「当時交際していた、芸能人も御用達の高級ファッションブランドを経営する若手韓国人デザイナーから、約半年間、殴る蹴る投げ飛ばすなどのDVを受けていました。彼は昨年(2019年)7月に傷害の容疑で逮捕され有罪判決を受けています。しかしあるとき、彼との共通の知人から『本当はあなたが暴力を振るっていたんでしょ?』と声をかけられました。それ以降、周囲でなぜか私がDV加害者だという噂が流れだしたんです」

【写真】ブランド立ち上げ時から着用しているという城田優

 そう語るのは大きな目が印象的なA子さん(20代)だ。韓国語に堪能な彼女は、仕事を通して韓国出身のデザイナー・李燦雨氏(イ・チャヌ・31)と知り合い、仕事関係から恋愛に発展したという。


李燦雨氏(2019年10月23日 李氏インスタグラムより)

 李氏は2011年に留学生として来日し、山梨の日本語学校を卒業。その後、東京モード学園の高度専門士コースでデザインを勉強した、新進気鋭のデザイナーだ。東京モード学園在学中に、ファッションブランド「ACUOD by CHANU(アクオドバイチャヌ)」を立ち上げ、世界的なファッションショーである「東京コレクション」に参加。有名高級ブランドが名前を連ねるショーで、初参加の学生デザイナーでありながらオープニングを担う快挙を飾った。

「彼のブランドはファスナーを多用したユニセックスなデザインが特徴です。芸能人の愛用者も多いですよ。城田優さん、田口淳之介さん、ネスミスさん、西山茉希さんなどはプライベートでも着ています。
ジャニーズにもよく衣装を提供していて、King & PrinceやSexy ZoneはライブやMVでチャヌの衣装を着ることが多いですね」(ファッション業界関係者)

 2019年のNHK紅白歌合戦にも李氏の衣装が登場した。纏っていたのはあのトップアイドルだ。

「オープニング時の嵐の衣装がチャヌのオリジナルデザインだったんです。リーダーの大野くんがファスナーの多い衣装を強調して、『袖カーテン』とインスタグラムに投稿していたのも話題になっていました」(同前)

 この華々しい活躍の陰で、卑劣なDVは行われていた。取材班が情報を入手したのは約1カ月前の2019年11月末。A子さんの友人からの情報提供だった。

「A子ちゃんがチャヌから暴行を受けていることは前から相談を受けていました。だからチャヌが(2019年7月に)逮捕されたことで安心していたんです。でも、信じられないことにチャヌは釈放後、『暴行を受けていたのは自分のほう。本当の加害者はA子で、自分は無罪だ』という嘘を周りに広めていることがわかった。A子ちゃんが不当に名誉を傷つけられ続けていることに腹が立ち、告発することに決めました」(A子さんの友人)

 告発を受け、取材班は今年1月初旬、仕事終わりのA子さんを直撃。すると「少し待ってください」と戸惑いを見せたものの、しばらくして事の顛末を語り始めた。

「彼と出会ったのは2018年の夏頃です。暴行を受け始めたのは2018年末頃から。彼の女性関係について指摘したら激昂され、体を持ち上げられて投げ飛ばされたことがきっかけでした。最初はじゃれあいのようなものだと思うこともありましたが、彼は総合格闘技の経験者なので力がものすごく強いんです。カッとなった彼に押されるだけでも結構痛いので、彼を怒らせないように毎日必死でした」(A子さん)

 

 A子さんが李氏の部屋を訪ねるようになってから約半年間、李氏の精神的・肉体的な暴力は続いた。

「彼は嫉妬深く、独占欲が強い。私がほかの男性や友人と仲良くしているだけで、すぐに叱られました。彼の暴力は、私を突き飛ばすところから始まります。その後、韓国語で『消えろ』『死ね』『狂ってんじゃないの?』などと罵ってきました。『改善するから怒っている理由を教えて』と言っても聞いてもらえません。でも、それでも好きだったから、彼の暴力や暴言も我慢してきました」(同前)

 交際から約半年が経った2019年6月22日、A子さんは「さすがに殺されると思って」李氏の元から逃げ出した。その日は、2人でテレビ番組をパソコンで見ていたという。

「私が番組に出ていたアイドルを見て表情を緩ませたのが気に食わなかったようで、彼が突然怒りだしたんです。どうしたらいいかわからなくて、『じゃあもう(番組を)見なければいいじゃん』とパソコンを閉じようとしたのですが、『俺のパソコンに触るな』と言って、彼は私をマットレスに押し倒し、馬乗りになって右手で首を絞めてきました。殴る蹴るの暴力は日常的でしたが、首を絞められたのは初めてで……。脚で蹴り上げて彼を引き離そうとしたのですが無駄でした。首を絞められていた時間は10秒〜15秒くらいだったと思います。本当に死ぬかと思ったし、すごく怖かった。首を絞める力が緩んだ瞬間に手を振り払い、すぐに彼から離れました」(同前)

