「アイツは本当にうるさい」元グランパス守護神の監督も驚く声量…大会無失点で愛知を制した中部大一の2年生GKを絶賛!
原動力となったのは、大会を無失点で抑えた強固な守備。3バックの中央にそびえるディフェンスリーダーのDF北村昌樹(3年)と共に、GK下村駿季(2年)の貢献が大きかった。名古屋高との決勝でも、彼の存在感は際立っていた。名古屋の武器であるロングスローに対しては、ゴールマウスに立って守るのではなく、相手が狙ってくるニアの位置まで前に出て対応。頭を抜ければ、がら空きになったゴールを狙われるリスクもあったが、「監督から、絶対にあそこに来ると言われていた。チームと監督を信頼して、飛び出していた」。前半は策が上手くハマらなかったが、後半は頭上のボールを上手くキャッチし、守備に安定感を与えていた。
自信を覗かせるシュートストップでも魅せた。「止める時に基本は大事ですが、相手の目線とか雰囲気とか選手のキャラというのを意識している」と話す下村の見せ場が訪れたのは、前半34分。左スローからのパスに反応した名古屋のFW今泉陸(3年)がゴール前に抜け出したが、「24番はパワーで来るキャラなので、そこは力強く自分で身体を張ろうと意識しました」とタイミングよく前に出て失点を回避。今大会6度目となる無失点に貢献し、優勝を引き寄せた。
そして、何より大きかったのはどんな時でも、チームを盛り上げるコーチングだ。その声量は、伊藤監督が「アイツは本当にうるさい(笑)。体育をしている時も事務室にいる僕の所まで常に声が聞こえてくるんですよ。よく『今日もうるさかったな』と言うんですけど、全く気にしていない。僕の現役時代とは違う。あのメンタルは凄いですね」と評するほど。本人は「小学1年生からGKをやっているのですが、小さい頃からずっとうるさいキーパーと言われてきた。なんで、こんな変な声になっちゃったんですけど(笑)。喉が潰れて、ハスキーになっちゃいました」と悪戯っぽく笑うが、その理由はいたって真剣だ。
「フィールドの選手は走って疲れている。自分は走らず疲れない分、声を出して盛り上げようと意識している。盛り上げて、チームの集中を切らさないよう意識しています」
そうした声での貢献も含めて、サッカーと真剣に向き合う姿が印象的だが、中学時代は決してそうではなかった。小学生の頃は名古屋グランパスU-12に所属したが、U-15への昇格は果たせずサッカーへの熱を失っていた。救いの手を差し伸べてくれた近所のクラブチームでサッカーを続けはしたが、「成長したのは身長くらい」(下村)だったという。
しかし、中学3年生の頃に国体の候補に選ばれたことで、レベルの高い周囲に刺激され、やる気スイッチが入った。コロナ禍の昨年は自粛期間中に名古屋U-18のFW遠山湧斗や静岡学園高や興國高に進んだ友人たちと自主練を実施。「その子たちともっと一緒にやるため、嫌われないためにも、たくさんシュート練習を受けるようになった」結果が、急成長に繋がった。
全国ではそうした今までとは違う姿を多くの人に見てもらうチャンスだ。下村は、「全国ではより押されるし、予選とは空気が違うとも思うんですけど、自分が声を出して、いつも通りの雰囲気にして、一個でも多く無失点で勝ちたい」と意気込む。存在感抜群の守護神が、選手権の舞台でどんな活躍をしてくれるのか今から楽しみでならない。
取材・文●森田将義(サッカーライター)
