くら寿司が養殖しているマサバ(同社提供)

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 サバの価格が高騰している。

 地球温暖化や乱獲を背景に、国内の水揚げが減少しているのに加え、最大の輸入先であるノルウェー産の漁獲枠がほぼ半減したことで、今年に入って最高値を更新した。「庶民の魚」が高嶺(たかね)の花となりつつある中、卵から人工孵化(ふか)させる完全養殖への期待が高まっている。(相間美菜子)

 総務省の小売物価統計調査によると、大阪市内にあるスーパーなどの小売店のサバの平均小売価格(100グラム)は、140円前後で推移していたが、昨年12月から上がり始め、今年2月には1991年の調査開始以来、最も高い185円に達した。

 資源保護のため、輸入の半分を占めるノルウェー産の今年の漁獲枠が、昨年のほぼ半分の約8・4万トンに制限されたことが大きい。国内の漁獲量も減少傾向にあり、2024年は約25・6万トンと、ピーク時(1978年)の2割以下の水準にとどまっている。

 生鮮のサバだけでなく、加工品も値上がりしている。はごろもフーズは来月1日の出荷分から、サバの缶詰4品目の参考価格を税別275円から335円に引き上げる予定だ。

 東京大の八木信行特命教授(漁業経済学)は「過剰な漁獲や温暖化の影響といった複合的な要因が、漁獲枠の制限につながっている。世界的に魚の需要が伸び、日本が円安で買い負けしていることも高騰の原因の一つだ」と説明する。

 こうした中、安定的な調達先として注目されているのが完全養殖だ。回転寿司(ずし)チェーンの「くら寿司」は今月15日、大阪、京都両府内の計75店舗で、完全養殖のマサバを使ったにぎり寿司(2貫税込み350円)の提供を始めた。なくなり次第終了する。

 同社は愛媛県宇和島市で24年にマサバの養殖を始め、エサの量やタイミングをAI(人工知能)で管理することで、約5000匹を一般的なサバの3倍近い700グラムを超える大きさに育てることに成功した。28年までに年間2万匹の出荷を目指すといい、担当者は「手が届かなくなりつつあるサバをリーズナブルに楽しんでもらいたい」と話す。

 一方、海水が高温化している影響で養殖サバの大量死が発生しており、対応する動きも出てきた。

 地下水を活用した養殖事業を手がける「タシマボーリング」(鳥取市)は、海岸近くを掘削してくみ上げた海水を使い、陸上養殖したサバを23年から販売している。真夏でも低い温度が保てるといい、田島大介社長は「海洋環境の悪化で陸上養殖の需要は高まっている」と語る。

 かつてサバの一大産地だった福井県小浜市では、県立大や市内の漁業者らが連携し、味が良いマサバと暑さに強いゴマサバを交配させた新たな人工種苗の開発を進めている。