岩政体制で再認識、“常勝軍団”復活は一足飛びに叶わない。過去7年間で5人の監督。理想と現実にどう折り合いをつけていくか
一部報道では、欧州で指導経験のある外国人監督を招聘すべく動いているとのことだが、円安の今、日本サッカー界にとって海外から人材を呼ぶハードルは高い。1人の年俸のみならず、コーチングスタッフや通訳、家族のサポートなどコストは増大する。「だったら、選手にお金をかけたらどうか」といった意見が出てくるのも理解できる。
けれども、限られた予算の中で選手に思い切った投資ができていれば、大迫勇也(神戸)、アンデルソン・ロペス(横浜)に続くレベルのタレントを獲得できた可能性もあったのではないか。そこまでのトップFWでなくても、環境を変えて結果を出した浅野雄也(札幌)や豊川雄太(京都)のような人材を探して補強する手もあっただろう。
「今年は守備の部分はある程度、成果が出たが、得点の部分で大きな課題を残したシーズンだった」と吉岡FDは指摘しているのだから、前線の選手層を厚くしていたら、もう少し勝点を上積みできた可能性は少なくない。
そのあたりのチーム編成に関しては、やはり強化部によるところが大だ。近年の鹿島は外国人を含めて獲得した選手が十分に力を発揮できていないケースも目立つ。監督交代という大ナタを振るうだけでなく、強化部自体もここまでの取り組みを検証し、変えるべき部分は変えていかないと、常勝軍団復活への道はさらに険しくなると言うしかない。
鹿島が7年間、国内タイトルから遠ざかっているうちに、高校・大学のトップ選手が鹿島をファーストチョイスにしなくなったという厳しい現実も直視しなければならない点だ。
松村優太(←静岡学園高)、荒木遼太郎(←東福岡高)、染野唯月(←尚志高)が加入した2020年までは、まだ各年代のトップ選手が来ていたが、それ以降は超一流の人材加入が徐々に減っているように映る。
神村学園高の吉永夢希が卒業後にヘンクへ、明治大の佐藤恵允がブレーメンに移籍と、今や海外へダイレクトに行ってしまう時代だ。「優れた才能を大きく伸ばして、チームの主軸に据える」という鹿島が長年やってきた手法は難しくなっているのが事実と言える。
そういった現状だけに、鹿島の戦い方に合った選手を厳選して連れてくるといったスカウティングの再構築も進めていく必要がありそうだ。過去7年間で5人も監督が入れ替わり、チームのスタイルを確立しきれない状況では、なかなか好人材も集まりにくい。アカデミーからの引き上げも含め、見直さなければいけない部分は少なくない。
【PHOTO】鹿島アントラーズの歴史を彩った名手たちと歴代ユニホームを厳選ショットで一挙紹介!
とにかく、鹿島が今、考えなければいけないのは、理想と現実にどう折り合いをつけていくかだろう。かつて小泉文明社長が「鹿島アントラーズの存在意義は勝利」と語った通り、毎年必ず何らかのタイトルを取らなければ、フロントもサポーターも納得しない。「すべては勝利のために」というスローガンもあるように、あくまで頂点にこだわるならば、時代や状況の変化に合わせつつ、それ相応のアクションを起こすことが必要になる。
一番の早道は大迫、山口蛍、酒井高徳、武藤嘉紀らをズラリと並べてフル稼働させた今季のヴィッセル神戸のように、タレント力で優位に立つことだろう。それが難しいのであれば、選手を適材適所に配置してより現実的なスタイルで勝ちに行くFC町田ゼルビアのような方向性もある。
一方で、少し長期的な目線で個々を育てながら、組織力を高め、勝ちにいく道もある。岩政監督はこの手法を選び、1年半で退任することになったわけだが、鹿島として何を重視するのかを明確に打ち出さない限り、同じことが繰り返されるという懸念はどうしても拭えない。
「レジェンドの使い捨ては許されない」という辛辣な意見もSNS上で散見されたが、かつて鹿島に在籍した指導者・選手を呼び戻したところで、彼らを有効活用できなければ意味がない。吉岡FDは今後も“DNAを持つ人材”を戻す方向性を維持するような発言もしていたが、そういう面々の力を最大限に活かすような形も考えてほしい。
いずれにしても、常勝軍団復活は一足飛びには叶わない。岩政体制の1年半はその難しさを再認識する時間だったのではないか。誰よりも鹿島愛や情熱の強かった若き指揮官が取り組んだことを2024年以降にも活かし、より強固な基盤を構築することを、彼らには強く求めたいものである。
※このシリーズ了(全3回)
取材・文●元川悦子(フリーライター)
