中国の「渡航自粛」の影響はゼロ…とんこつラーメン『一蘭』の行列が途絶えないワケ

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国内外に92店舗を展開する、とんこつラーメン店『一蘭』。

各席に仕切りがある味集中カウンター、味の濃さやこってり度、麺の硬さやネギの種類まで好みを記入して注文するオーダー用紙、替玉の際に店内に鳴り響くチャルメラの音色など、個性的な店づくりもあって、長年にわたって人気のラーメンチェーンだ。

臭みの少ないとんこつスープに、赤い秘伝のたれが溶け込む一蘭の味を求め、日本人はもちろん、外国人観光客が行列している様子を各地で見かける。

2025年11月、中国政府が日本への渡航自粛を呼びかけたことにより、中国からの観光客が多く訪れていた店舗や施設は、軒並み客足が減少しているが、一蘭の行列はなお健在だ。

その人気の秘密は、どんなところにあるのか。

株式会社一蘭の広報担当である緒方和正氏に、客足の現状とその理由について聞いた。

中国の「渡航自粛」の影響はゼロ

渋谷や新宿、地元である福岡では中洲にある本社総本店で、連日のように一蘭に並ぶ行列を見かける。また、「外国人観光客が多い」という印象を受け、SNSなどでは「中国人が多く並んでいる」といった感想も多い。

2025年11月、高市首相の発言に反発する形で、中国政府は自国民に対し日本への渡航自粛を求めた。これにより、日本国内で見かける中国人観光客の数は激減。その影響を大きく受けた業種も少なくない。

しかし、一蘭は渡航自粛の要請が出た後も、行列は健在だ。これについて、一蘭の緒方氏は次のように話す。

「売上の変化はないですね。中国だけでなく、どこか特定の国のお客様が減り、売上に影響したということはありません。現在も、中国の方も多く来てくださっていますが、韓国を中心としたアジア圏、またここ数年は欧米からのお客様も増えている傾向にあります」(一蘭・緒方和正氏 以下「」も)

海外客から支持される理由のひとつに円安があるのは間違いない。昨今、ラーメンは1杯1000円を超えることも珍しくない。そのため、一蘭の看板『天然とんこつラーメン(創業以来)』(980円〜)は一般的な価格帯と言えるが、海外、特に欧米から来る場合には、円安のおかげでリーズナブルに感じるのではないか。

ただし、円安特需は一蘭だけではないし、世界の特定の国や地域からの来客が増える背景には該当国の著名な観光雑誌や観光サイトに掲載されることなどがよくある例で、ライバルは多い。しかし、一蘭では別の導線もあるようだ。

「SNSで、日本のインスタグラマーの方がアップしてくれている情報がきっかけになっていることもあると考えています。日本語で発信されていても、翻訳機能があるので、それによって『一蘭』を知ってくださる機会になっているようです」

一蘭の味集中カウンターや目の前ののれん、オーダー用紙や替玉の際にチャルメラの音楽が鳴り響く様子などは、エンタメ性が高く海外旅行の高揚感と親和性が高い。インバウンド客が、回転寿司に求める体験の楽しさと近いものがあるようだ。

日本人へのアプローチも堅実

とはいえ、海外からの客が多いと、日本人離れが起きてしまうリスクがあるようにも思える。しかし「店舗によって海外のお客様と日本のお客様の比率は大きく違うんですよ」と緒方氏は言う。

「観光客の多い新宿や渋谷、浅草や京都は、確かに海外の方が多いです。一方で、立川や平塚、太宰府、新宮などのロードサイド店は、ほとんどが日本のお客様ですよ」

こうした店舗の一部には、名物の味集中カウンターの他に、家族連れやグループ客向けにテーブル席が用意されていることもある。

さらに、日本国内のみで利用可能な「一蘭公式アプリ」には、「お子様ラーメン」が無料というサービスも搭載されている。

お子様ラーメンは、小学6年生までが利用可能で大人1名に対し子ども5名まで利用可能という大盤振る舞いっぷりだ。こうしたところからも、日本人客に向けてもしっかりとアプローチしているわけだ。

中国からの観光客減も物ともせず、相変わらずの好調を維持し続ける一蘭。その理由は、店舗の海外展開でできた礎、そして代名詞でもある味集中カウンターをはじめとした、エンタメ的な要素といった、同社が古くから続けて来た信念が結実した結果だった。

後編記事『超強気《537円カップ麺》が大ヒット…とんこつラーメン『一蘭』が売れまくる理由』では、店舗同様に売上を伸ばしている、カップ麺とブランド性に迫る。

【つづきを読む】超強気《537円カップ麺》が大ヒット…とんこつラーメン『一蘭』が売れまくる理由