男女平等社会と言われて久しいこのご時世に、大学時代の最終章ともいえるのは4年時の「就職活動」。

この時の選択は、その後の人生を大きく変えるGATE(入口)だ。

これは、若さと美貌、また裕福な実家というバックグラウンドを兼ね備えた女子大生たちの、22歳(就職内定時)・23歳(社会人1年目)・27歳(社会人5年目)時点の人生を描いたものである。

果たして22歳時の選択は、その後の人生にどう影響をもたらすのだろうかー?

これまで紹介してきた女性たちは、結婚後「他人から与えられる幸せは長続きしない」ということに気づいた英理佳。

一般職として総合商社で仕事に励んだ結果、職種転換制度にて総合職になり、5年目には自ら海外駐在員となった葵の2人を紹介した。

そんな2人と親友である沙耶は、就活や将来に対する明確な目標がないまま、持ち前の美貌を生かして、とりあえず日系大手航空会社のCAへと内定を果たす。

今週は、そんな沙耶の社会人1年目を覗いてみよう。




「はい、では本日教えたところまでが来週の試験に出ます。合格点に達しないものは追試ですよ。その後のモックアップを使用した訓練に進めません。」

沙耶が、日系航空会社に入社し、およそ1カ月が経過した。

4月から1カ月間、それまでの学生時代のように講義中心の研修が続き、来週はいよいよその集大成としての最終試験だという。

「はいっ」

クラスメイトたちの元気な返事が、教室に響く。

「今日、この後皆でお茶していかない?」
「いいね、行こう。沙耶ちゃんもおいでよ。」

この1カ月で段々と仲良くなったクラスメイトたちと、講義後に一息つくのが沙耶を含めた「客室乗務員の卵たち」の楽しみである。

結局、今日は7人くらいが集まって、品川の『Sarabeth’s』にてお茶をすることになった。

元ミスコン優勝者の沙耶は、そこでの同期たちとの会話で重大な“あること”に気づくのだった。


客室乗務員卵たちの、強すぎる思いとは


「毎日大変だけどさぁ、この訓練を受けていること自体がすごいっていうか…。ずっとなりたかったCAに受かって、夢を叶えている今がすごく幸せだよね、私たち。」

クラスのリーダー的存在である香織が開口一番そう言うと、みんながそれに続いた。

「ほんとに!去年内定の電話もらった時から、ずっと夢みたい。親戚一同喜んでるよ。この訓練も、小学生の時に見ていた上戸彩ちゃんが出てたドラマみたいに、いま自分が受けていることに感動してるくらい(笑)」

教室では、沙耶の隣に座っている美奈が、CAへの思いを打ち明ける。

「美奈も、ドラマ見てたん!!上戸ちゃん、めっちゃ可愛かったよなぁ。私も、あの制服にずっと憧れててん!」

関西出身の子が、テンション高めに話したかと思えば、香織が「沙耶ちゃんはどうなの?」と聞いてきた。

「私は……。うん、私も憧れていたから夢が叶って嬉しいよ。」

―みんなごめん。本当はCAになったのは”なんとなく”だったんだ……。

ずっと夢に抱いていたCAという職に就けたことを嬉々として語る皆を前にして、「なんとなく」等と口が裂けても言えない。

「そうだよね。沙耶ちゃんなんて、お母さんもCAだったんでしょう?母娘2代でCAなんて、ほんとに誇りだよねぇ。」

「いやいや、全然そんなことないよ。」

ミスコン出場時もそうだったが、自分に注目が集まることはやはり得意ではない。話題を変えようと、自分から皆に質問してみる。

「皆CAになった後はどうしたいとかあるの?」

すると先程まで盛り上がっていた会話が、急に静かになってしまった。一番に口を開いたのは、やはり香織である。

「目標かぁ。ずっとCAになりたくて生きてきたしなぁ。でもこれからフライトが始まって、国際線も飛べるでしょ。先輩たちの話を聞いてると、お食事会とか商社マンばっかりで、結婚してみんな駐在妻になって。私たち、“女として勝ち組”だから、何も心配ないと思ってる!」

この香織の意見に、その場にいたメンバーは大方同意しているかのような空気になったところで、この日は解散となった。

「女として勝ち組、かぁ。」




訓練が始まって1カ月、同期たちがCAという仕事に憧れ、誇りをもっているということは理解していた。

しかしながら、この日感じたような、同期達が抱く「CAへの思い」が、沙耶自身には「少し行き過ぎている」ように思えたのだ。


一見華やかな、大手日系航空会社CAのリアルな生活とは…?


