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子どもを産むなら離婚する――。新しい命を授かった喜びも束の間、夫から突きつけられたのは、あまりに非情な選択でした。切実な相談が、弁護士ドットコムに寄せられています。

相談者の女性は、結婚から1カ月も経たないうちに妊娠が判明しました。ところが、その報告を受けた夫の態度は一変。「早くおろせ」「認知もしない。養育費も払わない」と出産に強く反対するようになったといいます。

さらに、容姿を執拗に貶めるような人格否定の言葉を浴びせ、無断外泊を繰り返すようになり、「自分は父親ではない」など離婚を迫っているといいますが、相談者によれば、お腹の子は間違いなく夫との間にできたそうです。

結婚直後の妊娠というデリケートな時期に、配偶者から中絶を迫られたり、精神的に追い詰められたりするのは、法的にどう評価されるのでしょうか。

相談者は関係改善を望んでいますが、裁判になれば離婚は避けられないのでしょうか。離婚問題にくわしい林本悠希弁護士に聞きました。

●「嫡出推定」とは

──結婚後まもなく妊娠が判明した場合、夫は父親と認められないのでしょうか。

結婚後まもなく妊娠が判明したとしても、ただちに「夫の子ではない」となるわけではありません。

民法上、婚姻中に懐胎(かいたい=妊娠すること)した子は夫の子と推定されます(いわゆる嫡出推定)。また、婚姻前に懐胎した子であっても、婚姻成立後に生まれた場合には、夫の子と推定されます(民法772条1項)。

●DNA鑑定で父子関係が否定されれば推定は覆る

ただし、嫡出推定が及ぶ場合でも、DNA鑑定などで父子関係が否定されれば、法律上の父とは認められません。

今回のケースで重要なのは、民法上の嫡出推定が及ぶかどうかではなく、実際にその子が夫の子であるかどうかという事実関係でしょう。

双方が納得するためにも、可能であれば早期に出生前DNA鑑定をおこなうことが一つの解決策になると思われます。

●DNA鑑定で「夫婦の子」と判断→夫に不利な事情に

──裁判になった場合、離婚が認められる可能性はありますか。

夫からの離婚請求が裁判で認められるためには、民法770条が定める離婚事由が必要です。

結論としては、これもDNA鑑定の結果次第になるでしょう。妊娠中の子が夫婦の子であれば、妻は何ら責められることをしたわけではありませんから、他の事情も含めての総合判断にはなりますが、夫からの離婚請求が認められる可能性は低いように思います。

また、夫婦の子であると判明した場合、夫が妻に浴びせた罵倒や離婚請求は、まったくの勘違いによるものだったことになります。これらの事情は、離婚裁判において夫に不利な事情になると思われます。

●関係改善のためにも客観的証明が重要

相談者は関係改善を望んでいるとのことですが、夫の言動を見る限り、夫は、科学的に親子関係が証明されない限り、納得しないと思われます。一刻も早くDNA鑑定を実施することが重要だと思います。

DNA鑑定で夫婦の子であることが明らかになったとき、夫がこれまでの言動を真摯に反省し、謝罪することができるかどうか──。そこで初めて関係改善への一歩が踏み出せるのではないでしょうか。

【取材協力弁護士】
林本 悠希(はやしもと・ゆうき)弁護士
大阪大学高等司法研究科卒業、2018年弁護士登録、大阪弁護士会所属。2021年1月P&M法律事務所を設立。離婚・男女問題、交通事故、相続・遺言、刑事事件などに注力。弁護士になる前は歌手を目指していた。
事務所名:P&M法律事務所
事務所URL:https://pandmlo.com/