皇族を維持するための養子案は「合理的区別」、差別ではない…日大名誉教授・百地章氏
[論点 皇位継承]<7>
皇室の方々は16人まで減っており、女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する案と、旧宮家の男系男子を養子として皇室に迎える案で与野党が大筋合意したことは大変意義深い。
私は、皇位継承資格は男系男子に限るべきだとの立場だが、皇室の公的活動や国民との触れ合いが今後も続いていくためには、性別の区別なく男子も女子も大切な存在だと考えている。
現行制度では将来、秋篠宮家の長男悠仁さま(19)に皇室の務めが集中してしまう。天皇家の長女愛子さま(24)や秋篠宮家の次女佳子さま(31)らが残られれば、悠仁さまも心強く思われるだろう。
皇族の女性と結婚した民間人の夫と子を皇族とした前例はなく、認められないとする自民党などの主張は妥当だ。配偶者らを皇族とすれば、(母方のみ天皇の血を引く)女系天皇の誕生につながりかねない。
一方の養子案を巡っては、旧宮家に養子の希望者がいるのかと疑問視する声があるが、杞憂(きゆう)ではないか。
私は旧華族などの文献調査や関係者からの情報を基に、1947年10月に皇籍離脱した旧11宮家の家系図を作った。30歳以下の未婚の男系男子は今年4月時点で、少なくとも東久邇(ひがしくに)家に6人、賀陽(かや)家、竹田家にそれぞれ2人、久邇(くに)家に1人の計11人いた。
いずれも、現在の皇室と約600年前の祖先が同じ伏見宮家の系統で、現憲法下でも79年前に約5か月間皇族だった方の子孫だ。旧宮家の関係者の話では、ある旧宮家の男性は養子の打診があれば皇統を守るために応じる意向があると聞いている。
先例もある。平安時代の宇多天皇は約3年間、皇室を離れて源姓を名乗った後に皇太子となり、その後即位した。皇籍を離れていた時に生まれた、子の醍醐天皇も復帰して天皇となっている。
養子案は憲法が禁止する「門地による差別」に当たるとの指摘もあるが、この規定は国家と国民の関係を定める第3章にある。皇位は世襲と定めた第1章が対象とする皇室は適用外だ。
また、憲法は社会通念からみて合理的な区別は禁じていない。皇族数が減少するなか、皇室を維持するために養子を迎えるのは区別にあたり、差別ではない。
今回の対応は、皇室の危機を受けた特別な措置で、両案とも恒久化せず、時限立法の特例法とすることが望ましいだろう。悠仁さまの結婚などを考えると、養子を迎え入れる期間は20〜30年とするのが適切だ。
憲法は天皇の地位を「日本国民の総意」に基づくと定める。国民の幅広い理解を得るため、与野党や政府は知恵を絞ってほしい。