地上での全ての訓練を終えた沙耶たちは、いよいよ初フライトへと各々が飛び立っていった。

ある朝、羽田発伊丹行きの便に乗務していた日のことである。平日の伊丹便は、出張に向かうビジネスマンが多く混雑していた。

ある40代の乗客に、飲み物を伺った際のこと。沙耶が「訓練生バッジ」を付けていることに気づいた、その乗客が話しかけてきたのである。

「おぉ。新人の客室乗務員さんか。いいねぇ。今が女として人生最高に華だね。頑張ってな。」

そう声を掛けられた沙耶は、近くにいたリードキャビンアテンダントの視線を気にしながら、「ありがとうございます」と小さくお礼を言う。

ギャレーに戻ると、先程こちらを見ていた先輩であるリードキャビンアテンダントに話しかけられ、

「藤本さん、伊丹便は手際の良さが一番肝心なのよ!お客さまにちやほやされたからって、それを真に受けて話し込んじゃだめ。もっと周りをみなさい。」

そんな風に注意されてしまったのだ。

フライト後、ロッカーに戻って着替えていると、同じく今日のフライトを終えた同期の香織と遭遇した。

「沙耶ちゃん、なんだか浮かない顔してるね。大丈夫?」




「実は、先輩に怒られちゃって……。」

沙耶は、香織に今日の出来事を話した。すると、香織はこう言った。

「あーあの先輩ね。要注意人物だよ。何かにつけて叱ってくるから、後輩の間では有名。」

先輩からの叱責に落ち込んでいた沙耶は、初めて女の世界の陰湿さを感じた瞬間であった。

そして香織は、続けた。

「私たちは、そうならないようにしようね。そうだ、明後日、商社マンとの合コンがあるんだけど、沙耶ちゃんも来てくれない?」

沙耶は、ちょうど予定もなかったこともあり、香織の誘いにのってみることにした。

その週の金曜日に、沙耶と香織、美奈、佳子という同期メンバー4人で『マーサーブランチ ギンザテラス』へとやってきた。

お相手は、同じく社会人1年目である商社マン4人組であった。

「CAかぁ。さすが、みんな可愛いね。」

「沙耶ちゃんたちは、赤だっけ?青だっけ?」

「俺ら、出張の時はビジネスに乗るから。おもてなし、よろしくね。」

商社マンにとって、最も多い食事会の相手は、CAなのだろう。終始、CAネタで会話が続く。

沙耶以外の皆は、にこにこと可愛い笑顔を振りまいている。

だが、沙耶にとっては「自分自身」ではなく「CA」であるということにだけしか興味を持たれていないように感じたのである。


仕事もプライベートも「CA」であることに疲れた沙耶は…


そんなある日、久しぶりに遥からLINEでメッセージが届いた。

「お久しぶりです。就職活動も一段落したので、沙耶さんのお時間あるときにランチ行きたいです!」

ミスコン出場を経て仲良くなった遥は、沙耶の1つ下である。沙耶は、学生時代を思い出すと懐かしさを感じ、遥と会うことにした。

水曜日の昼下がり、有楽町にある『6thby oriental hotel』にて、沙耶と遥は久々の再会を果たした。

「沙耶さん。私、念願叶ってアナウンサーになれることになりました!希望だったキー局ではないのですが、準キー局から内定を頂けて…!」

嬉しそうに報告してくる遥を見て、沙耶は思わず顔がほころぶ。

「本当におめでとう、遥ちゃん。私もとっても嬉しい。遥ちゃんは、昔からの夢を叶えたんだもんね。」




お祝いの言葉を述べる沙耶だが、最後は自分自身に問いかけるような口調となってしまった。そのことを察知した遥が心配そうに、沙耶の顔を覗き込む。

「沙耶さん、どうかしましたか?」

「実は、CAになったものの、このままで良いのかなって。もちろん仕事は楽しいけれど、人と接すると【若いCA】っていうことにしか価値がないように、日に日に思えてきちゃって。」

後輩である遥に、沙耶は自身が感じている悩みを打ち明けた。

すると、遥は予想もしなかったことを提案してきた。

「そうだったんですね。沙耶さんに会って頂きたい方がいます。私の大学のミスコンOGで、現在若手女性を支援するようなベンチャー企業を立ち上げている方で…もしかしたら沙耶さんが今悩んでいることの助けになるかもしれないです。」

「それは…ぜひお会いしてみたいわ。遥ちゃん、お願いできる?」

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新たな出会いは、沙耶の救世主となるのか?そして、27歳の沙耶の人生とは?

▶明日9月3日(火)、新連載『夫の反乱』スタート

熱烈なアプローチを受けて結婚したはずが、夫の様子が最近おかしい。結婚から3年、夫を大切にすることを忘れてしまった美人妻の行く末は…?