麻原彰晃の三女・松本麗華さん、林眞須美死刑囚の長男らが明かす「加害者家族」の胸の内
オウム真理教教祖として地下鉄サリン事件を首謀し、2018年に死刑執行された麻原彰晃の三女・松本麗華さんが5日、東京都渋谷区で行われたトークイベント「『加害者家族』と共に生きる社会」に出演した。
イベントの冒頭では、自身を取り上げた昨年公開のドキュメンタリー映画『それでも私は Though I'm His Daughter』が上映され、終了後、広島連続保険金殺人事件犯の長男・大山寛人さん、和歌山カレー事件・林眞須美死刑囚の長男・林浩次さん(仮名)、『それでも私は―』の長塚洋監督とともに登壇。事件当時11歳(父の逮捕時は12歳)で、宗教名「アーチャリー」としてメディアに取り上げられることも多かった松本さんが、加害者家族として苦しんできた半生と、その胸の内、考えなどを語った。
「被害者になる、被害者家族になることは(報道で知っても)想像できて感情的になるんですけど、双方になる可能性があって、私も12歳の時に加害者家族になるなんて思ってなかったです。その後31年間こういう風になると思ってなかったですし、父が死刑執行されるとも思ってなかった。でも、なってしまった、そういうことがあり得るんだということが想像されるようになったら変わってくるかなと思います」
犯罪被害者への同情や悲しみは誰もが抱くが、加害者家族の心情にまで想像を働かせる人は決して多くないだろう。ましてや、まだ分別のつかない少女が加害者家族としてひとくくりにされ、その後の人生を差別や偏見にさらされながら生きていかなければならないことは見落としがちではないか。
「私は父を含めて13人が死刑執行されているんです。みんな友人であり知人であり、明るくチャーミングでユーモアのある人だったりするんです。私がこうやって生きてこられたのも皆さんに支えていただいたおかげで、すごく温かく見守ってくださった。執行されてしまったお兄さんたちも“お前の人生だけ考えろよ、俺たちになんて会いに来なくていいからな”と言ってくれて、いつも私のことを第一に考えてくれました。ひどいことをできてしまうのも人間だし、優しくなれるのも人間だから、きっと加害者家族だからと言って差別されないようになると思って私は活動しています」
麻原彰晃には4女2男(計6人)の子供がいたが、松本さんは家族との関係性について「Twitter(現X)を松本宇未でやっている上の姉と、上の弟とは一緒にいますが、母や下の弟とは一切連絡を取っておらず、あとの家族とは離散しています」と明かした。加害者家族と言っても一枚岩であるはずがなく、大切であるはずのきょうだいでさえ離散してしまう辛い現実を打ち明けるのも、同じような思いをする人を少しでも減らしたいという気持ちからだろう。
「生きがいはまだ見つけられていない」
林さんはサングラスにマスク姿で登壇。「社会はそこまで寛容ではないので、この姿で活動しています」と話す。
1998年に和歌山市内で開催された夏祭りで提供されたカレーライスに毒物が混入され、4人が死亡した事件は世間を大きく騒がせた。母親の林眞須美死刑囚は冤罪(えんざい)の可能性も指摘されており、死刑確定後も再審請求中となっている。
「自分を卑下するような発言を人の前ではしないように気をつけているんですけれども、前提として、この人生に役目があるのか、親の死刑を待たされているだけの人生に意味なんかあるのかというのは今も常にあります。それをずっと抱えながら、生きがいみたいなものは正直まだ見つけられていないですね」
大山さんが2人と違うのは加害者家族でありながら被害者の遺族でもある点だ。2000年、父親が母親を風呂場で殺害し、水死を装うために港へ遺体を遺棄した事件があり、裁判で父親の死刑が確定した。
「誹謗(ひぼう)中傷に傷ついていた時期もありました。それを繰り返すことによって悲しむ感情が欠落していくというか、壊れていくというか。私は父の死刑を願わなかったので、母に対する罪悪感を常に持って生きてきました。母は僕を恨んでいると背負いながらバランスを取ってきたんです。そうじゃないと心が潰れてしまう。何が正解か分からない」
加害者家族はその多くが息をひそめるように暮らす。松本さんらの発信は世間の差別や偏見に一石を投じることになるか。
(左から)椎野礼仁さん、林浩次さん、松本麗華さん、大山寛人さん、長塚洋監督
