オルカン・S&P500だけ? 1万円から始める不動産投資でリスクを分散
東京市場が6万円の大台を超えてるなかで株式投資熱は冷めない。とくに2024年のNISA制度改正以降、証券口座の開設数が急増。そんな新規口座の多くが選んでいるのは、オール・カントリー(オルカン)かS&P500に連動するインデックスファンドだ。
この2つは「長期・積立・分散」という原則に忠実で、コストも低い。資産形成の入り口としてよい選択といえるだろう。イラン攻撃に端を発した中東情勢の先行きが不透明な中でも、この2つは堅調だ。
(関連記事)
イラン攻撃から6週間、株価乱高下の中で新NISAのオルカン・S&P500パフォーマンスは?
投資の鉄則は「分散」で、オルカンもS&P500はさまざまな企業に分散されている。しかし、ようよく考えると2つとも「株式」というカテゴリーになる。つまり、株式銘柄はぶんさんさているが、株式市場が何らかに波に襲われれば丸ごと飲み込まれるリスクは変わらない。
実際、リーマンショックのときのS&P500は高値から約57%下落。コロナショックでも、わずか1か月で約34%消えた。
もちろん「長期で持てば戻る」という点で、それは正しい。しかし、元の値に戻るまでには相応の時間がかかる。
本当の意味での分散とは、値動きの異なる複数のカテゴリーの資産を持つことで、その1つには「不動産」がある。
株式と不動産、値動きはそもそも違う
株式市場は、その時々の景気に敏感に反応する。好材料があれば急騰し、悪材料があれば急落する(もっと荒い動きをするのが仮想通貨だが)。その値動きは日々、時間単位で変化する。
一方、不動産はちょっと違う。不動産そのものの売買の値動きは大きいが、「家賃収入」は景気が悪化しても急には下がらない(逆に急には値上げできない)。
つまり株式と不動産は、相場の動き方がそもそも違うため、株が暴落している局面でも、不動産からの収益は予定通り入ってくる可能性が高い。この「ズレ」が、株式と不動産という2つのカテゴリーを使ったポートフォリオになというわけだ。
NISAでオルカンを積み立てながら、不動産を「安定の柱」として組み込む。これが株式一辺倒から一歩進めた、次のステージのポートフォリオといえるだろう。
物件を買わず1万円から「大家」になれる
不動産投資と聞くと、「物件をローンで購入、空室リスクに抱え、管理会社とやり取りする」あるいは一括借り上げのサブリースのイメージがある。しかし、不動産投資もさまざまな商品が登場している。
2017年と2019年の「不動産特定共同事業法」改正をきっかけに、インターネットを通じて複数の投資家が少額ずつ資金を出し合い、不動産に投資する「不動産クラウドファンディング(CF)」が急速に普及した。これであれば最低投資額は1万円から。物件の選定・管理・売却はすべて運営会社が行う。投資家はスマートフォン一つで申し込み、運用期間終了後に元本と分配金を受け取るだけだ。
国土交通省のデータによると、出資額は2018年の12億円から2024年には1763億円へ、わずか6年で約139倍に拡大した。そして、2025年には2000億円超えるだろといわれている。NISAで株式投資を始めた個人投資家が、次の一手として不動産CFに流れ込んでいるといえるだろう。
とはいえ、少額不動産投資には、NISAのような税制上のメリットはない。
現物不動産投資の収益は「不動産所得」に分類され、減価償却費・ローン利息・管理費などをすべて経費として計上できるため、不動産所得がマイナスになれば給与所得などとと損益通算ができる。つまり、年収700万円の給与所得者であってもが不動産所得にでマイナス100万円を出せば、課税所得が600万円に圧縮される―これが「不動産投資は節税になる」の本質だ。
一方、不動産CFの分配金は「雑所得」になる。給与所得との損益通算はできない。節税効果はほぼゼロだ。それでも参入する人が急増しているのには、明確な理由がある。
理由① 参入ハードルが圧倒的に低い
現物不動産は審査・ローン・登記・管理会社選定と、始めるまでに数か月かかる。不動産CFはスマホで10分、1万円から今日始められる。
