですけど、どういうことをしてるとハッピーになって、それが女優としても生かされると思いますか。
多部:すごく些細なこと…友達と会うでもいいし、旅行行くでもいいし、何か高い買い物をするでも何でもいいんです。些細なことで自分にご褒美を与えたら、次もまた頑張ろうって思えてきます。
――女性としては今後どうなっていきたいですか?
多部:女性としては…どうなっていきたいかなぁ。…早く30歳になりたいです。みんな楽しいって30代の人が言うから(笑)。
――今はスピード上げて、といった感じだったりします?
多部:20代だからこそできることってあるのかなと思ってるのであと3年、自分の思うがままに楽しいことをしたいなと思っています。
――このあとは舞台も控えていますよね。
多部:そうですね。仕事やプライベートなど人付き合いもそうですが、30代に向かって突き進んでいきたいですね。
「あやしい彼女」は4月1日エイプリルフールよりロードショー。
公式サイト:http://ayakano.jp/
撮影:鈴木愛子
取材・文:木村友美
制作・編集:iD inc.