飛蚊症から「網膜剥離」に… 見え方の変化と失明までのカウントダウン
飛蚊症が出現してから網膜剥離に至るまでには、いくつかの段階があります。それぞれの段階でどのような変化が起こり、どの時点で医療介入が必要になるかを理解しておくことは、視力を守るうえで大切な知識です。後部硝子体剥離から網膜裂孔、さらに剥離へと至る進行のプロセスを段階ごとに解説します。
監修医師:
柿崎 寛子(医師)
三重大学医学部卒業 / 現在はVISTA medical center shenzhen 勤務 / 専門は眼科
飛蚊症から網膜剥離への進行過程
飛蚊症が出現してから網膜剥離に至るまでには、いくつかの段階があります。この進行過程を理解することで、どの時点で医療介入が必要かを判断できます。早期段階での対応が、視力予後を大きく左右するため、各段階の特徴を把握しておくことが重要です。
後部硝子体剥離から網膜裂孔への移行
飛蚊症の多くは後部硝子体剥離に伴って生じます。加齢により硝子体が液化すると、硝子体と網膜の接着面が剥がれ始めます。この過程で硝子体が網膜を牽引し、一時的に光視症が現れることがあります。多くの場合、硝子体は網膜から完全に離れて症状は安定しますが、網膜との癒着が強い部分では牽引力が集中し、網膜が引き裂かれて裂孔が生じる可能性があります。
網膜裂孔ができる瞬間、患者さんは飛蚊症の急激な増加や光視症を自覚することが多いとされています。裂孔ができた時点では視力は正常に保たれていることがほとんどで、視野欠損もまだ現れません。しかし、この段階で診断されれば、レーザー光凝固術によって裂孔の周囲を焼き固め、剥離への進行を防ぐことができます。治療は外来で短時間に行え、高い成功率が報告されています。
網膜裂孔から網膜剥離への進展
網膜裂孔が放置されると、液化した硝子体が裂孔を通じて網膜の下に入り込み、網膜を本来の位置から押し上げていきます。この過程が網膜剥離です。剥離は裂孔ができてから数日から数週間かけて徐々に拡大することが一般的ですが、進行速度には個人差があります。
剥離が広がり始めると、視野欠損が出現します。最初は視野の周辺部に小さな影として自覚され、徐々に中心に向かって拡大していきます。剥離の位置によって欠損する視野の方向が決まり、下方の網膜が剥離すると上方の視野が見えなくなります。黄斑部に剥離が及ぶと、急激な視力低下と物がゆがんで見える変視症が現れます。この段階では手術が必要となり、治療が遅れると視力予後が悪化します。網膜裂孔から剥離への進行を防ぐには、飛蚊症や光視症の段階で眼科を受診し、適切な検査と処置を受けることが不可欠です。
まとめ
網膜剥離の初期症状である飛蚊症や光視症は、視力を守るための重要なサインです。これらの症状を正しく理解し、変化に気づいたときに速やかに眼科を受診することで、多くの場合で視力の低下を防ぐことができます。特に急激な飛蚊症の増加、光視症の出現、視野欠損といった症状が現れた場合は、緊急性が高く、当日中の受診が推奨されます。網膜剥離は早期発見・早期治療により良好な予後が期待できる疾患です。少しでも気になる症状があれば、自己判断せずに眼科専門医に相談することが、大切な視力を守る第一歩となります。
参考文献
日本眼科学会「網膜剥離」
厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 網膜剥離」