 すると李氏は“奇行”とも言える行動に出た。

「彼は下着姿だったのですが、その格好のまま、私のカバンを玄関の方に投げ捨て、その投げ捨てたカバンを持って、マンションの3階にある部屋から1階まで階段を駆け下りて行ったんです。私はそのすきに絞められた首の写真を撮り、母親に今すぐ迎えに来て欲しいと連絡を入れました。少し心の余裕ができた後、彼の様子を見に行くと、下着姿で私のカバンを抱え、マンションの1階をウロウロしていました」

 その後、A子さんは駆けつけた母親と共に帰宅し、後日被害届とともに、これまで撮りためていたアザなどの写真に加え、首を絞められたことによって首の靭帯が伸びたことを裏付ける診断書なども提出した。

「この事件をきっかけにチャヌとは会わなくなったのですが、彼はインスタグラムで別人になりすましてネットストーカーをはじめました。『首はどうして痛めたんですか?』『最近恋愛で大変な思いしましたよね』というような、チャヌと私しか知らないような内容で膨大な量のコメントを送ってくるのです。露出の多い服を着ている私の写真をまとめた“セクシーアカウント”も作成して『A子ちゃんに気づいてもらえたかなあ』とわざわざ私をタグ付けして投稿するなどの嫌がらせが続き、心身共に消耗する日々でした」

 被害届を提出して8日後の7月3日、李氏は傷害の容疑で逮捕された。満期勾留の末、略式起訴で暴行罪の有罪判決となり、20万円の罰金刑で7月24日に釈放されている。A子さんに身に覚えのない噂が流れだしたのはこのすぐあとからだ。 

「彼の釈放後、これまでの知り合いがよそよそしくなり、仕事が減ってきているなという実感があったんです。当時はなぜかわからなかったのですが、ある日、共通の知り合いに『チャヌさんから、「俺は無罪なのに逮捕された。首を絞めたり、暴力を振るっていたのはA子の方だ」って聞いたんだけど本当?』と質問されたんです。チャヌはそういう話をファッション業界の知り合いや友人に言いふらしているらしく、実際に彼の周りの人たちは彼が無罪だと信じきっています。私の知らないところで、私の信頼が損なわれ続けていました」(同前)

 虚偽の噂を周囲に流すだけでなく、李氏はA子さんにも直接接触しようと画策していた。

「チャヌには釈放前に私への『接近禁止警告』が出されているんです。警察の人の目の前で私の連絡先をすべて消して、私に連絡しない、近づかないことを言い渡されています。それなのに、『2人のいい思い出を動画にまとめたから、A子に送りたい』と複数人に相談していたんです。どんどん広まっていく悪意の噂と、チャヌに報復されるんじゃないかという恐怖で不安定になり、精神科に通わなくてはならなくなってしまいました。今でも首の周りに他人の手が触れるのが怖いですし、首を絞められるのではないかと思うと、マフラーを後ろに垂らすこともできなくなってしまいました」(同前)

 A子さんは現在、友人一人ひとりに事実を説明してまわり、李氏には内容証明を送るなど対応に追われている。

「首を絞めたことや以前から暴力を振るっていたことは、有罪判決が出ていますし、もう終わった出来事です。だからこれまで私は多くを語ることなく、事件後、彼の人生には関わらないようにしてきました。ですが、嘘を広められて名誉を傷つけられ続けることには我慢できません。虚偽の噂を広めないでほしいという旨の内容証明も送りました。もし誠実な対応がこれからも見られないのであれば、法的手段をとろうと思っています」(同前)

 李氏はなぜ嘘を吹聴するのか。「彼には“虚言癖”がある」と証言するのは、株式会社ACUODの共同設立者・B氏(40)だ。B氏は李氏がオープニングを飾った2016年の東京コレクションから約3年にわたってブランドの総合プロデュースを手掛けてきた。

「チャヌとは、彼が専門学校4年生の時に、友人を介して会いました。第一印象はとても純朴で、愛想のいい素直な青年でした。彼みたいな努力家の青年がファッション業界を盛り上げてくれればと思い、東京コレクションに出たいという彼を、その時だけサポートするという条件で資金集めや当日の総合演出を手伝ったんです。でも結局は彼の謙虚な人柄や才能にほれ込んで、その後も3年間、完全無給で手伝い続けました。チャヌも僕のことを慕ってくれていました」(B氏)

 B氏はブランドの全体コンセプトや、新作アイテムの構成案をつくり、ショーの総合演出も手掛けてきた。李氏へのインタビュー依頼も文書で質問を受け、B氏が李氏の代わりにすべて回答していた。そんな献身を続けるなか、昨年5月頃、B氏はA子さんから李氏によるDVの相談を受けたという。

「初めてA子さんからDVについて相談されたとき、まさかと思いましたよ。『A子さんが嘘を言っているのではないか?』と疑ったくらいです。チャヌには良い印象しかなかったので……。しかしアザの写真やチャヌとA子さんのメールのやりとりを見て、A子さんの言っていることが事実だとわかったんです」(同前)

