【辺野古転覆事故】調査で判明「著しく不適切」な学校の安全管理…弁護士「道義的に一番緊張感を持つべきは学校」 船長を刑事告発「事業登録をしていれば防げた可能性も」法律上の義務果たさず【解説】
船長を刑事告訴 文科省が調査公表
今年3月、沖縄県名護市の辺野古沖で、修学旅行中だった同志社国際高校の生徒らが乗る船2隻が転覆し、生徒ら2人が死亡しました。
【画像を見る】「著しく不適切」文科省が調査公表…同志社国際高校の対応
船を運航する団体は法律で義務付けられている「事業登録」をしておらず、国は死亡した金井船長を海上運送法違反の疑いで刑事告発。
また、文科省などは学校法人同志社と高校を調査し、安全管理などについて「著しく不適切」と結論づけました。
今回の調査で何が分かったのか?学校側の責任は?これまでの経緯を振り返りながら、南和行弁護士が解説します。
遺族がつづった心境「現地での引率放棄を良しとしたその感覚には言葉を失います」
3月16日に発生した辺野古沖の転覆事故。修学旅行中だった同志社国際高校の生徒らが乗る船2隻が転覆し、武石知華さん(当時17)・金井創船長(当時71)が死亡しました。
海上保安庁などによりますと、武石さんは船が転覆してから約1時間後に救助されましたが、その際にライフジャケットが船の収納庫に引っかかった状態で見つかったということです。
武石さんの遺族は今年3月28日からインターネット上に心境を綴っています。
(武石さんの父親)「現地での引率放棄を良しとしたその感覚には言葉を失います」
「なんで死んでるの。起きなよ知華」遺体と対面した父
武石さんの父親は遺体と対面した際について、「顔の傷も服で隠れる部分の傷も、想像より多くひどかった」とした上で、次のように綴っています。
(武石さんの父親)「こたつで昼寝をしているときの顔と変わらない。冷たい。司法解剖。手術したこともないのに。自慢の髪の毛をあんなにも大切にしてたのに。苦しかったろうに。なんで死んでるの。起きなよ知華」
米軍基地移設に反対する“抗議船”が転覆
転覆したのは米軍基地移設に反対する、いわゆる“抗議船”。船を運航する「ヘリ基地反対協議会」側の対応を問題視する見方も出ています。
国土交通省はこれまでの高校への調査から、金井船長が学校からの依頼を受け、2023年から3年間で6回にわたって生徒や教員を船に乗せて謝礼を受け取っていたことを確認したということです。
<国交省が同志社国際高に照会して把握>
(1)2023年以降、学校から依頼文を受理
(2)計6回、生徒・教員を運送
(3)毎年学校から謝礼を受領
「事業登録せずボランティアで運航」死亡した船長を刑事告発
海上運送法では、有償無償に関わらず、人を乗せて運航する場合「事業登録」を義務づけていますが、金井船長は事業登録を行っていませんでした。
船の運航側は「ボランティアで運航していたため事業登録はせず」と説明していますが、国交省は「事業性あり」と判断したとみられ、国は22日、死亡した金井船長を海上運送法違反の疑いで刑事告発。海上保安庁は受理しました。
弁護士「事業登録をしていれば防げた可能性も」
この事故について、南和行弁護士は「事業登録をしていれば防げた可能性もある」と話します。
(南和行弁護士)
「儲かっていたか否かではなく、依頼を受けて人を運ぶ=事業ですので、生命と身体の安全のために登録すべきだったと思います」
「登録すれば、事業者の義務として『安全管理の責任者を置かなければならない』などの基準を作らなければならない」
「船に乗せる人たちの生命と身体の安全のために、登録はすべきだったのではないか」
弁護士「業務上過失致死もあり得る」民事は…?
業務上過失致死の疑いが問われることはあるのか。南弁護士は「捜査で具体的な事実が明らかになれば、あり得ると思う」との見解。民事上の責任については次のように指摘しました。
(南和行弁護士)
「事故について『防ごうと思ったら防ぐことができたのは誰か』『その人が事故との関係で法律上どれだけの義務があったか』という観点で判断します」
「今回の場合、船長や団体、団体内の責任のある人、そして学校や教員なども民事の責任を問われる可能性があります」
「皆が連帯して責任を取る、というのが法律的な説明です」
文科省が調査公表…同志社国際高校に「著しく不適切」
京都府によると、事故をめぐっては、高校が事前の下見をしていなかったり、船が転覆した際に教員が同行していなかったりしていたということで、府は文部科学省とともに学校法人同志社と高校を調査。
京都府と文科省は22日、「安全管理に対する認識は甘く、安全対策などについても十分な検討および必要な対策を実施していなかったと言わざるをえない」などと結論づけました。
<文科省が調査を公表>
▼計画や当日の対応
ボート乗船をめぐり…
・学校側と船長で「例年どおり」と確認しただけ⇒下見はせず
・どのような船に乗るか⇒生徒や保護者に事前説明なし
▼安全管理
・学校策定の危機管理マニュアル⇒不十分
・悪天候時の代替案⇒なし
・引率教員⇒乗船せず
さらに…
“抗議船”に生徒乗せた学校「特定の考え方に偏った取り扱い」
松本文科大臣は、金井船長が日常的に米軍基地建設について抗議活動をしていたことを教員らが認識したうえで船に生徒が乗るプログラムを組んだことなどから、特定の政党を支持する教育を禁じた教育基本法に違反するとの認識を示しました。
<文科省が調査を公表>
▼教育活動
・船長から「米軍基地建設に抗議している」などの発言があった
・学校側は特定の考え方に偏った取り扱いだった
文科省によると、学校側の説明は次の通り。
・“抗議船”の認識を持っていた教員はごく一部
・乗船は平和学習の一環
・“抗議船”の乗船が「政治的な意味合い」があるおそれについて検討・配慮不足だった
文科省は「学校は生徒を乗せる船が“抗議船”である認識を持っていたと考えざるを得ない」としています。
「国内の修学旅行も行政が把握すべき時期にきている」と教育アドバイザー清水氏
文科省は22日、学校法人同志社に対して改善を求める指導通知を出し、高校は「文部科学省の見解を真摯に受け止めています」などとしています。
また、船を運航していたヘリ基地反対協議会は「捜査に引き続き協力していきたい」「ご遺族や学校への謝罪もお願いしている」と述べています。
学校・船長・船の運航団体の責任はどうなるのか…
(教育アドバイザー 清水章弘氏)
「今回の問題の本質は、学校側の安全確認の体制が極めて甘かったことにある」
「国内の修学旅行でも計画の提出や安全体制の確認など、行政が把握すべき時期にきているのでは」
『引率放棄』と語る遺族 学校側の責任は?「道義的に考えると…」
また、南弁護士は学校の責任を強調します。
(南和行弁護士)
「道義的に考えると、今回の場合、最も責任があるのは学校だと思います。『事業登録しなければ生徒を連れて行かない』と言うべきだった」
「その説明を今も学校側はきちんとしていないので、武石さんのお父様は『引率放棄』という言葉を使っている。生徒の安全について学校はどう考えているのか、ここが争点になると思います」
(2026年5月22日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)