理由② 管理の手間がゼロ
現物不動産は「大家業」になる。そのため入居者対応・修繕・空室リスク――節税できても手間とストレスがかかる。しかし、不動産CFは申し込むだけ。本業を持つサラリーマンが無理なく続けられる、ほぼ唯一の不動産投資といえるだろう。
理由③株式と値動きが連動しない
そもそも株と不動産は、価格が連動しているわけではないので株が暴落しても不動産CFの分配金は予定通り振り込まれる。
手法別・税制と特徴を正直に比較する
少額不動産投資といっても方法はいくつもある。また目的によって選ぶ手法が違ってくる。
具体的に見ていこう。
■不動産クラウドファンディング
1万円から始められ、管理の手間はゼロ。年利3~8%程度の分配金が期待できる。運用期間は6か月~2年が多い。「優先劣後構造」という仕組みにより、運営会社が出資額の一定割合を先に負担するため、その範囲内の損失は投資家に及ばない設計になっている。ただし、分配金は雑所得扱いで給与との損益通算不可、途中解約もほぼできない。
■REIT(不動産投資信託)
証券取引所に上場しているため株式と同様に売買できる。オフィスビル・物流倉庫・ホテル・商業施設など大型不動産に数万円から投資できる。分配利回りは年3~5%程度。NISAの成長投資枠で購入できるため、オルカンなどと並行してREITを成長投資枠で持つということもできる。この組み合わせなら株式も不動産も非課税枠の中に収まる。
ただし、REITは株式同様に価格が日々変動し、金利上昇局面では下落しやすい傾向がある。2022~23年の金利上昇局面ではJ-REIT指数が約20%下落し、25年は底打ちから回復。上半期だけで配当込み+10.3%の上昇。分配金利回りは現在約5%水準で割安感もあり、長期的な買い場に見えるが、再び金利上昇局面にあるため注意が必要だ。
■小口不動産(任意組合型)
法的に不動産の共有持分を取得するため、税務上も現物不動産と同じ「不動産所得」扱いになる。減価償却費の恩恵を受けられ、給与所得との損益通算も可能だ。ただし2026年度税制改正大綱により、2027年1月以降の相続・贈与の相続税評価の節税メリットが事実上なくなった。とはいえ、減価償却費の対象であり、投資分散によるリスクヘッジ、インカムゲイン目的としては有望だ。
■目的別不動産商品の選び方
Aコース
「オルカン・S&P500と値動きの異なる資産を加えたい」
REITをNISA成長投資枠で保有する。積立投資枠でオルカンを積み立てながら、成長投資枠でREITを買う。株式も不動産も非課税枠の恩恵を受ける最もシンプルな組み合わせだ。
Bコース
「まず不動産投資を体験したい」「手間をかけたくない」
この場合は不動産CFから始めるのがおすすめ。1万円から始まられ、複数のプラットフォームに登録し、仕組みと感覚を身につけることからはじめるというものだ。
Cコース
「節税しながら不動産で資産を増やしたい」
小口不動産(任意組合型)か、まとまった資金を用意して現物投資に踏み込む。年収が高く所得税率が高い人ほど効果は大きくなるだろう。
信頼できる不動産CF事業者をどう選ぶか
Bコースの不動産CF参入事業者が増えており2025年時点で100社を超えた。そのため事業者が玉石混交の状態だ。しっかりとして事業者を選ぶ基準を持たないまま飛び込むのは危険だ。
実際、2025年7月にはDAIMLAR FUNDを運営するダイムラー・コーポレーションが破産し、約300人の投資家が出資金を回収できない可能性が高まった。業界で初めて「事実上の元本割れ」が現実になったケースだ。またヤマワケエステートや「みんなで大家さん」でも償還遅延が起きている。「元本割れゼロ」という言葉を信じすぎてはいけない。すでに問題も起きており将来的な保証はない。
では何を基準に選べばいいか。答えはシンプルだ。
基準① 上場企業が運営しているか
上場企業は財務情報の開示・外部監査・コンプライアンス体制が整っている。倒産リスクは相対的に低く、不正行為の抑止力も働く。
基準② 業界団体(RCA)への加盟
