『時すでにおスシ!?』が示した“大人の自立” ゆっくりと進み始めた“みなと”永作博美の恋
ワカシ、イナダ、ワラサ、ブリと、成長とともに名前を変える出世魚。『時すでにおスシ!?』(TBS系)第7話では、みなと(永作博美)と渚(中沢元紀)、大江戸(松山ケンイチ)と澪(土居志央梨)の関係も新たなフェーズへと突入した。
参考:『時すでにおスシ!?』中沢元紀らが鮨アカデミー体験入学 ドラマオリジナル握りに挑戦
渚と仲直りはできたものの、“ちょうどいい”距離感についてはまだ掴めずにいたみなと。そんな中、療養を終えて仕事復帰することになった渚から、ある場所に誘われる。そこは、亡き夫・航(後藤淳平)と親子3人でよく訪れた思い出の公園だった。
渚がわざわざその場所にみなとを連れてきたのは、本当の気持ちを伝えるため。前回、勢いのまま口から飛び出した言葉は、本音であって、本音ではなかった。
みなとは航を不慮の事故で亡くしてから、無我夢中で子育てをしてきた。渚に尽くすことで、崩れそうな心をどうにか保ってきたのだ。でも、そのせいで自分でも無自覚にプレッシャーを与えてしまっていたことを反省するみなとに、渚は「いつだって助けられてたから、お母さんの手に」と打ち明ける。
航の葬儀で泣いている自分を落ち着かせるように握ってくれた手、下手くそなりにキャッチボールに付き合ってくれた手、毎朝お弁当を作ってくれた手、何か嬉しいことがあると一緒に喜んでハイタッチをしてくれた手……。その愛情に満ちた手に、渚は育てられ、助けられてきた。
車掌研修で躓いた渚が体調を崩すまでに追い詰められてしまったのも、みなとに感謝すればこそ。みなとにプレッシャーをかけられたというよりも、渚自身がどこかで“母親のために”というプレッシャーを自分にかけてしまっていたのかもしれない。そんな渚に、みなとは「もうその背中に何も背負わなくてもいいんだよ」と伝える。
公園の目の前を猛スピードで通り過ぎていく新幹線の車両をすぐに言い当てる渚。新幹線の運転手になるのは、自分自身の幼い頃からの夢だった。その自分以外、誰のものでもない夢を、これからは心置きなく追いかけられるのではないか。みなともまた、今度こそ自分の人生を生きる時を迎え、2人はグータッチで互いの健闘を祈った。
一方、大江戸は元妻である澪との接し方を決めかねていた。ふと思う、別れたパートナーとの“ちょうどいい距離感”ってなんだろう? 血の繋がりがある親子と決定的に違うのは、夫婦はもともと他人同士だということ。別れてしまえば、子どもでもいない限り、特に2人を繋ぐものは何もない。そのことにほんのりと、寂しさというよりは虚しさを感じていたのが澪だった。
お金がなく、2人で工夫して節約していた大江戸の修行時代。ようやく鮨職人と呼べるようになってからはお店を出すことを目標にお金を貯め、独立後は澪が会社を辞めて大将となった大江戸を支えた。そうやって20歳から40歳まで人生の苦楽を共にしてきた2人。大江戸がパワハラ疑惑でお店を閉めることになったとき、「自分の人生を歩みたい」と別れを切り出したのは澪自身だ。それにいまさら、大江戸とやり直したい気持ちがあるわけでもない。だけど、大江戸に捧げた私の20年間は一体何だったのかと思わずにはいられないのだろう。愛犬のホタテをたびたび大江戸に預けていたのは、彼女なりにその答えを見つけようとしていたのではないか。
そんな澪から本音をぶつけられた大江戸はいてもたってもいられず、みなとにどうすべきかを相談する。だが、その答えをみなとは持っていない。あくまでも大江戸と澪の問題であり、これからの関係を決めていくのは2人自身なのだから。正面から相手に向き合うしかないとみなとに背中を押された大江戸は澪を呼び出し、「これからは一緒にブリになろう!」と告げる。
一見するとふざけているとしか思えない台詞だが、それは大江戸なりに澪との向き合い方を考えに考え抜いて導き出した答えだった。2人は離婚し、他人同士に戻ってしまった。だが、決して夫婦として過ごした20年間が無駄になったわけではない。稚魚のワカシがひとっ飛びに成魚のブリになれるわけではなく、イナダ、ワラサとして海を泳ぐ過程で大きく、かつ引き締まった身になっていくように、2人で苦楽を共にした時間があったからこそ今があるのだ。
澪は大江戸の店でお茶の仕入れを担当していたことが高じて、福岡で日本茶カフェをオープンするという。それだって、大江戸と出会ったからこそ開かれた道。思うように行かず、挫けそうになっていた澪だが、「澪なら最高で最強の身が締まって脂が乗ったブリになれる!」という大江戸らしい激励の言葉に背中を押され、笑顔で去っていった。
こうして、それぞれ大切な人との一区切りを迎えたみなとと大江戸。次に向き合うべきは、自分の人生だ。これから先、何をして、誰と生きるのか。本人たちの気持ちは案外、周りの方が見えているものなのかもしれない。2人が一緒に笑い合う姿を見て、渚も何かを感じ取った様子。ここまでもどかしい距離を維持してきた2人だが、大江戸の「今度一緒に、水族館に行きませんか?」という誘いが大きく関係を進展させる予感がした。(文=苫とり子)
