脳科学者・中野信子から学ぶ、“運のいい人”になるために今日からできること
「もっとキャリアアップしたい」「もっと洗練されたオトナになりたい」「もっとモテたい」
そんな上昇志向が強いオトナのために、東カレ編集部が厳選した“ワンランク上の自分になれるための本”を紹介します。
最近活字離れが進んでいる貴方も「5分だけ」読んでみてください!
今回、ご紹介するのは、『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』中野信子著(サンマーク出版)。
▶前回:人生100年時代。どうせ長生きするなら、思いっきり楽しみたい人が今からできるコトとは

▼INDEX
1. 運がいいってどういうこと?
2. 運のいい人は、自分を大切に扱う
3. 運のいい人は「自分は運がいい」と思い込む
4. 運のいい人はプラスの自己イメージをもつ
5. 本書のココがすごい!
1. 運がいいってどういうこと?
世界的企業であるパナソニックの前身・松下電気器具製作所を創業した松下幸之助氏は、採用試験で必ず最後に聞く質問がありました。
それは「君は運がいいか?」というもの。
そして「はい、運がいいです」と答えた人のみ採用したという話を知っている人は多いでしょう。
自分のことを「運がいい」と思っている人は少しぐらいの逆境でもあきらめたりせず、真正面から立ち向かい乗り越える力があります。それは、「自分は運がいいので絶対大丈夫」と信じているからです。
松下幸之助氏のこの質問からもわかるように「運」は、必ずしも、その人がもともともっていたり生まれつきで決まっていたりするものではなく「その人の考え方と行動パターン」で変わるといえます。
運がいい人には、共通した考え方や行動パターンがある。つまり運はコントロールできるものなのです。
このような考え方のもと、この本では「運を良くする」考え方や行動パターン、振る舞いを脳科学的見地からつきとめて、自分の脳を運のいい脳にするためのヒントを紹介しています。
運というのは、一見非科学的なものなので、科学者が運を扱うのは不思議な感じがするかもしれません。
運・不運というのは、だれの身にも公平に起きていて、その運をどう生かすかに少なくとも人は主体的にかかわっていける、というのが私の考えです。
まず、運・不運がだれの身にも公平に起きている、ということを考えてみましょう。
数学の理論にランダムウォークモデルと呼ばれるものがあります。
たとえばコインを投げたときに、表が出たらプラス1進み、裏が出たらマイナス1進む、と決めておきます。
実際にコインを1万回投げ、その結果を座標軸に落とし込むということをします。すると、結果が完全にゼロのところに落ち着くということは、実はほとんど起きません。