2023年8月、クリアル、トーセイ、ADワークスグループの3社が発起人となり「一般社団法人不動産クラウドファンディング協会(RCA)」が設立された。2025年4月時点で約40社が加盟し、投資家保護ガイドラインの遵守・情報開示を共通ルールとしている。
RCA加盟事業者を選ぶことは、投資家にとって最もシンプルな自衛策の一つといえる。
基準③ 累計調達額と元本割れ・遅延の実績
この2つの要素は、実績年数と累計調達額は事業者の信頼性を測る最も客観的な指標となる。
この3つの基準を当てはめると、現時点で信頼性が高いと評価される事業者は、以下の3社をあげられる。
クリアル(2998 東証グロース)
不動産CF専業で唯一の東証グロース上場企業。SBIホールディングスとの資本業務提携、、あた最近では中央日本土地建物、JALの2社とは業務提携している。
累計調達額932億円、元本割れゼロ。RCA設立発起人。保育園・学校・物流施設など多様な物件タイプを扱い、マスターリース契約で空室リスクを抑えた案件が多い。
COZUCHI(コヅチ/未上場)
累計調達額1335億円超で業界最大規模。元本割れゼロ、途中解約が可能な案件もある。利回りが想定を上振れするケースも多く投資家人気は業界トップ。非上場のため財務透明性はCREALより劣るが、実績の厚さで信頼を獲得している。
トーセイ(8923 東証プライム)
1950年創業、東証プライム上場の総合不動産会社。不動産再生・開発・賃貸・ファンド・管理・ホテルの6事業を展開。クラウドファンディング「TREC FUNDING」は予定利回り4~7%の案件が中心で、第1号ファンドは予定7%に対し実績14.31%、第11号は予定6.5%に対し実績15.1%と、償還済みファンドすべてで想定を上回る結果を出している。RCA設立発起人の一角であり、J-REITも上場させている。
「オルカン+不動産」の組み立て方
では、具体的にどう組み立てのがよいだろうか、
たとえば手取り月収30万円、毎月3万円をNISAでオルカンに積み立てている給与所得者を例に考えてみよう。
毎月の積立3万円はそのまま継続。ボーナスや余剰資金が年間30~50万円あるなら、そこから不動産CFに10~20万円、REITの成長投資枠に10~20万円を振り向ける。これであれば株式が暴落したとしても、不動産CFの分配金は予定通り入なため、オルカンはそのまま放置。
長期投資で最大の敵である、暴落時に積み立てを止めてしまうことが避けられる。ポートフォリオに不動産を加える本当の意味は、リターンを最大化することではなく、株式投資を続けるための「心理的な安全網」をつくることにある。
また、不動産投資で絶対に忘れてはいけないことがある。
注意1)分配金には税金がかかる
不動産CFの分配金は雑所得として課税される。年間の雑所得合計が20万円を超えれば確定申告が必要だ。そのため「利回り5%」がそのまま手取りになるわけではない。
注意2)ほとんどの商品が途中で換金できない
不動産CFは運用期間中の途中解約がほぼできない。REITは売却できるが価格変動がある。いずれも「すぐに使う可能性があるお金」は絶対に投資しないこと。
注意3)「高利回りに釣られない
年利10%超を謳う事業者は要注意だ。ダイムラー・コーポレーションは年7~12%を提示して2025年7月に破産。問題になっているみんなで大家さんも年7%を高利回りを謳って約2000億円を集めながら配当遅延が発生している。
オルカン・S&P500だけなどの投資信託は長期投資の柱として正しい選択といえる。ただしそれだけでは、資産全体が株式市場の動きに左右される。
不動産という株式とは離れた資産を持つことで、ポートフォリオに「広がり」が生まれる。株が下がっても不動産は動じない。その安定感が、長期投資を続ける力になる。
不動産投資も1万円から始められる時代に、「不動産投資は自分には関係ない」と思わず、NISAでの積み立ての次のステップとして、少額不動産投資も検討する価値があるのでないか。重要なのは目的を決めてから手法を選ぶことが、少額不動産投資で失敗しないためのルールになる。
