自然な英語を話すための3つのコツ
■be動詞を避ければ自然な英語に
「村上春樹は作家だ」「ヒロシは高校生である」という文はいずれも日本語として自然な言い方だ。さて、この文を英訳してみるとどうなるだろうか。
きっと多くの人は“Murakami Haruki is a novelist.”、“Hiroshi is a high school student.” という英文を思いつくにちがいない。
もちろんいずれも文法的に正しい英語だ。英語を習い始めた人でも知っているbe動詞を使った、「◯◯は――である」、というSVC構文である。「村上春樹は作家だ」、あるいは「ヒロシは高校生である」、という日本語を単語の一対一対応で、そっくりそのまま素直に英語に移し替えることができる。
しかし、文法的に正しい英語が、すなわち英語としてもっとも自然でネイティブの発想に近いものとは限らない。
実は「村上春樹は作家だ」は“Murakami Haruki writes novels”.(「村上春樹は小説を書く」)。同様に「ヒロシは高校生である」は“Hiroshi goes to high school.”(「ヒロシは高校に通っている」)のほうが、よりネイティブの発想に近い自然な英語なのである。
さらにいうと、「英語では、日常会話のほとんどの文がSVOという動作を表す他動詞を使った構文でできている」(安武内ひろし氏)のである。つまり、be動詞を使った英文を考えている限り、とてもネイティブのような自然な話し方はできないのだ。
■英語の発想は「する」日本語は「なる」
日本語の「は」を安易にbe動詞に置き換えて英語を話そうとすると、まったく意味が通らなくなってしまうこともある。
たとえば「りんごは青森だ」という文章。つまり、「りんごといえば青森産のりんごだ」という意味だ。これはこのまま何も考えずに英語にしようとすると、りんご=青森、“Apples are Aomori.” と言いたくなるが、これでは意味が通じなくなってしまう。ネイティブが話す自然な英語では、“They grow great apples in Aomori.”(人々は 栽培する 素晴らしいりんごを 青森で)となる。主語(S)は人で、動作を表す動詞(V)、目的語(O)の順に並ぶSVOの構文だ。
もうひとつ例を出そう。「趣味は何ですか」と聞く場合を考えてみよう。おそらく日本人がすぐに思いつくのは“What is your hobby?”だろう。しかし安武内氏はこの表現は二重の意味で誤りだという。
「人を主語にして、“What do you do in your free time?”(あなたはお暇なときには何をしますか)という言い方にするほうがネイティブに近い自然な言い方になります。また、“hobby”は英語では何らかの技能を必要とする趣味のことを指します。初対面の人に、相手に特殊な技能があることを前提に質問するのはいかにも不適切でしょう」
■受動態を使う場合は理由が必要
ほかにも、日本人のbe動詞的発想を象徴するものとして、受け身表現がある。日本の英語教育では、ある文章を、be動詞を使う受け身表現で言い換える練習がさかんに行われる。たとえば、“A boy kicked Pochi.” を“Pochi was kicked by a boy.”と言い換える練習だ。しかし、「これらの文章の意味が同じだと教えるのはナンセンスだ」と安武内氏はいう。「英語で受け身表現を使うのは、何か理由がある場合です。たとえば、行為者がわからない場合、あえて行為者を明確にしたくない場合、主語を変えたくない場合などです」
自然な英語を話すために、安武内氏はこうアドバイスする。「日本語で考えてしまうと、それに縛られて、どうしてもbe動詞的な言い方をしたくなってしまう。だから、情景や言いたい内容を思い浮かべたら、まず人を主語に立てて他動詞を選ぶという習慣をつけることです。そして目的語を忘れないことです」。
■英語を伝えるにはまず「大声で」
ほかにも日本語と英語圏の文化の違いに注意することでネイティブらしい英語を話すヒントになることがいくつかある。
たとえば、日本では人の話を聞くときには、礼儀として、話の合間に相槌を打つのが普通だが、欧米人は多くの場合、話している相手を凝視するように、じっと見つめたまま黙っている。
相槌を打ってもらうことに慣れている日本人は、それだけで、自分の話す英語が「査定されている」かのように身構えて、萎縮してしまったり、話しているうちにどんどん自信がなくなったりして、小声になり、挙げ句の果てには自分がなにを話しているのかわからなくなるなど、とにかく黙って見つめられていることに耐えられないものだ。
しかし、「はじめから相槌はないものと心得ていれば、心に余裕が生まれ、多少慣れない凝視の視線に晒されてもなんとか最後まで持ちこたえられるものです」(同)。
そして、そんな簡単なことでいいのか、と驚く向きもあるかもしれないが、「大声で話すことがとりわけ重要です」と安武内氏はいう。「英米人は(たとえ間違ったことを言っていても)自信たっぷりな人が好きなのです」。小声で自信がなさそうに話すのはなによりもマイナスの印象を与え、主張を聞いてもらえなかったり、ほかの人に割って入られたりして、発言の機会が奪われてしまう。
大きな声でというのは、日本語で意識しにくい子音の「t」や「k」をはっきり発音したり、アクセントのある母音を長めにはっきり発音するように心がけることも含む。英語は日本語に比べてメリハリがはっきりついているのだ。「ラップの発語のしかたを真似すると、発音だけでなく、フレーズの流れとしてもネイティブらしいリズムと抑揚が身につきます」(同)。
まずbe動詞を忘れ、人を主語にして、動作の他動詞を使って文章を考える。相槌はないものと心得ておく。そして大きな声で話す。こうした発想の転換こそがネイティブに近い英語への近道なのだ。
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英語教育研究者。マイアミ大学大学院修了後、フロリダ電力を経て、アーサイナス大学、AT&Tベル研究所で日本語を教える。帰国後は大手予備校や大学で指導。著書に『図解 7日間で突然、英語ペラペラになる本』(プレジデント社)などがある。
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(安武内 ひろし 文=奥田由意 撮影=相澤 正)
