「もしもキッチンに立てたなら」難病ALSの女性 子どもたちに残す「母の味」 特集【キャッチ】
特集「キャッチ」です。福岡市で喫茶店の店主を務める、こちらの女性。次第に体の自由が利かなくなる難病ALSと闘いながら、夢だったレシピ本を出版しました。大切な子どもたちに伝えたい「希望のレシピ」が詰まっています。
3月、福岡市の書店で開かれた本の出版記念イベント。車椅子で登場したのは、笑顔が印象的な著者、はらだまさこさん(45)です。
レシピ本のタイトルは「もしもキッチンに立てたなら」。心の中で、何度も何度も繰り返した言葉です。
「きょうは、ありがとうございます。」
世界中の料理を食べ歩いていたほど、おいしいものが大好きな、まさこさん。
店主を務める喫茶店では、こだわりの材料を使い、手間を惜しまず、料理を提供してきました。おいしいご飯を作ることが、なによりの生きがいでした。
まさこさんには、2人の子どもがいます。お兄ちゃんのタカラくんと妹のリンちゃんです。
「左足が動かしにくい」と違和感を感じ始めたのは、リンちゃんを妊娠していた頃です。
■はらだまさこさん(2025年6月)
Q.最初はどういう症状?
「片方の足だけ、こわばる。つったり、こわばりがひどくて、そこから2年ぐらいして左足の筋力が落ち始めて、それで気づいた。」
リンちゃんが1歳になって、抱っこからようやく歩けるようになった頃、まさこさんは、次第に体の自由が利かなくなる国指定の難病、ALS=筋萎縮性側索硬化症と診断されました。
■まさこさん
「自分で、まっすぐ動かせない。」
症状が進行し、少しずつできないことが増えていく日々。心苦しく思うのは、子どもたちにご飯を作ってあげられなくなったことです。
■まさこさん(2025年6月)
Q.一番作ってあげたいメニューは?
「うーん、メニューっていうよりも、お弁当。お弁当を。」
まさこさんにとって、お弁当は子どもたちを思いながら作る、たまらなく愛おしいものでした。
■まさこさんのインスタグラムより
『試合後の夜弁当。優勝できますように』
『ソーセージどんっっっっってのせると喜ぶ』
『今日もリクエストでそぼろ。白味噌足してこく出すのポイント』
包丁を握る、鍋を持ち上げる。
その全てが難しくなり、2023年11月、まさこさんはキッチンに立てなくなりました。
4歳になった、しっかり者のリンちゃん。今では、まさこさんを手助けしています。
母親として自分に何ができるのか。たどり着いた一つの答えが、子どもたちに「母の味」を残すことでした。
自分の料理のレシピをスマートフォンに書き起こし始めた、まさこさん。その数は100を超え、本にすることが夢になりました。
■まさこさん(2025年6月)
「子どもたちが自分で料理をするようになった時のヒントになるように。」
構想から、1年2か月。まさこさんの夢が一冊の形となりました。
その夢を支えてくれたのが、まわりの友人たちです。
キッチンに立てなくなったまさこさんの代わりに、喫茶店に集まってはレシピを再現してくれました。まさこさんは、味見係です。
■リンちゃん
Q.ママうれしそうだね?
「うん。」
レシピ本に載せたのは、子どもたちが大好きな17の料理です。
タカラくんが独り占めして食べた、キャベツたっぷりのギョーザ。リンちゃんがばくばく食べてくれた、ハーブポテトフライ。
家族の味と記憶が、ぎゅっと詰まっています。
■まさこさん
Q.どんな気持ちが一番大きいですか?
「言葉にならないです。うれしい。」
まさこさんのレシピ本はすぐに重版が決まり、握手の代わりにハグをする“ハグ会”のイベントも企画されました。
■訪れた人
「長崎から来ました。応援しています。彼にもスパゲティ作ろうと思います。」
■訪れた人
「また次の本も期待しています。」
■まさこさん
「ありがとう。」
■訪れた人
「ALSを治したいと思います。医者になります。」
■「もしもキッチンに立てたなら」より
『子どもたちは、いまのわたしの姿を見て育っていくのだ』
『温かで優しい人たちに助けてもらいながら目標を叶えていく背中や、病気と闘いながらもできる限り笑顔でいようとする姿を、子どもたちに見せていきたい』
※FBS福岡放送めんたいワイド2026年4月8日午後5時すぎ放送
