ポルシェ911 ターボ レースから生まれた930 トルクの山が乗り手を向こう見ずに惹き込む ターボ! ブースト!(5)
モータースポーツの産物だった930ターボ
3.2Lエンジンの911 カレラRSでも、大きく引き離されることはないはず。それでも、930型ポルシェ911 ターボの加速は、すべてを置き去りにするような威勢がある。
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右足を倒すと、ヒュッーという響きとともにブーストが増し、アフターバーナーのようにトルクが開放され、後ろから強く蹴り出される。4000rpmで一層エネルギーが高まり、タコメーターが霞む勢いでシートへ背中が押し付けられる。

ポルシェ911 ターボ(930型/1974〜1989年/英国仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
レーシングカーに似た排気音は、偶然ではない。1973年に発表された930型は、ポルシェのモータースポーツ活動の産物として誕生している。
1972年のアメリカ・カンナムシリーズで、1000psの水平対向12気筒ツインターボエンジンを積んだ、ポルシェ917/30レーサーは大活躍。これを受け、1974年には911 RSRがターボ化され、グループ4へ挑戦し目覚ましい結果を残している。
高級グランドツアラーとして贅沢な装備も
このグループ4のホモロゲーション取得が、917/30へちなんだコードネームを得た、930型911を誕生させた。エンジンは、カレラRS 3.0用がベース。ドライブトレインやブレーキも同様で、サスペンションの構造とリアウイングは、RSR譲りといえた。
3.0L水平対向6気筒エンジンは、主任技術者のハーバート・アンフェラー氏率いたチームがチューニング。KKK社製ターボが最大0.8barのブーストを生成し、最高出力260psと最大トルク34.9kg-mを発揮した。

ポルシェ911 ターボ(930型/1974〜1989年/英国仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
燃料供給は、Kジェトロニック・インジェクション。圧縮比は6.5:1まで下げられ、扱いやすさを担保しつつ、アメリカの排出ガス規制にも対応している。
速いだけでなく、911 ターボは高級グランドツアラーという設定で、レザーシートにヘッドライト・ウオッシャーなど、贅沢な装備を用意。防音材も増やされた。
低域で扱いやすい水平対向6気筒ターボ
911ターボは、1977年に3.3Lへ拡大。ティートレイ・リアウイングの下にはインタークーラーが実装され、最高出力300ps、最大トルク41.8kg-mへ上昇している。917由来のブレーキとサーボも獲得し、強化クラッチでエンジンは30mm後方へずらされた。
エアコンと電動サンルーフ、レザーシートは標準に。車重は1200kgに増えている。それでも、フェラーリ512 BBiを0-400mダッシュで打ち負かす俊足を誇った。

ポルシェ911 ターボ(930型/1974〜1989年/英国仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
ガード・レッドのワイドボディが象徴的な、ジャロッド・エリス氏が所有する1台は、1981年式。オプションだったリミテッドスリップ・デフと、快適でクッションが特徴的な、通称「ドクター・フールマン」シートが載る。
前が205mm、後ろが225mmの幅を持つピレリPゼロタイヤには、明らかなキャンバー角が付いている。ステアリングにはアシストがなく、通常のカレラより重い。ペダルはオルガン式で踏みやすく、水平対向エンジンも低域で扱いやすい。
乗り手を向こう見ずに惹き込むトルクの山
ミラーを覗くと、膨らんだリアフェンダー。サスペンションは引き締められ、乗り心地は硬め。頼もしいグリップ力と、速さへ比例するしなやかさが、スピードを渇望させる。
レーシングカーの917譲りのブレーキは、繊細にフィードバックを足裏へ伝えつつ、確実に速度を殺す。右足を蹴飛ばせば、ステアリングが僅かに軽くなり、慣性が身体を押さえつける。2速で引っ張れば、145km/h。地平の彼方へ突入するようだ。

ポルシェ911 ターボ(930型/1974〜1989年/英国仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
4000rpmで到来するトルクの山が、乗り手を向こう見ずに惹き込む。「未亡人製造機」とも呼ばれたことにうなずける。正確な操縦が、自身と充足感へ繋がる。この実力へ、畏敬の念を抱く人も多かった。
フラッグシップ・グレードと同義語に
930型911 ターボの生産は1989年まで続き、「ターボ」の高性能ぶりは広く浸透。その後、ポルシェのフラッグシップ・グレードと同義語になった、といっても過言ではない。
1978年には、FRのポルシェ924 ターボが登場。1987年にはツインターボで四輪駆動のスーパーカー、959も発表されている。911は993型、996型へ進化を重ね、豪華さと同時に限界領域は引き上げられ続けた。

ポルシェ911 ターボ(930型/1974〜1989年/英国仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
ワイドボディに派手なリアウイング、吸い込まれそうなエアインテーク。最新のポルシェ911 ターボSも、その伝統は受け継ぐ。ポルシェのターボこそ、実環境で最速のスーパーカーだといっても、AUTOCARの読者なら納得していただけるはず。
ポルシェ911 ターボ(930型/1974〜1989年/英国仕様)のスペック
英国価格:3万1590ポンド(新車時)/20万ポンド(約4200万円)以下(現在)
生産数:2万652台
全長:4291mm
全幅:1775mm
全高:1311mm
最高速度:260km/h
0-97km/h加速:5.1秒
燃費:5.8km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1335kg
パワートレイン:水平対向6気筒3299cc ターボチャージャー SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:300ps/5500rpm
最大トルク:41.9kg-m/4000rpm
ギアボックス:4・5速マニュアル/後輪駆動
この続きは、ターボ! ブースト!(6)にて。

ポルシェ911 ターボ(930型/1974〜1989年/英国仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
