苦い経験も「結果的に過程でしかない」。札幌復帰の鈴木武蔵が思い描く成長曲線。「ここから行くぞという気持ちです」
元々そこまでグイグイ引っ張っていくキャラクターではないが、2月に30歳となる年齢でもあり、リーダーシップを取って行きたい思いはあるようだ。ただ、それは自分を変えるということではない。
「年齢的にも立場的にも、もう少し引っ張っていかないといけないですけど、自分のパーソナリティというかオリジナリティを忘れずに、いつもと変わらずやれたらと思います」
「荒野拓馬とかも、ずっとコンサドーレでやってきて、今は本当にコンサドーレに欠かせない選手になっていますし、中村桐耶とかもすごく成長しているなっていう印象です」
同じ時期、鈴木にとって良い経験ばかりではなかった。むしろ結果から見ればネガティブな部分が大きいかもしれない。ベルギーのベールスホットで10番を背負い、1年目はまずまずの成績を残したが、翌シーズンは1得点に終わり、チームも2部に降格してしまった。ガンバ大阪ではエース候補として期待されながら、2年間で2得点。昨シーズンの後半戦はベンチ外になることもあった。
そうした苦い思いを本人も否定しない。それでも「自分にとってそれがネガティブな経験であっても、結果的に過程でしかないので。人生の通過点だと思って過ごしています」と語る。それをポジティブなものにしていくには、ここからの結果しかない。そのために札幌に戻ってきたと言っても過言ではないのだ。
一般的にサッカー選手は20代の後半がピークで、30代は下り坂と言われる。実際にそこでユニホームを脱ぐ選手が多いのも現実だ。しかしながら、ここでもひと伸び、ふた伸びして栄光を掴む選手も増えている。たとえば川崎フロンターレで攻撃の中心を担い、2018年に32歳でMVPに輝いた家長昭博がその一人だ。
「もちろん全然、30から目ざすところに行きたい。家長さんであり、ベンゼマも30過ぎてバロンドールを獲ったり。やっぱり経験と成熟さという部分が良い方向に行く場合が多々ある今のサッカー界なので。ここから行くぞという気持ちです」
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鈴木が札幌で13得点を記録した2019年は、ジェイ、チャナティップとのトリオが対戦相手の脅威になった。当時は主にシャドーだったが、その二人はすでにおらず、小柏剛もFC東京に移籍した状況で、ミシャことミハイロ・ペトロヴィッチ監督は鈴木を主に1トップで起用する方針のようだ。
大卒2年目の大森真吾や韓国人FWのキム・ゴンヒもいるが、俊足に経験値を加えたストライカーにかかる期待は大きいだろう。
1トップでは「収めるところでしっかり収めて、味方を使いながら上手くチームの中でボールが回るように、前線の起点だったりを意識してやっています」とのことだが、やはり求められるのは得点だ。チームの得点力を高めながら、自分のゴール数も増やしていく。実際、簡単なことではないが、札幌の攻撃力には鈴木も自信を持っている。
「ビジョンの共有はどのチームよりもできると思うし、だからこそチャンスはリーグ内でトップだと思う。そこの共有と、個人の能力をどう付けていくか。コンサがさらに攻撃的なチームになりうる要素かなと思います」
鈴木と言えば、2011年にU-17ワールドカップでベスト8に進出した“94ジャパン”のメンバーでもある。同じ札幌には深井一希もいるが、中島翔哉(浦和)や南野拓実(モナコ)、喜田拓也(横浜)など、それぞれが色々な経験をしながら頑張っている。
「なるべく長く、みんなに負けないように活躍できればなと思いますし、拓実なんかも代表で素晴らしい活躍をしてますし、そういうのはすごく刺激になります」と語る鈴木がここから、どういうキャリアを描いていくのか。
このオフは札幌のレジェンドである小野伸二など、時代を築いてきた多くの選手が引退を表明した、1つのサイクルの変わり目でもある。
「若い子も良い選手が出てきてますけど、20代の選手もまたもうひと伸びして、現役でその時代のサッカー界を築けたらと思います」
そう語る鈴木武蔵と札幌の2024シーズンに注目だ。
取材・文●河治良幸
