目黒蓮はなぜ“不遇”の役を演じられるのか 『ザ・ロイヤルファミリー』を動かす役割に
日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)は第4話となり、謎のキャラクターだった目黒蓮の役が、山王耕三(佐藤浩市)の隠し子・中条耕一であることが明かされた。
参考:『ザ・ロイヤルファミリー』“謎の男”に目黒蓮をなぜ抜擢? 加藤章一Pに聞く撮影秘話
ここまで、妻夫木聡演じる栗須栄治がドラマを牽引し、山王家一家が経営するロイヤルヒューマンの後継者争いと競走馬たちの血統と育成、それぞれの「継承」の物語が紡がれてきた。視聴者としては、すっかり馬への愛が芽生え、山王ファミリーへの興味が醸成されてきた中で、嵐を起こしそうな新キャラクターの登場となった。
第4話のラストシーンに登場した目黒の姿はやはり印象的だった。病院で、気弱で可憐そうな母を優しく見舞う姿には、誰もがいきなり胸を掴まれただろう。目黒はアイドルとしての華やかさを封印して、飾らない服装と髪型、黒縁メガネ姿ではあったものの、やはりその高身長と端正な顔立ちは隠しきれない。理想の息子そのものといった風貌に目を奪われてしまう。しかも、「隠し子」という不遇さを思えば、そこに生まれる感情は「不憫」でしかない。抑えた表情の中には影も感じて不安な気持ちにもなる。
ほんの数分間の登場だったのにも関わらず、ここまで人を惹きつける目黒蓮という俳優の存在感を再確認した。
目黒蓮といえば、言わずと知れた人気アイドルグループSnow Manのメンバーだが、元々はデビューもできないのではないかと言われたほどの不遇の時代があったという。
「先輩のバックの、しかも後ろの端にずっといて。本当に誰からも見られないようなところで、誰からも求められずにやってきた期間が長くて」(※1)
今の活躍ぶりからは想像もできないが、確かにアイドルとしては遅いデビューでもあり、苦悩した時間も長かったということなのだろう。
しかし、この時間こそが俳優としての目黒を育てたのかもしれない。目黒が演じてきた青年たちは、不器用だったり奥手だったり、あの堂々たる容姿に対してずいぶん繊細で謙虚な役柄が多かった。
代表作となった『silent』(フジテレビ系)では、若年発症型両側性感音難聴を患い、そのことを気に病んで恋人と別れる佐倉想を演じた。初回放送で、恋人・青羽紬(川口春奈)と再会した時の涙は、抑え込んでいた感情が湧き出てしまった一瞬を鮮やかに表現していて、一気に想の世界に引き込まれた。その涙は、演技というより本物に見えたし、現実に悲しかったり悔しかったりしたことがあった人にしか流せないもののように感じた。
稀有な俳優の誕生は、目黒が不遇のアイドルだったことによっているのに違いない。
一方で、目黒は、『トリリオン・ゲーム』(TBS系)で演じたハル(天王寺陽)ような“チャラい”役もお手のものだ。こちらは、見ていて痛快なほど、アイドルらしい輝きと魅力を振りまいてくれて気持ちが良い。目黒は、こういった役は「僕とは真逆のキャラ」だとしつつ、こうも話している。
「ただ、ハルが成り上がっていく姿には、自分の背景を重ねます。ジャニーズJr.の頃は、『ドラマで主演をやってやるぜ』とか大きな目標を言えるような状態ではなかったですけど。ただ、そういう大きな目標にたどりつくためにはどうしたらいいのか、ひとつひとつ掲げた目標を遂げながら、ずっと考えてきました。掲げた目標を必ず達成するという気持ちは、ハルと同じくらい強く持っています!」(※2)
調子に乗ったような軽さのある役も、今の目黒には案外ハマっていると感じたが、それは努力があったからこそだった。やはりそこにもアイドルとしての下積みが裏打ちとなっていた。
さて、『ザ・ロイヤルファミリー』のチーフ演出・塚原あゆ子と目黒とは、2度目のタッグとなる。前作は、映画『私の幸せな結婚』(2023年)だ。この作品は『silent』以前に撮影されており、目黒の俳優人生にとって重要な作品だったようだ。
「今でも塚原さんから教えてもらったことが、自分のお芝居の土台になっているというか。目線とか表情とか、そういう細かいテクニックから、お芝居に向き合う姿勢まで、塚原さんから学んだことは大きくて」(※3)
本作は、幻想的で壮大な世界観を持つ和風ファンタジー。目黒は、「異能」と呼ばれる特殊能力を持った孤独の軍隊長・久堂清霞を演じている。青白い顔に銀髪、凛とした和服や軍服姿が美しく、見事なアクションもあって、大きな話題となった。
無表情で冷酷だった清霞が、「異能」の家同士の政略結婚という形で美世(今田美桜)と出会い、愛情が芽生える過程で、次第に声が柔らかくなり、眼差しが温かく変化していく。繊細で穏やかな表現と激しい面の緩急が見事で、男の強さと弱さの両方を表現できる俳優として地位を確立したのではないだろうか。
俳優・目黒蓮を作ったといっても過言ではない塚原監督と、『ザ・ロイヤルファミリー』では、どんな面を見せてくれるのか。ピュアだけではない陰も感じる役に、今から期待がふくらむばかりだ。
参照※1.https://hochi.news/articles/20241231-OHT1T51124.html?page=1※2.https://topics.tbs.co.jp/article/detail/?id=18798※3.https://press.moviewalker.jp/news/article/1129307/
(文=尾崎真佐子)

