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いろんなパーツを巻いて挟んで

タイヤメーカーのエンジニアの方と話をしていると、わりと頻繁に『組み立てる』という言葉が出てきます。

黒くてツルンとしていて、円いドーナツのような形のタイヤの、どこを組み立てるのだろう? 最初にその言葉を聞いた時には違和感しかなく、そう思う一方で、組み立てるというのだから、何かを組み立てているはずで、さて、どこをどう組み立てるのだろう? なんて疑問も沸いてきたのでした。


タイヤってゴムでできている、というのはわかるのですが、その製造工程って?(写真はイメージです)    AUTOCAR JAPAN

思い返すと多分それが、ボクがタイヤに興味を持った理由のひとつになっているのだと思います。

ある時、タイヤ工場を見学できる機会があって、組み立てる様子を見ることができるぞと喜び勇んで行ったのですが……。

考えて見れば当たり前の話なんですが、生産性第一で作られた工場の生産工程を最初から順を追って見られるはずもなく、飛び飛びに、あるいは前後の工程を逆の順で見て、頭の中は大混乱。順番がバラバラになった紙芝居を、ストーリーを理解しようと一生懸命見ている……、そんな状態でした。

確かにいろんなパーツが集まってきて、張り付けたり巻き付けたりしているうちに、なんとなくタイヤになるらしい物体が出来上がっていて、でもそれはボクが知っているタイヤの形とは似ても似つかない樽型の物体で。それをお釜と呼ばれるモールディングに入れて挟んで、暫くするとあら不思議、ボクの知っているタイヤがゴロンと出てくるのでした。

これだけでは、全然タイヤの製造工程の説明になっていないので、もうちょっと整理してみたいと思います。

バンバリーミキサーで混ぜます

タイヤ製造の最初の工程として挙げられるのは、コンパウンドのミキシングです。『混錬』と呼ばれる、材料を混ぜ合わせる工程で、この機械にはいくつかの種類があるようですが、ボクが説明されたのはバンバリーミキサーというものでした。ちなみにバンバリーはこの機械を発明した人の名前らしいです。

イメージとしては、コンクリートミキサーのミキサー部分を縦に立てたようなサイズ感とカタチでした。ここに材料を入れて、密閉したチャンバーの中でローターが回転し、ゴムに強い力を加えながら練る工程です。


主材料のゴムコンパウンドに様々な添加物を配合していきます(写真はイメージです)。    田中秀宣

主な材料は、合成ゴム、天然ゴム、カーボンブラック、シリカ、オイル。これでゴムコンパウンドのほぼ8割を占めます。

あとは充填剤やゴムに強度を与える加硫剤(≒硫黄)、老化防止剤を始め、様々な添加剤が配合されます。

ふと思ったのですが、スタッドレスタイヤで配合されている吸水材とか引っ掻き材などもこの段階で配合するんですね。

これらを混ぜ合わせるわけですが、ゴムはほぼ固まりで機械にかけられ、ほかの材料をとともに練っていくわけで。まんべんなく分散させて密度が均一になるように行う混錬工程って、すごいノウハウが必要ですよね。

最新のスタッドレスタイヤは、微粒シリカを、カップリング材というものを使ってポリマー(ゴム)と結びつけるんですが、いまさらながらにすごい技術だなあと感心させられます。

で、そうやって混錬されコンパウンドの素は、まずはシート状にされます。

その後、タイヤサイズに合わせて押し出し機に入れられ、トレッドブロック分の厚みを持ったトレッドの素が出来上がります。

コンパウンドを支える骨格部分

様々な材料を混ぜ合わせてコンパウンドを作っている一方で、タイヤの骨格となるカーカスも作られます。

ナイロンやポリエステルの原反をカレンダーと呼ばれる機械に送り込んで、表裏にゴムをコーティングします。この工程をカレンダー工程と言います。この工程を経て作られたカーカスをタイヤのサイズに合わせて裁断します。


スチールベルトに関しては、連載第1回をお読みいただくととてもよくわかります。    きざわるみ

同様に、スチールベルトも、並べたスチールコードの表裏に薄いゴム層を貼り付け、これをある角度になるように裁断します。

この角度がスチールコードの角度になるわけです。以前、この連載の初回(【第1回】サイトウサトシのタイヤノハナシ:スチールベルト コードの角度って?)で触れましたが、この角度がタイヤの応答性に大きくかかわっているのです。

さらに、別の製造ラインで、ビード部が作られます。ピアノ線を複数本巻いて丸く束ねたワイヤーにゴムをコーティングしてビードワイヤーを作ります。これにボードフィラーとなるゴムを組み合わせてビード部となるわけです。

ビード部は、ホイールに組み付けら時に空気漏れなくタイヤとホイールを固定させる部位。ホイールにぴたりと篏合させるために精度の高さが求められるパーツでもあります。

こうやってタイヤを構成するパーツが集まって、いよいよ組み立てに入るわけです。

サイプが細かいと思わぬ苦労が

まずは、成型機の上にタイヤサイズに合わせて裁断されたカーカスが巻かれ、その上に同様にサイズに合わせたスチールベルトが2枚巻かれ、タイヤによってはキャップレイヤーなどと呼ばれる補強ベルトコードが巻かれます。最後にトレッドの素が巻かれます。

組み立てたパーツを張り合わせ、タイヤの原型にする工程を成型と言います。これが、知っているタイヤの形とかけ離れているので、とても不思議な感じがするのです。


こうして完成したタイヤが私たちの元へ。そう思って見ると感慨ひとしおです。(写真はイメージです)。    中島仁菜

成型後タイヤは金型に入れられます。この金型はモールドと呼ばれています。

金型の内側にはトレッドデザインの凹凸がつけられており、中でタイヤの内側から風船(のようなもの)が膨らみ金型にタイヤを押し付けます。そのまま高温で数十分熱を入れる工程で、硫黄がゴムと反応して強度を増します。この工程が加硫です。このあたりはわりとよく聞く話ですよね。

所定に時間になるとタイヤはモールドから外されるのですが、モールドは7分割とか8分割になっていて、油圧で開きます。サマータイヤだとなんてことない工程(?)なのですが、スタッドレスタイヤで細かなサイプがたくさん入ったタイヤだったり、サイプの形が複雑だったりすると、タイヤからサイプの歯(ブレード)を引き抜くのにものすごいトルクが必要だったり、場合によってはブレードが折れてしまったりするのだそうです。トレッドデザインを設計するときには、そのあたりも考えながらモールドを作らなければいけないのだとか。

ここで初めて、今まで見て知っていた形のタイヤが現れるわけです。

この段階ではまだタイヤにヒゲがたくさん生えていて、タイヤ出来たて感満載です。このヒゲはスピューと言って、金型に押し付けた時のエア抜き穴からはみ出たゴムです。

というのがタイヤの製造工程です。皆さんもチャンスがあったらタイヤ工場見学してみてはいかがでしょう。ざっとタイヤ製造の流れを知っているとより面白く見ることができると思います。