「担任で良かった」と言われて、また泣いた―鹿児島・高山中学校、新人教師の卒業式

「何もみんなはしてない。勝手に私がいつも泣いてるんだけど」――そう苦笑いしながらも、また目を潤ませる。

鹿児島県肝付町の高山中学校で3年2組の担任を務める竹之内玲教諭(25)は、生徒から「行事ごとに泣いている」と言われるほどの涙もろさで知られる。

この春、89人が巣立った卒業式に密着した。

「卒業してほしくないなあ」

卒業式を2日後に控えた教室。竹之内さんは生徒たちに語りかけた。

「この笑ってるこの空気をちょっとでも感じながら、あと2日過ごしてほしいなと思います」

すでに涙声が混じっていた。

竹之内さんについて、女子生徒は「いつも生徒のことを思いやってくれる先生。大好きです」

男子生徒は「行事ごとに泣いています。目から滝が(笑)」と親しみを込めて話す。

教師を志した原点は、中学時代の恩師の言葉

竹之内さんは涙もろい。

「卒業する生徒たちを1年生からみてきていつの間にか背も伸びて…」

インタビュー中にも涙する。

「この教室にあの子たちがもういないだと思うと…卒業してほしくないなあって」

教師を志した原点は、自身の中学時代の恩師から「もっと自信を持っていい」とかけられた言葉だった。

「言葉で誰かの心を助けられるような、動かせるような先生になりたいなと思って」

教師2年目で3年生の担任「生徒との信頼関係があったから」

教師になって2年目。3年生の担任を任されたのは、生徒との信頼関係があったからだと、学校側は判断した。

瀬戸口浩司校長も、「去年できた信頼関係とか、子どもたちとの関係性を見ると、卒業まで見てもらいたいし、子どもたちも一緒に3年生になりたいだろうなと思った」と振り返る。

黒板に貼った、29枚のメッセージカード

卒業式当日の朝、まだ誰もいない教室に着物に袴姿の竹之内さんが現れた。手には、クラスの生徒29人ひとりひとりの写真のカードがあった。

裏には手書きのメッセージが書いてある。卒業おめでとうとチョークで書いた黒板に、1枚1枚貼っていった。

「後ろに1人1人最後のメッセージを、ありがとうっていう気持ちを伝えたくて」

生徒が登校してカードに気づいたとき、「やばい」「すごすぎる」という声があがった。

「勝手に私がいつも泣いてるんだけど…」最後のホームルーム

最後のホームルームでは、

「気分悪い人いないですか?大丈夫ですか?」と生徒に声をかけた。

「勝手に私がいつも泣いているんだけど…」と挨拶する姿を、生徒たちがあたたかく見つめる。

「卒業おめでとう!」さみしさを吹き飛ばすように教室の真ん中に集まって、みんなで円陣を組んで声をあげた。そのあとのハイタッチで、つい涙が出て来る竹之内先生。

「早いよ先生!」生徒たちから声があがった。

檀上の背中を、いとおしそうに見つめて

式の前、緊張ぎみの生徒たちにむかって、「笑って」と呼びかけていた竹之内さん。

卒業式が始まり、生徒たちは校長から卒業証書を受け取る。

竹之内さんは、名簿を一度も見ずに、表情を確認しながらひとりひとりの名前を読み上げた。

「壇上に上がる表情を見ながら、去年の姿をちょっと思い浮かべながら、あー、こんなに成長したんだなっていうところを横から見てすごく誇らしいなって」

卒業生の答辞では、「私たちの歩みは決して孤独ではありませんでした。熱心にご指導してくださった先生方。時には厳しく、時には優しく、たくさんの言葉を注いでくださいました」という言葉が会場に響いた。

「先生って呼んでくれる声が、うれしくて」

式が終わると、生徒たちが竹之内さんのもとへ駆け寄った。「竹之内先生が担任で良かった」「先生のことが大好き」――その言葉を聞いて、また涙が流れた。

「先生って呼んできて、呼んでくれる声がすごくうれしくて。本当に先生になれたんだな、なって良かったなって」

そして、生徒に向けてこう伝えた。「みんなのことが本当に、本当に大好きです。また何かあったらいつでも帰ってきてください」

涙もろい新人教師。初めて担任を務めた生徒たちを笑顔と涙で見送った。