およそプラスのほうに200〜300、マイナスのほうに200〜300くらいの結果になることが多い。また、1万回すべてがプラス、あるいはマイナスということもめったに起きません。
運もこれと同じようなもの。
人の一生にはおおよそ半々の運・不運があるように考える人も多いかもしれませんが、ランダムウォークを仮定すると、人生という限られた期間における目の出方はある程度はどちらかに偏ってしまいます。
しかし、圧倒的にプラスだとかマイナスだという人も存在しないといってもいいくらい、めったにいるものではありません。
さらに、脳科学的にみると、マイナスがしばらく続くと不運、プラスが続けば幸運ととらえてしまう特性が人間にはあります。
私たちの脳には、実際はランダムなのに、たとえばプラスが5回続いて出ただけで、プラスの連続が多すぎるように感じられる。脳はプラスやマイナスの連続が、偶然によって生じたにすぎない、ということをなかなか受け入れることができません。
つまり、運がいい、悪い、というのは脳がそうとらえているだけで、冷静に現象面だけを分析すれば、まったくの錯覚にすぎないということになります。
「そんなことをいっても、やっぱり運のいい人というのはいるし、自分もそうなりたい」という方のために、この本はあります。
それではなぜ、運のいい人と悪い人に分かれるようにみえるのか。
ごく大ざっぱにいうと、運がいい人というのは、だれにでも公平に降り注ぐ運をより多くキャッチできる人、また、より多くの不運を防げる人、あるいは不運を幸運に変えられる人だと考えられます。
運が悪い人というのはこの逆で、運を逃しやすく、不運をつかんでしまう人、あるいは不運を幸運に変えられない人、といえる。
運がいい人というのは「単に運に恵まれている」というわけではなく、運をつかみ、同時に不運を防ぐような行動、物事のとらえ方、考え方をしているのです。
そしてその行動パターンや考え方が、なぜ運をつかみ、不運を防ぐことにつながるのか。そこを探っていくと、科学的説明がつく行動パターンや考え方が意外に多く出てきました。
いつもの行動や考え方を少し変えたからといって、急展開で運がよくなることはないかもしれません。
しかし、毎日少しずつ、運をよくするための行動や考え方を積み重ねれば、今日よりはちょっといい明日が、明日よりはちょっといい明後日がきっとやってくる。そしていつか気づくと生き方が変わっている、同時に運が味方してくれるようになる。そう私は確信しています。
◆
今回は、本書のなかから、東カレ編集部がピックアップした、今日からでもできる、運をよくするための行動や考え方3つを紹介します。
2. 運のいい人は、自分を大切に扱う
以前、ナディーヌ・ロスチャイルドの著者『ロスチャイルド家の上流マナーブック』という本を読んだとき「ああ、やっぱり」と感じたことがありました。
ナディーヌ・ロスチャイルドは、もともとはフランス・パリの小劇場の女優でした。彼女は貧しい家庭に生まれ育ち、中学卒業と同時に家を飛び出し印刷所や町工場で必死に働きます。
やがて小劇場の女優となるのですが、大人気スターというわけでもなく、だれもが一目置く美人というわけでもありませんでした。
そんな彼女が、あるときロスチャイルド家の中心人物のひとりであり、世界の大富豪のひとりでもあるエドモン・ロスチャイルド男爵と出会い、結婚。美と贅沢の世界を手に入れるのです。
その世界は、彼女が幼いころから夢を見ていた以上のものでした。
彼女は、運を味方にした女性といえるでしょう。その彼女が著書で述べていたのが「あなたがまず心を配るべきなのは、自分自身です」という言葉でした。

彼女は「もしあなたが一人暮らしなら、部屋は常にきれいに片付けるべきです。ひとりでお茶を飲むとしてもふちの欠けたカップではなく、いちばん上等なカップを使ってください。家でひとりで夕食をとるなら、帰りにお花とおいしいデザートを自分に買ってあげましょう」とも言っています。
運のいい人は、自分を大切に扱っているのです。
では、なぜ自分を大切に扱うことが運のよさにつながるのでしょうか。
自分を大切にしている人は、ほかの人からも大切にされるのです。
心理学の「割れ窓理論」(軽微な犯罪がやがて凶悪な犯罪を生み出すという理論)でもいわれていることですが、人にはある特定の秩序の乱れがあると、それに同調してしまうところがあります。
たとえば、ゴミひとつ落ちていなかった道にポイ捨てするのは気が引けますが、ゴミがたくさん落ちている道の脇なら「1個ぐらいなら捨ててもいいか」という気持ちになります。
すでに秩序が乱れている場所があると、さらに秩序を乱すことへの心理的抵抗が少なくなるというもの。
実は、これと同じことが人に対しても起こるのです。
自分を大切にしている人を粗末に扱うのは、抵抗があります。身なりのきちんとした人には思わず敬語を使いたくなりますが、身なりに無頓着な人にはその気はなかなか起こりません。
つまり、ほかの人から大切に扱われるようにするには、そして周囲の人と良好な人間関係を築くには、まずは自分で自分を大切にする必要があるのです。
3. 運のいい人は「自分は運がいい」と思い込む
自分は運がいい人間だ、と決め込んでしまう。これが運をよくするコツのひとつです。何の根拠もなくていいのです。
直感力に関する調査結果があります。
パートナーの浮気を見抜くのは、男性よりも女性のほうが得意、というイメージがあります。実際この調査を行った人も女性のほうが男性よりも直感力にすぐれているという仮説のもとに調査を開始しました。
実際「自分は直感力がすぐれていると思うか」という質問に対して「すぐれていると思う」と答えたのは女性のほうが多かったのです。
しかし、いざ嘘を見抜かせる実験をすると、わずか1%程度の微妙な差でありながら、男性のほうが嘘を見抜いた人が多い、という結果になりました。
この実験で、主観的な直感力の尺度と客観的な直感力の尺度には開きがあることがわかりました。
これは自分で「直感力がすぐれている」と思っている人に、その根拠がほとんどないことがわかったともいえます。
運についても同じことがいえるのです。

