「自衛隊員3人死亡」の悪夢…最新鋭の“安全設計”を誇る陸自「10式戦車」はなぜ暴発事故を起こしたか 真相究明のカギを握る“3文字”の安全装置とは
「私の経験の範疇では砲塔内で弾薬が破裂したということは記憶にない」──陸上自衛隊トップの荒井正芳陸上幕僚長がこう説明したのは、4月21日の臨時記者会見だった。この日、大分県の「日出生台(ひじゅうだい)演習場」で西部方面戦車隊の10式戦車が実弾射撃訓練を実施。敵車両の装甲を破壊する120ミリ対戦車榴弾を撃っていたところ、うち1両の戦車内部で爆発が発生。隊員3人が死亡し、1人が重傷を負った。陸自をめぐっては、12日に開催された自民党大会において、中央音楽隊の鶫真衣(つぐみ・まい)3等陸曹が制服姿で国歌斉唱したことが問題視されたばかりだった。(全2回の第1回)
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【実際の写真】美貌も注目される「自衛隊の歌姫」(38)。自民党大会での国家歌唱が物議を呼ぶことに。
事故直後、現場からは「砲塔内で砲弾が破裂した」と報告があったという。荒井幕僚長は2012年に第2戦車連隊長を務めるなど、戦車のスペシャリストとして知られている。

その荒井幕僚長が「前代未聞の事故」と言及したのだから、陸上自衛隊が受けた衝撃と混乱を象徴した発言と言っても過言ではないだろう。新聞のデータベースを調べても、類似の事故が全く検索されないのは事実だ。
軍事ジャーナリストは「陸上自衛隊だけではなく、戦車を運用している全世界の軍隊を対象に拡げても、類似の事故は思い浮かびません」と言う。
「戦車の“砲身”が爆発して木っ端微塵になったというのなら理解できます。陸上自衛隊でも戦車の砲身が土手を削ってしまい、中の戦車隊員が気づかずに発射したことがありました。当然ながら砲身の中で砲弾が爆発してしまい、砲身は粉々になったのです。それでも戦車の中にいた隊員は無傷でした。なぜなら閉鎖機という安全装置があるからです。10式戦車が砲弾を発射する際、砲弾は自動的に装填され、閉鎖機も自動的に閉じられます。これで砲身は完全に密閉されます。砲弾を撃つとガスが発生しますが、そのガスが漏れ出すことも閉鎖機は防ぎます。つまり、たとえ砲身で砲弾が爆発する事故が発生したとしても、閉鎖機が閉じていれば戦車隊員が死亡するような事態にはならないのです」
焦点の一つが閉鎖機
閉鎖機の話を進める前に、戦車の弾薬庫も見ておこう。弾薬庫が誘爆すれば大変な被害が発生することは言うまでもない。
「弾薬庫で爆発が起きることに備え、西側第3世代以後の戦車、つまり自衛隊の戦車も『ブローオフパネル(破裂板式安全装置)』が備え付けられています。弾薬庫を厚い装甲で守るのは当然ですが、それでも弾薬庫が誘爆することはあり得ます。そのため弾薬庫の天井はわざと外れやすくしているのです。10式戦車の弾薬庫が爆発したとしても、すぐに屋根が吹き飛んで爆発のエネルギーを戦車の外に放出します。一方、例えばロシアの戦車にブローオフパネルはありません。そのため弾薬庫が爆発すると砲塔部分が吹っ飛んでしまい、戦車隊員にも被害が生じます。ここで整理してみますと、自衛隊の戦車はたとえ砲身が爆発しても、弾薬庫が誘爆しても、車内にいる戦車隊員は負傷しない設計になっているのです」(同・軍事ジャーナリスト)
10式戦車の安全設計に問題があったとは考えにくい。なぜなら10式戦車は2011年から配備が始まったからだ。もし設計に問題があったなら、もっと早く事故が発生したに違いない。
軍事ジャーナリストは「原因を推測できるだけの情報がないというのが正直なところですが、焦点の一つに閉鎖機があると思います」と言う。
不発弾の可能性
「閉鎖機が開いた状態で砲弾が爆発したなら、3人の隊員が亡くなり、1人の隊員が重傷を負うという深刻な事故になったのも頷けます。では閉鎖機を開けなければならない状況とは何か。仮に不発弾が砲身の中で止まったとしたら、閉鎖機を開いて砲弾を取り出す必要があります。滅多に起きない事例のはずですが、可能性はゼロではありません。その際、何らかのトラブルが発生して砲弾が爆発すれば、爆発のエネルギーはまともに戦車内部を直撃します。甚大な人的被害が発生しても不思議ではありません」
富士総合火力演習をご存知だろうか。この演習では戦車による実弾射撃が行われ、一般公開も行われるため関心が高い。第2回【4人死傷の陸自“暴発事故”が6月開催の「富士総合火力演習」に与える深刻な影響… 専門家は「不具合が見つかれば全ての10式戦車を検査する可能性」を指摘】では、大分県の事故が富士総合火力演習に与える意外な影響についてお伝えする──。
デイリー新潮編集部