 その後、前述の“首絞め事件”が起こり、A子さんは李氏の元を逃げ出し、李氏は逮捕された。

「チャヌは許されないことをしました。ずっと『本当の姿は、初めて会ったときの謙虚で素朴な青年なはずだ』と信じていましたが、さすがに暴行で有罪になれば一緒に仕事は続けられません」(同前)

 李氏が逮捕された後、B氏は取引先へ李氏が逮捕された事実を説明し、迷惑をかけた事への謝罪を伝え回った。心労や無理がたたって体調を崩し、2019年7月末にブランドを離れることになってしまった。

「彼への信頼を失ったのには決定的な理由があるんです。実は謝罪行脚の後、取引先の方から『チャヌから送られてきた』というメールを見せていただいたことがあったんです。それを読んで、愕然としました」(同前)

 取材班もメールの現物を確認したが、その中で李氏は逮捕の事実を否定し、B氏が経営責任から逃れるために李氏が逮捕されたと吹聴している、といった趣旨の主張をしていた。

 李氏が取引先に送ったメールの一部を紹介する。

《Bこそ会社経営に関して実際に問題のある人です。簡単にお話ししますと、現在弊社は財政的にマイナス2500万円の状態でして、その経営責任から逃れる為の行動です。

 それ以外の問題も明らかな証拠で沢山出ております。

 幸いに事件の真相や色んな事実を信じてくださり、もっと応援してくださり、協力してくださる方々も沢山増えておりまして、幸いなところです。

 もし今後の仕事がダメになるとしても、誤解をされいるにはいけないと思いますので、今回の事案の真相に関して是非ともお会いして詳しく解明したいと存じます。

 私側のお話しを聞いてくださいませんか。(原文ママ)》

「僕はブランドを大きくするために無給で働いてきましたし、しかも会社設立にあたっては知人から借金をして500万円を貸している。チャヌからはまだ55万円しか返してもらっていません。これだけチャヌのために尽くしてきたのに、陰でこんなことを言われる覚えはない。それに“(暴行)事件の真相”と言っていますが、彼がDVをし、有罪判決を受けたのは紛れもない事実です」(B氏)

 李氏のメールを読んでやっと、B氏は李氏の“本当の姿”を目の当たりにした思いだったという。

「A子さんにもよくよく話を聞いてみると、チャヌは普段から僕の悪口を頻繁に言っていたんです。韓国語が分からない僕の前で、チャヌがA子さんに『仕事をちゃんとしないでパソコンの前で何してるんだろ?(일을 제대로 안하고 컴퓨터 앞에서 뭐하는거지?)』『また熱弁タイム、こんなの誰が聞くんだ(또 열변타임 이런거 누가 들어)』と言うこともあった。それでA子さんも僕のことを最初は信用していなかったと明かしてくれました。僕には『いつも感謝しています』『Bさんは僕の日本のお父さんです』と言っていたのに……。

 彼は全く“純朴で素直な青年”なんかじゃなかった。事実と真逆の嘘を平気な顔で言える“サイコパス”だったんです」(同前)

 取材班は、A子さん、B氏の話をもとに李氏本人を直撃。すると「僕は無罪です」とはっきりと語った。

――暴行罪で有罪になったと聞きました。

「無罪でした。ハメられたみたいな感じで。不起訴で出てきました」(※編集部注 実際には逮捕、満期勾留の末、略式起訴で暴行罪の有罪判決を受けている)

――6月22日にチャヌさんがA子さんの首を絞めたというのは事実?

「むしろ逆です。僕がめっちゃ殴られて。プロレスラーみたいに力で抑え込んでキスしようとしてきたり、パンツ脱がせようとしてきたので、どうにかなっちゃうかもと思って、一瞬首のあたりを抑えたら『首絞められた!』って。本当に一瞬です」

――日常的にDVを受けていた?

「そうです。その日だけじゃなくて、僕がいつもめちゃめちゃにされていた。見た人、聞いた人もいます」

――罰金の支払いとかは?

「罰金は20万円払いました」

――不起訴なのに罰金を支払った?

「決定的な証拠がなかったから。検察さんの判断で、略式命令で」

――A子さんの主張していることは嘘?

「裁判とか起こしてもいいですよ全然」

 A子さんは取材のなかでこう漏らしていた。

「つい最近、検察で調書を読んだとき『申し訳ないと思っている、強制送還されてもいいほどのことをした』というチャヌの発言が書かれていました。嘘をついているのを知っているから、その言葉が空虚なものに見えました。そしてやはり彼は今でも嘘をつき続けている。とても悲しいです」(A子さん)

 B氏が離職し李氏一人体制となった直後の2019年10月、「ACUOD by CHANU」2020年春夏コレクションが発表された。コンセプトは“愛と許し”。一体、李氏は誰を愛し、誰を許そうとしたのだろうか。

(「週刊文春デジタル」編集部/週刊文春デジタル)