差し押さえもある離婚後の”共有名義の家” 自己資金なし・住宅ローンで前夫から買い取り成功

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離婚後も共有名義のまま、そのリスク

近年、日本の離婚件数は年間18万件前後で推移しています。そしてその中には、不動産を共有名義のままにした状態で離婚してしまうケースが少なくありません。住んでいるのは今の家族なのに、名義は元の配偶者の名前のまま。それがどれほどのリスクをはらんでいるか、気づいていない人が多いのが実情です。
今回の相談者はインターネット経由で問い合わせてきた横浜市旭区在住の方でした。

相談内容は居住している一戸建ての名義が妻の父親(義父)と妻の前夫との共有名義になっているとのこと。これを自分の名義にしたいということでした。

状況の詳細は次のとおりです。
・横浜市内に立地、駅から徒歩圏内で小学校や商業施設も近い
・建物はハウスメーカー施工の木造、築20年超
・義父と妻の前夫の共有名義で、前夫の住宅ローンの抵当権が設定されている
・当然のことながら妻の前夫は引っ越しており、相談者と家族が居住
・前夫との連絡は妻がショートメールで連絡をとる程度の最低限のもの

しかし、前夫が住宅ローンを滞納すれば、抵当権が行使されて差し押さえ・競売という最悪の事態もあり得ます。そうなれば、近くの学校に通う子どもたちの生活にも影響が及びます。
相談者はこうしたリスクに強い不安を感じ、妻の前夫から持分を買い取ろうと複数の不動産会社に相談したところ、「持分だけでは売買できない」と断られ続けていたということでした。

物件調査で「違法増築」が発覚

一通りのお話を聞き当社が物件調査に入ると、早速、予想外の問題が浮かび上がりました。建物は新築時に検査済証を取得した適法なものでしたが、過去に無届けで増築が行われ、都市計画で定める建ぺい率をオーバーした違法状態になっていたのです。
建ぺい率超過の物件は、都市銀行・地方銀行・信用金庫での住宅ローンが基本的に利用できません。相談者は持分購入にする際に極力自己資金を使わずにローンを活用したいということで、これは大きなハードルでした。
このことは相談者はもちろん、妻も購入時にはまったく把握していなかったことでした。

3種類の査定書が住宅ローン審査を動かす

具体的な名義変更をするために、まず妻の前夫に連絡を取り、持分の売却意思を確認しました。前夫の答えは「実は売りたかった。ただ、言い出す機会も方法もわからなかった」というものでした。

こうなれば次は資金計画です。
こうしたケースで金融機関が懸念するのは、「親族間売買」とみなされることです。というのも、債務の付け替えや贈与税リスクを監督官庁から指摘される可能性があり、審査に消極的になりやすいのです。
そのため、「取引事例比較法」「原価法」「収益還元法」の3種類で査定書を用意し、売買価格の客観性を担保しました。幸いなことに、いずれの査定額も前夫の住宅ローン残債を上回っており、売却益で完済できる見通しが立ちました。

住宅ローンの事前審査は相談者と取引のある信用金庫で実施。申込みから約10日で条件付きの承認が下りました。その条件が「違法増築部分の撤去」、つまり新築当初の間取りへの原状回復でした。
また、売買金額の妥当性をめぐる贈与税の有無、相談者側の住宅ローン控除の利用可否、前夫側の譲渡所得税の有無についても、それぞれ税務署で事前確認していただくようお願いしました。

売主と買主が一度も会わずに完結

違法増築の是正工事と木造築20年超という条件から耐震診断も実施。結果は、現行の耐震基準をクリアしており、耐震補強工事なしで耐震基準適合証明書を取得。相談者の住宅ローン控除の利用が可能となりました。

引き渡しにあたっては妻の前夫が事前に署名・押印を済ませるかたちで準備を整え、当日は相談者のローン実行と前夫への振り込み、前夫の既存ローンの完済が連動して進み、すべてが滞りなく完了しました。
売主の前夫と買主の相談者は、手続きの最初から最後まで一度も顔を合わせることなく取引を終えました。また、相談者は自己資金なしで持分を取得し、前夫も資金の持ち出しゼロで持分を処分することができました。

離婚後の不動産名義問題は、先送りにしても一切メリットはありません。持分売買の際のポイントは、税金と既存残債を考慮した「売買代金の設定」と、融資金額を踏まえた「住宅ローンの活用」です。
問題が動かせるうちに動いておくことが、家族を守る最善の策といえるでしょう。