「運がいい」と思っている人に、明確な根拠がある場合は少ないように思います。
つまり、これから「自分は運がいい」と決めようとしている人にも特別な根拠はいらないのです。
根拠はなくても「自分は運がいい」と決めてしまったほうが、実際には運はよくなるのです。
では、なぜそういえるのでしょうか。
たとえば、仕事でうまく契約がとれなかったとしましょう。自分は運がいいと思っている人は、「自分は運がいいのに契約がとれなかった。ということは、準備の段階で自分にミスがあったのかもしれない。あるいは、自分に勉強不足のところがあるのかもしれない」などと考えます。
一方、自分は運が悪いと思っている人は、「自分はこんなに努力しているのに、運が悪かったから契約がとれなかったのだ」と考える。
運がいいと思っている人には、努力の余地が生まれますが、運が悪いと思っている人にはその余地が生まれないのです。
しがたって、運がいいと思っている人は、努力次第で次回の契約がとれる可能性が高まりますが、運が悪いと思っている人はそうなりません。
実は運がいいと思っている人も悪いと思っている人も、遭遇している事象は似ている場合が多いのです。
しかし、その事象に対するとらえ方考え方が違う。対処の方法も違う。長い年月を積み重ねれば、おのずと結果は大きく変わってくるでしょう。
だから、やはり何の根拠もなくても「自分は運がいい」と決め込んでしまったほうがいいのです。
4. 運のいい人はプラスの自己イメージをもつ
何か課題を与えられたとき、試験に挑戦するとき、スポーツの試合に出るときなどにプラスの自己イメージをもつと、結果によい影響を与えることがわかっています。
プラスのイメージに特別な根拠はいりません。根拠のない自信があればいいのです。そのほうが、プロジェクトが成功する確率が高まります。
このことを証明する実験が、イギリスで行われたメンタルローテーションタスクの実験です。
これは、ひとつの図形が示され、それと同じ形のものを羅列された5、6個の図形の中から選ぶというもの。羅列された図形は回転して示されているために、ひと目で同じ図形を見つけるのは至難の業です。
一般に男性のほうが、女性よりも速くしかも正確に答えを出せる、とされています。
実験では、メンタルローテンションタスクの前に簡単なアンケートを実施します。

このアンケートが実験の肝となります。
アンケートで性別の質問をされた場合、女子学生の正答率は男子学生の64%でした。一方、アンケートで自分の所属大学を質問した場合、正答率は男子学生の87%まで上がったのです。
被験者の多くは有名校のエリート学生。アンケートで所属大学を答えることで、私は有名大学のエリート学生だというプラスの自己イメージがわき、それがテストによい影響を与えたのです。
このように、プラスの自己イメージはパフォーマンスに直接影響を与えます。
何かに取り組むとき、何かに挑戦するときには、マイナスの自己イメージはなるべく排除する努力をして、できるだけプラスの自己イメージをもつようにするとよいでしょう。
5. 本書のココがすごい!
今回紹介した、『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』中野信子著(サンマーク出版)のすごいところは下記に集約される。
?「運」という一見、科学とは無縁に思えるものを、脳科学的視点から分析して解説しているところが目から鱗が落ちる。
?「運のいい人」になるためにすることが手軽なので、今すぐ取り入れられそう。


【著者】 中野信子
東京都生まれ。脳科学者、医学博士。東日本国際大学特任教授、森美術館理事。
2008年東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。
著書に『エレガントな毒の吐き方 脳科学と京都人に学ぶ「言いにくいことを賢く伝える」技術』(日経BP)、『脳の闇』(新潮新書)、『サイコパス』(文春新書)、『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(アスコム)、『毒親』(ポプラ新書)、『フェイク』(小学館新書)など。
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